g-lad xx

FEATURES

特集:2023年9月公開・配信の映画・ドラマ

2023年9月に上映・放送・配信される映画やドラマの情報をお伝えします。今月は関西クィア映画祭が開催されるほか、ドキュメンタリー『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』などが公開、『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』が配信スタートなど、様々な作品が観られます 

特集:2023年9月公開・配信の映画・ドラマ

(『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』より)

ようやくちょっと涼しくなって、夏の終わりを感じられるようになってきましたね…とはいえ、きっと9月もまだまだ暑いんだろうなと思います。秋と言うにはまだ早いですが、週末、映画館やギャラリーにお出かけする方も多くなってくるのでは? 今月は関西クィア映画祭が大阪(豊中)と京都で開催されるほか、ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」の舞台裏に迫ったドキュメンタリー『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』などが公開されたり、80年代に実在したドラァグ・レスラーの半生を描いた伝記映画『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』がアマプラで配信されたりします。LGBTQに関連する様々な映画・ドラマの情報をまとめてお伝えいたします。
ちなみに9月1日はファーストデー。各館1100円〜1200円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『インスペクション ここで生きる』『バービー 』なども上映中です。
(最終更新日:2023年9月21日)


9月1日公開
バカ塗りの娘

 青森の伝統工芸・津軽塗を題材に、不器用な美也子が津軽塗職人の父との暮らしの中で自身の進む道を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。予告編を含め、ほとんどのPR記事で触れられていなかったので(エブエブなどもそうでしたが、チケットの売行きに差し支えるなどの理由から「宣伝では同性愛と言わないでおこう」とする映画会社の思惑が透けて見えます)、ご紹介が遅れましたが、こちらの記事によると、坂東龍汰さんが演じている美也子の兄・ユウがゲイで、父親とそりが合わず、自分が望むような生き方ができずに苦しむ…という役どころです。ユウの同性の恋人をキスマイの宮田俊哉さんが演じています。ちなみに坂東龍汰さんは『フタリノセカイ』で主人公のトランス男性を演じた方です。とてもいい役者さんだと思いますし、今回はどんな演技を見せてくれるんだろう、と期待させてくれます。(なのですが、今回の映画のビジュアルを見ると、ノンケのスタッフさんが「オネエ」のイメージで作り上げたゲイの見た目、という印象が拭えません。たぶんLGBTQ監修などは入ってないんだろうな…と想像します)
 
<あらすじ>
青森県弘前市。青木美也子は高校卒業後もやりたいことが見つからず、家計を助けるためスーパーで働いている。何をやってもうまくいかず自分に自信を持てない彼女だったが、津軽塗職人である父の手伝いだけは夢中になれた。しかし父は業界の斜陽とともに気力を失い、いつしか家族もバラバラになっていた。貧しい暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出ていった母と、家を継がず美容師になった兄。そんな家族の中で、津軽塗の道に進みたいと言い出せない美也子だったが……。

バカ塗りの娘
2023年/日本/118分/原作:高森美由紀「ジャパン・ディグニティ」/監督:鶴岡慧子/出演:堀田真由、坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、松金よね子、篠井英介、ジョナゴールド、王林、木野花、小林薫ほか

 


9月3日配信スタート
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

 今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞、編集賞の7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(通称「エブエブ」)がNetflixで待望の配信開始! アジア系ファミリーによるクィアSFアクションコメディ映画という、今まで観たことのない、まったく新しい作品で、『ロブスター』『ムーンライト』『レディ・バード』『ザ・ホエール』などのクィア映画も手がけてきた、クオリティの高い映画製作に定評のあるアメリカの配給会社「A24」の最大のヒット作です。日本ではアジア系俳優が主人公であることやマルチバースやアクションの部分だけがクローズアップされていますが、紛れもなくクィア映画であり、2組のキュートな女性カップルが登場する作品です。(レビューはこちら

<あらすじ>
優しいだけで頼りにならない夫、心が通わない娘、中国から来た英語がしゃべれない頑固な父親と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営するエヴリンは、税金の確定申告の締切が迫るなか、春節のパーティの準備も控え、頭を抱えている。国税庁に赴いたエヴリンは突然、人が変わったようになったウェイモンドに誘われ、いくつもの世界が並行して存在するマルチバースに飲み込まれ、カンフーマスターさながらの能力に目覚め、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がるはめに…。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
原題:Everything Everywhere All at Once
2022年/アメリカ/139分/G/監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート/出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェニー・スレイトほか 
Netflixで9月3日から配信スタート



9月6日配信スタート
スカウトに誓って 米国ボーイスカウトの隠蔽された記録

 2013年のGLAADメディアアワード授賞式でマドンナがボーイスカウトの公式ユニフォームを着て「差別撤廃のために革命を」とスピーチし、会場を沸かせたことを記憶している方もいらっしゃるかもしれません。米国では当時、同性愛者の入会を禁止する規定を堅持していたボーイスカウト連盟への批判が高まっていたのです。ボーイスカウト連盟は2014年にようやく同性愛者の若者を受け入れ、2017年にようやくトランスジェンダーの若者を受け入れ、2018年にようやく女子をカブスカウトに受け入れました。今作は、そんなボーイスカウトの排除と痛みとトラウマの歴史…だけでなく、多くの子どもたちが性的虐待を受けてきたこと、しかも、それが組織的に「なかったこと」にされていたこと、被害者は82,209人にも上ることを、サバイバー、被害者への長期にわたる取材で明らかにしたドキュメンタリー映画なんだそうです(QUEERTYの記事より)
 
スカウトに誓って 米国ボーイスカウトの隠蔽された記録
原題:Scouts Honor: The Secret Files of the Boy Scouts of America
2023年製作/94分/米国/監督:ブライアン・ナッペンバーガー
Netflixで2023年9月6日から配信




9月10日から配信
夜間⾶⾏

 韓国でタブー視されていた同性愛を真正⾯から描き、⽇本でもヒットを記録した『後悔なんてしない』のイ=ソン・ヒイル監督による、2014年の作品。ベルリン国際映画祭パノラマ部⾨でプレミアとなり、2015年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映ました。韓国の男子高校生たちが直面する厳しい現実を、そのなかで紡がれる友愛の輝きを描いた名作(ある意味、問題作)です。ハードな暴力シーンがありますので、そのようなシーンが苦手な方はご注意いただきたいのですが、しかし、(『後悔なんてしない』も結構そうでしたが)徹底的にマスキュリニティが支配する荒野のような世界に奇跡的に咲いた一輪の花のような、友情のような愛のような絆のロマンチシズムは、ちょっと忘れえないような、鮮烈な感情をもたらすと思います(レビューはこちら)。劇場での一般公開はされてこなかったのですが、このたびJAIHOにて日本初・独占配信されることになりました。欧米のゲイ映画にはない、アジア映画のエモーショナルさを欲する方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

夜間⾶⾏
原題:야간비행/英題:Night Flight
2014年/韓国/133分/⽇本語字幕付き/監督:イ=ソン・ヒイル/出演:クァク・シヤン、イ・ジェジュン、キム・チャンファンほか
9月10日(日)よりJAIHOにて日本初・独占配信




9月10日上映 京都
あの夏のアダム

 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画で、今年のTRPの時期に1週間だけ上映された『あの夏のアダム』が、京都みなみ会館で1日限り上映されます。9月30日(土)をもって60年の歴史に幕を閉じることになった京都みなみ会館で、最高に楽しいクィア・コメディ映画を楽しんでみてはいかがでしょうか。(レビューはこちら

<あらすじ>
2006年。全米レベルで同性婚が合法化される10年近く前、黒人大統領の登場がまだ想像し難かった時のアメリカ。ぎこちない思春期を生きる高校生のアダムは親から逃れ、姉のいるニューヨークで夏休みを過ごすことにした。レズビアンの姉ケイシーとともに、アダムは都会の刺激的なレズビアンやトランスジェンダーの運動やカルチャーに足を踏み入れる。そして、プライドで見かけた女性にひとめぼれ、夜のパーティで偶然、彼女を見かけ、なんとか話すきっかけを作ろうと試み、成功するが、ジリアンはてっきりアダムのことをトランス男性だと勘違いしてしまう。訂正する機会を逃していくうちに関係は深まり、にわか仕込みでトランス男性についての知識を身に着けていくアダムだったが、状況は、どんどん複雑に……。

あの夏のアダム
2019年/米国/95分/監督:リース・アーンスト/出演:マーガレット・クアリー、ボビー・サルボア・メネズ、ニコラス・アレクサンダー、MJ・ロドリゲスほか
京都みなみ会館で1日限定公開





9月16日、23日 大阪(豊中)、京都
ナルシシズムー私を愛すること 

 さまざまな性のあり方、人体、ファッションとしぐさ。社会や周りの人・環境との交流のなかで、人々は居心地のよい自分のあり方を築いていく。そんな多様なあり方や、その語りの多様性をそのまま晒す作品です。
 本作品は10人のインタビューと30人を超える人たちの写真によって構成されています。なかにはアーティスト、作家、セックスワーカー、ポルノパフォーマー、活動家、ジェンダー研究者などがいて、性別二元論に敏感なクィアなフェミニストたちはジェンダー、ナルシシズム、自己愛について語ってくれます。登場する一人ひとりはそれぞれ、さまざまな葛藤と闘い続けてきましたが、今この場では自分をとても愛しています。
 古典的油絵の肖像画のようなライティングの下で撮られた、自分を愛する主人公たちの写真。感情を抑制した統一化したセッティングの下で、主人公たちの多様性はよりクリアに見えます。自分の体を恥ずかしがらず、鏡越しに見つめ、レンズを通して堂々と展示します。
 2022年ベルリンポルノ映画祭をはじめ、複数の映画祭でベストドキュメンタリー賞を受賞した作品です。

ナルシシズムー私を愛すること
原題:NARCISSISM – The Auto-Erotic Images.
英題:NARCISSISM – The Auto-Erotic Images.
監督:Toni Karat
91分|2022年|ドイツ|ドイツ語・英語
日本初上映
【上映情報】
関西クィア映画祭
9/16(土) 開場10:15 開演10:30 すてっぷホール(豊中)
9/23(土) 開場22:35 開演22:50 ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)オールナイト

 

9月17日、23日 大阪(豊中)、京都
ウイラ:湧き上がる熱帯雨林(関西クィア映画祭)

 主人公ウイラはノンバイナリーであり、ブラジルの先住民であり、アーティストであり、生態学の修士学位を持ち、植物が好きで、環境問題に熱心に向き合う人。まさに複数の分野にまたがるクィアです。ブラジルの熱帯雨林から自由を学び、自分のありのままを誇り高く楽しむ主人公の姿には元気づけられます。また、自分を受け入れているからこそ、より広い世界に目を向けて、自分なりのやり方で性的マイノリティや先住民、環境問題と向き合い、人々の関心を引き上げています。そのエネルギーは、熱帯雨林の中での化粧とパフォーマンスのワークショップを通して、主人公と参加者たちの中でも共有されます。また、本作品は、パフォーマンスダンスとドキュメンタリーとを織り交ぜた形式で撮られており、表現の方法という点からも目新しく楽しめる作品でもあります。
 
ウイラ:湧き上がる熱帯雨林
原題:UÝRA – A Retomada da Floresta
英題:UÝRA – The Rising Forest
監督:Juliana Curi
72分|2022年|ブラジル・米国|ポルトガル語
アジア初上映
【上映情報】
関西クィア映画祭
9/17(日) 開場15:30 開演15:45 すてっぷホール(豊中)
9/23(土) 開場22:35 開演22:50 ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)オールナイト



9月17日、23日 大阪(豊中)、京都
私たちの場所

 ライラとローシュニ、2人のトランスジェンダーの家探し。引っ越しを通して、人々からの、社会からの、生活の中にある差別と敵意が描かれます。そんななか、抵抗しつつ楽しく過ごそうとする2人と、2人を支える人々の姿に勇気づけられます。作中に流れる優雅な音楽や、役者の方々が着るサリーにも注目。当事者である役者の方々の自然体な演技は、現実としての実感をもたらします。素人からプロまでが集う創作集団「エクタラ・コレクティブ」による集団製作です。
 
私たちの場所
原題:Ek Jagah Apni
英題:A Place of Our Own
監督:エクタラ・コレクティブ/Ektara Collective
91分|2022年|インド|ヒンディー語
関西初上映
【上映情報】
関西クィア映画祭
9/17(日) 開場17:20 開演17:35 すてっぷホール(豊中)
9/23(土) 開場16:10 開演16:25 ヴィラ鴨川



9月17日 東京
短編映画『The PrEP Project』上映会

 短編映画『The PrEP Project』は、映画監督・プロデューサーのChris Tipton-Kingさんが、2017年にサンフランシスコで制作したPrEPについての性教育映像作品です。性的にアクティブなゲイ・バイセクシュアル男性を念頭において制作され、ポップでセクシーな雰囲気のなかで楽しくセクシュアルヘルスについて学ぶことができます。
 この短編映画の上映と、ゲストのみなさんによるトークを合わせたイベントが9月17日(日)、なかのZERO学習室1で開催されます。トークゲストは砂川秀樹さん(文化人類学者)、ラビアナ・ジョローさん(性教育パフォーマー/セックス活動家)、Yoshi Kawasaki(ゲイポルノ男優)です。三連休の中日、東京にいらっしゃる方はぜひお出かけください。

短編映画『The PrEP Project』上映会
日時:9月17日(日)14:30開場、15:00-16:00
会場:なかのZERO学習室1
*手話通訳あり
*ライブ・アーカイブ配信はありません
申込みはこちらから




9月17日 大阪(豊中)
ポリエチレンテレフタレート

 香と涼は同級生。一緒に暮らすようになって生じる、何気ない日常の中の喜びとすれ違い。「自由でいることはちょっと辛くて、不自由でいることは少し心地いい」。そんな二人の若者の恋の始まりから終わりまでの1ヵ月を、淡々と描いた映画です。YouTubeで20万回以上再生された作品が、スクリーンで上映されます。

2023年/日本/63分/監督・脚本・編集:浅井日向、出演:重岡琉、浅井日向、小林紗菜、前橋佑樹、河野祐真ほか
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月17日(日)10:30
会場:すてっぷホール(豊中)



9月17日、23日 大阪(豊中)、京都
ココモ・シティ

「アトランタとニューヨークでセックスワーカーとして働く4人の黒人トランスジェンダー女性たち。彼女らの生の感情を捉えたインタビュー映像から、性労働の実態と構造的差別の存在が皮肉を交えて赤裸々に暴かれる。粗い白黒の映像やエネルギーに満ち溢れた演出が話題を呼び、世界中の映画祭で観客賞を受賞した異色のドキュメンタリー。『POSE』にハマった方はぜひ、この映画も観ていただきたいです。とにかく音楽が素晴らしい、クールでヒップ、グラマラスでスタイリッシュな作品。黒人トランス女性セックスワーカーへの讃歌です。(レビューはこちら

2023年/米国/73分/監督:D・スミス
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月17日(日)19:45
会場:すてっぷホール(豊中)
日時:9月23日(日)20:45
会場:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)




9月18日 大阪(豊中)
ボクらのホームパーティー

  ゲイの友達づくりや出会い、恋愛、パートナーシップ、セックス、人間関係をめぐるあれこれがリアルに描かれた、これぞ「ボクらの」映画!と思えるような作品です。各地で上映され、人気を博してきました。(レビューはこちら

<あらすじ>
都内で開かれたゲイのホームパーティ。集まったのは、学生で何もかも未経験の智也、ゲイバーミセコの将一、ゲイクラブ店員の直樹とその友達(でオネエ)の正志、カメラマンの健一、そしてホームパーティを開いたカップルの彰人と靖。飲んで、食べて、騒いで、笑って、泣いて、また飲んで、楽しい時間が永遠に続くはずだったのに、それぞれが日頃心に溜め込んでいたウップンが爆発し、パーティは最悪の結末を迎える…

2022年/日本/80分/監督:川野邉修一/出演:橋詰高志、景山慶一、松本亮、横路博、卯ノ原圭吾、窪田翔、井之浦亮介ほか
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月18日(月祝)10:30
会場:すてっぷホール(豊中)



9月18日、24日 大阪(豊中)、京都
出産したパパ(原題 タツノオトシゴ)

 フレディ・マコーネルは、30歳でゲイのトランス男性。自分の家族を持ちたいという希望を叶えるため、自身で妊娠し、2018年に出産しました。この映画は、フレディの妊娠準備から出産までの3年間を記録したドキュメンタリーです。

2019年/英国/監督:ジーニー・フィンレイ
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月18日(月祝)18:55
会場:すてっぷホール(豊中)
日時:9月24日(日)12:50
会場:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)



9月18日配信スタート
マトリックス レザレクションズ

 20年以上前に世界で空前の社会現象を巻き起こした伝説のアクション超大作『マトリックス』シリーズ。その16年ぶりとなる新章『マトリックス レザレクションズ』が2021年、全世界が見守るなか公開され、たいへんな話題を呼びました。トランスジェンダーである監督のリリー・ウォシャウスキーは『マトリックス』シリーズがもともとトランスジェンダーのアレゴリー(寓意)であったことを明らかにしていましたが、ウォシャウスキーがこの新作の製作を決意した背景には、トランプ政権下でトランスジェンダーへのバッシングが急速に増長したことがあると見られ、今作には「空が虹色に塗られる」など、クィアなメタファーが登場し、かつ、ジョナサン・グロフ、ニール・パトリック・ハリス、ブライアン・J・スミス、エレンディラ・イバラのようなクィアの俳優が多数、起用されていました。(レビューはこちら
 公開から2年半が経って、ようやく『マトリックス レザレクションズ』がサブスクに登場します。アマプラ独占配信です。観逃した方、もう一度観たい方などもぜひ。

<あらすじ>
3部作のゲーム『マトリックス』を創ったクリエイター、トーマス・アンダーソン(ネオ)は、夢と現実の境界が曖昧になる症状や度々生じる既視感に悩まされており、サンフランシスコで精神科のセラピスト(アナリスト)から精神を安定させるための青いピルを大量に処方してもらっていた。社内では新作『マトリックス4』の企画が持ち上がり、その制作に追われる。そんななか、彼は同僚と訪れたカフェで、入店して来た子連れの女性・ティファニー(トリニティ)と会う。二人は”初対面”のはずなのに、お互いにどこかで会ったことがあると感じる。その後、アンダーソンの職場でゲームのクレーマーからの犯罪予告が届き、全員オフィスビルから脱出するよう促されたが、彼のスマホには、オフィスビルの一角にあるトイレに向かうようメッセージが送られる。指示通り向かうと、そこには自身が創ったゲームのキャラクターであるはずのモーフィアスが立っており、赤いピルを見せて現実世界へ帰還するよう迫るのだった……

マトリックス レザレクションズ
原題:The Matrix Resurrections
2021年/アメリカ/監督:ラナ・ウォシャウスキー/出演:キアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット=スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、プリヤンカー・チョープラー・ジョナス、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティーナ・リッチほか
Amazon Prime Videoで9月18日に配信スタート




9月22日公開
I(アイ) 人に生まれて

 ヒトの性の成り立ちとなる性染色体、性腺、内性器、外性器のいずれかが非定型的な状態である性分化疾患を題材に、自分の生き方やアイデンティティに葛藤する少年を描いた台湾映画です。Netflixドラマ「返校」のリー・リンウェイが主演を務め、「縄の呪い2」のベラ・チェン、「夜に逃れて」のイン・ジャオトーが共演。米国で映画制作を学んだリリー・ニー監督が長編初メガホンをとりました。

<あらすじ>
ゲームが好きな14歳の少年シーナンは、ある日激しい腹痛に襲われ、トイレに駆け込むと尿が血のように赤く染まっていた。両親がシーナンを病院に連れて行くと、性分化疾患であることが判明するが、両親は本人にそのことを伝えないまま手術を受けさせてしまう。性自認は男性であるにも関わらず、女性として新しい街で生活しはじめるシーナンだったが……。

I(アイ) 人に生まれて
原題:生而為人 Born to be Human
2021年/台湾/105分/監督:リリー・ニー/出演:リー・リンウェイ、ベラ・チェン、イン・ジャオトーほか




9月22日配信スタート
カサンドロ リング上のドラァグクイーン

 80年代初め、ゲイのレスラー、サウール・アルメンダリスはテキサス州エルパソに住みながら、ルチャ・リブレ(プロレス)に参加するためメキシコのフアレスにしばしば通っていました。彼は初めエルトポ(覆面レスラー?)としてレスリングをしていたのですが、新しいトレーナーにドラァグしたレスラー「エキゾティコ」として出場すべきだとアドバイスを受けます。そうして新たなキャラクター、カサンドロが誕生し、人気を博していくのです(Wikipediaより)
 この映画『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』は、実在したドラァグ・レスラー、カサンドロのことを描いた伝記映画です。

カサンドロ リング上のドラァグクイーン
2023年/米国/107分/監督:Roger Ross Williams
Amazon Prime Videoで22日9時より配信 




9月22日 京都
老ナルキソス

 5年前のレインボー・リール東京のコンペでグランプリに輝いた『老ナルキソス』を監督自身が長編映画化。「ゲイとして生きることが許されなかった」世代の方たちに光を当て、今の時代へと接続し、包摂するとともに、多様なSEXを肯定し、愛しさを持って描く素晴らしい作品です。(レビューはこちら

2023年/日本/110分/R15+/監督:東海林毅/出演:田村泰二郎、水石亜飛夢、寺山武志、日出郎、モロ師岡、津田寛治、田中理来、千葉雅子、村井國夫ほか/配給:オンリー・ハーツ
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月22日(金)13:40
会場:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)



9月23日 京都
チェンジマイノリティ

 『I Am Here ~私たちは ともに生きている~』でトランスジェンダーのリアルを描いた浅沼智也さんの新作短編です。同性どうしの関係がノーマルで、異性どうしの関係がアブノーマルと見なされている世界。異性婚が認められず、親に異性愛者だとカムアウトするとひどくなじられ…そんな逆転した世界を実験的にドラマ化した作品です。

2023年/日本/8分/監督:浅沼智也
【上映情報】
関西クィア映画祭
日時:9月23日(土)22:50〜翌5:00頃 ※オールナイト上映の中で上映
会場:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)




9月23日 東京
楽園

 ソウルにあった古いハッテン映画館とそこの常連だった人たちの記憶から、これまで歴史から失われてきた1970〜1980年代にかけての韓国のクィア・カルチャーの黎明期を鮮やかに描き出す。妖精のようなストーリーテラーが現存する当時の劇場内部へと私たちを案内してくれる、ちょっと不思議なドキュメンタリーが日本初上映! 上映後には監督のホン・ミンキさん&プロデューサーのトッド・ヘンリーさんとオンラインで繋ぎQ&Aトークが行なわれます。
 東アジアのクィアカルチャーをみつめるイベント「道をつくる 2023」の一企画です。(このイベントでは映画上映のほかにも、大塚隆史(タック)さんのトーク、イトー・ターリさんについて語るトーク、中高年レズビアンの多彩な青春をインタビューした本「おばあちゃんのガールフレンド」に登場する方に台湾の高齢LGBTQの皆さんの経験についてお聞きするオンライントークなども開催。東アジアの性的マイノリティ(クィア)の体験を聞き、若い世代と上の世代をつなぐことに重点を置くものになるようです。DJ Hugestさんによる「K Pop Lounge」、サウザンブックスやloneliness booksのブース出店なども。詳細はこちらをご覧ください)

楽園
監督:ホン・ミンキ|2023年|30分|韓国
【上映情報】
道をつくる 2023
日時:9月23日(土)15:00-
会場:GAKU(渋谷PARCO 9階)


9月23日 東京
新宿ボーイズ

 90年代、歌舞伎町のクラブでホストとして働く3人の姿を追ったドキュメンタリー。“おなべ”と自称しながら競争の激しい世界で働く彼らの様子や恋人との会話から、堂々と生きる姿が捉えられています。当時、BBCで放送され、注目を集めた作品です。

新宿ボーイズ
監督:キム・ロンジノット、ジャノ・ウィリアムズ|1995年|53分|英国
【上映情報】
道をつくる 2023
日時:9月23日(土)13:00-
会場:GAKU(渋谷PARCO 9階)


9月24日 東京
外出禁止令の夜

 1979年、戒厳令下の冬の台湾。雑誌『美麗島』主催の反政府デモに参加した人々の逮捕が続くなか、街には夜間外出禁止令が出されていた。しかしある学生は、好奇心から謎めいた青年を追って廃屋に入る。二人はそこで恐怖を交換し、互いの信頼感を築いていく。ツァイ・ミンリャンの『郊遊 <ピクニック>』の制作に参加し、キャリアをスタートさせ、現在は東京を舞台にした長編劇映画を準備しているウェン・ユートンの作品を日本初上映!(「赤いスカート」と同時上映)

外出禁止令の夜
監督:翁語彤 ウェン・ユートン|2020年|20分|台湾
【上映情報】
道をつくる 2023
日時:9月24日(土)13:00-
会場:GAKU(渋谷PARCO 9階)


9月24日 東京
赤いスカート

 1990年代前半。ある田舎の織物工場で働く若いチェンシーは男性として過ごしていた。しかし、夜には赤いスカートでそっと出かける。そして日中は優しくて美しい同僚の仕草を横目で研究する。そんな日々を過ごすなかでチェンシーはなりたい自分により近づくために自分の背中を押し始める。監督は、実写映画「封神演義」三部作の助監督を務め、今後も期待される王凯旋。(「外出禁止令の夜」と同時上映)

赤いスカート
監督:王凯旋|2018年|33分|中国
【上映情報】
道をつくる 2023
日時:9月24日(土)13:00-
会場:GAKU(渋谷PARCO 9階)


9月24日 東京
スクスク 叔・叔

 生涯自分の性的アイデンティティを明かさずに生きてきた60代のホイと70代のパクは香港の街で偶然出会う。孫もいる二人は恋に落ちるが、家族に縛られ厳しい現実に直面する。乗り越えなければいけない壁の前に立ちすくみながらも、これから起こり得るかもしれない未来について思いを馳せる。香港の年配ゲイ男性への綿密な聞き取り調査に触発された本作は、血縁や家族の意味について問いながら、香港のゲイコミュニティの温かさも描く。アジアのクィア映画史に残る傑作(レビューはこちら)。上映後には監督のレイ・ヨンさんがオンラインで会場の質問に答えてくれます!

スクスク 叔・叔
監督:楊曜愷 レイ・ヨン|2019年|92分|香港
【上映情報】
道をつくる 2023
日時:9月24日(土)15:00-
会場:GAKU(渋谷PARCO 9階)



9月24日上映
ジンジャーミルク

 健斗は淳が好き。淳は玲衣が好き。でも玲衣はあすかとキスしてる。そして、あすかは健斗が好き!? この四角関係、一体どうなる!? コロナ禍で生活の変化を強いられながら、大学生活を送るろう者と聴者の4人の若者の姿を描いた映画です。四角関係を描いたエンターテイメント作というだけでなく、ゲイを描いた作品というだけでもなく、ろう者というマイノリティと聴者の関係性を絶妙に描いた作品だそうです。「映文連アワード2022」パーソナル・コミュニケーション部門優秀賞に選ばれています。監督は『虹色の朝が来るまで』の今井ミカさん。主演を務めた宮岡直紀さんは飯能市出身ということから、飯能市で上映会が開催されます。13時〜14時に映画上映、14時15分〜15時に今井さんと宮岡さんによる対談が行なわれます。飯能市の新井市長は、「ろう者と聴者、LGBTQの方などさまざまな登場人物が織りなす物語と聞いており、本市がめざす多様性とお互いの人権を尊重し自分らしく暮らすことのできるまちづくりにつながるものと思っている」と語っています。

ジンジャーミルク
2021年/日本/60分/監督:今井ミカ/出演:宮岡直紀ほか
【上映情報】
日時:9月24日(日)13:00-
会場:飯能市民活動センター多目的ホール(丸広飯能店7階)
参加費:1500円
定員100人(自由席)
※映画は日本語字幕付き
※対談の手話の読み取り通訳もあります
詳細・申込み方法はこちら



9月29日公開
ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇

 世界的ファッションデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル『ファッション・フリーク・ショー』の舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画です。制作に2年の歳月をかけて完成したこの舞台は、ゴルチエ特有の豪華な衣装やオリジナルの音楽、ハイスタイルな振り付けで観客たちを魅了し、2018年のパリ公演で25万人、22年のロンドン公演では30万人を動員する大ヒットを記録しました。フランスのドキュメンタリー作家ヤン・レノレが監督を務め、マドンナ、カトリーヌ・ドヌーブ、マリオン・コティヤールといったセレブたちも虜にした世界的ショーが出来上がるまでの過程を写し出します。

ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇
原題:Jean Paul Gaultier: Freak and Chic
2018年製作/フランス/96分/監督:ヤン・レノレ/出演:ジャン=ポール・ゴルチエ、マドンナ、カトリーヌ・ドヌーブ、マリオン・コティヤール、ロッシ・デ・パルマほか





9月30日上映 御殿場
United In Anger:A History of ACT UP

 米国でエイズが猛威を振るった時代、政府の無策に声を上げて闘った方たちの姿を捉えたドキュメンタリー映画『United In Anger:A History of ACT UP』。物々しい映像が続くなか、涙なしには観ることができない場面、思わずジーンとくるような場面もたくさんあります(レビューはこちら)。なかなか観る機会のない、この熱いドキュメンタリー映画が9月30日、御殿場のnoctarium/マウント劇場で行われる「unscreened pride」というイベントで上映されます。DJ、Drag Show(ジャンジさんとメロウディアスさん)、Liveなどもあります。

United In Anger:A History of ACT UP
2012年/米国/93分/監督:ジム・ハバード 
【上映情報】
unscreened pride
日時:9月30日(日)14:00OPEN 14:30START
会場:noctarium/マウント劇場
参加費:2000円/1D
DJ: DJ WARCLAY, Chiro, arnoldboya(幻の湖)
Drag Show: Madame Bonjour Johnj, Melodias
Live: REINO, hirano taichi
Booth: Loneliness Books
企画:ノーマルスクリーン 
配給:FAV連連映展

INDEX

SCHEDULE