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【同性パートナーシップ証明制度】和歌山県が今年度中、福島市が来年度に導入へ

2023年08月31日

 和歌山県は29日、憲法に定められた幸福追求権の尊重として、「パートナーシップ宣誓制度」の創設、「障害者差別解消条例(仮称)」の制定、「部落差別解消条例」一部改正の人権三施策を進める方針を発表しました。岸本周平知事は会見で「もっと早くやっておくべきだったと思っている。日本国憲法13条の幸福追求権を守ることが重要だ。障害者差別や部落差別を決して許さないことや、パートナーシップ宣誓制度を啓発するために、県として最大限努力する」と語りました。今年度中の施行を目指します。
 
 和歌山県では、2021年10月から同性カップルも法律婚と同様に取り扱う運用を始め、同性カップルが県営住宅に入居できるようになりました。が、当時は、同性パートナーシップ証明制度については「国が議論して法整備につなげるべき課題であり、県としては現時点で導入の検討はしていない」としていました。  
 和歌山県の岸本知事は今年2月、「基本的人権、憲法13条の問題だと思っている。全ての個人に幸福追求の権利がある以上、同性婚も認められるべきだと考えている」と述べ、同性婚支持を表明、その後、制度導入の検討を表明しました。  
 紀伊民報によると、今回の「パートナーシップ宣誓制度」の導入は、現状でも県営住宅への入居や県の医療機関で病状説明などを家族同様に受けることはできるのですが、十分周知されていないため、制度として打ち出すことで周知の徹底を図るねらいがあるとのこと。また、県として制度を導入しても、市営住宅への入居ができるようになるわけではなく、市町村が制度や運用を認める必要がありますが、県内ではまだ橋本市と那智勝浦町でしか導入されていないため、窓口対応することになる市町村に問題意識を持ってもらい、各市町村で運用が広がることを期待しているそうです。
 条例ではなく要綱で定めるそうですが、これについて県知事は、「最終的には条例という形もありうると思うが、まずはステップバイステップ(段階的)で、皆さんの理解をいただきながら進めていきたいという趣旨だ」と説明しました。
 制度の概要は9月1日から県の公式サイトで公開され、1ヵ月間パブリックコメント(意見公募)が実施されます。寄せられた意見などを参考に制度案を練り、県議会での審議を経て、今年度中に施行することを目指します。    

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 福島市が「パートナーシップ制度」を2024年度中に導入することを発表しました。28日の男女共同参画審議会で示されました。福島県ではまだ制度を導入した自治体はありませんが、福島市のほか、富岡町と伊達市が導入を目指しています。

 福島市では、6月の定例議会で、市民団体から出されていたパートナーシップ制度の導入を求める陳情が採択されたものの、木幡浩市長は「自治体側とすれば、おそらく市町村単位でやっても効果は薄いのではという見解が多いと思う」などと述べ、導入についての明言は避けていました。その後、LGBT理解増進法の施行などを受けて、導入を目指すことにしたそうです。木幡市長は「広域的に取り組むべき制度ではあるが、まずは市としての意識改革が大切」と語りました。
 市は男女共同参画審議会に制度の内容や対象者、行政サービスのあり方を諮問しました。審議会は同性カップルだけでなく事実婚夫婦も対象にするかどうか、どのような行政サービスを利用できるようにするか、条例にするか要綱にするかといった制度の骨子案を12月まで協議し、来年2月に市に答申するそうです。委員からは「この制度は人権尊重の入口」「制度導入は絶対に外すことができないもの」などの意見が出されました。
 市はまた、審議会の体制強化のため、市男女共同参画推進条例を改正し、委員の定数を12人から13人に増やす意向だそうです。  

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 その他の地域の情報を、北から順にお伝えします。
 北海道釧路市は29日、男女平等参画審議会を開き、来年4月にも導入する「パートナーシップ宣誓制度(仮称)」の事務局案を示しました。対象者や宣誓方法などを明記したほか、道内の他都市と連携する方針も盛り込みました。

 北海道新聞が道内全179市町村長を対象に行なったアンケートで、同性パートナーシップ証明制度について、十勝管内では約3分の1に相当する6自治体(音更、幕別、池田、豊頃の4町のほか、匿名希望の2自治体)が「導入予定、または検討中」と答えたことがわかりました。帯広市は昨年12月に導入していますが、十勝管内でさらに制度が広がることが見込まれます。
 「導入予定、または検討中」と回答した理由として幕別町は「多様性を認め合い、ひとりひとりが社会の対等な構成員として参画し、活躍できる地域社会にするため」と、池田町は「住んで良かったと思える地域社会の実現を目指すためにも、差別のない社会をつくる必要がある」と答えたそうです。
 一方で、10の町村は「導入する予定はない」と答えました。「議論が地域内で成熟していない」「相談事例がないため未検討」など、住民からの要望が乏しいことを理由に挙げる内容が目立ったといいます。
 道内全体では、導入済みの8市をのぞく75の市町村が「導入予定、または検討中」と回答しました(旭川市や室蘭市など、今年度内の導入を目指す11市町も含まれます)

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 新潟県上越市で28日、「上越市にパートナーシップ制度を求める会」が制度導入を求める要望書と6110人分の署名を市長に手渡しました。中川幹太市長は6月の定例市議会で今年度内の制度導入を表明しており、「前向きに進めている」と話しました。
 要望書では「ファミリーシップ制度」の導入や、制度設計にあたり当事者や専門家を入れた委員会を設置することなどを求めました。
 会のメンバーは署名活動中に怒鳴られることもあったといい、「こんな雰囲気では当事者は声を上げられない」「市でも啓発活動に力を入れてほしい」と語りました。中川市長は「この動きは世界の流れなので、啓発活動は力強くやっていきたい」と答えました。
 面会後、「上越市にパートナーシップ制度を求める会」の阿部和子代表は、制度導入に向けてスケジュールなど具体的な話が市長から出なかったことに「ちょっとまだ不安はある」と語り、制度が導入され、利用されるためには「カミングアウトなどが気軽にできる雰囲気作りが大事で、それには皆さんからもっと理解をしてもらわないと。お互いを尊重できる世の中にしないといけない」と語りました。

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 最後に、残念なお知らせです。
 石川県の馳浩知事は30日、多様な性のあり方や性的少数者について県民の理解を深めるための条例や「パートナーシップ宣誓制度」について、当初目指すとしていた県議会9月定例会への条例案提出を見送る考えを示しました。
 県によると、パブリックコメントに県内外の434人から意見が寄せられましたが、「拙速」「トイレや浴場利用の扱いや学校での性教育がどうなるのか不安」などの否定的な意見が多数を占めたといいます。
 知事は会見で、県民や議会の空気が醸成できていないとして「県庁で作りましたからどうぞ、といった乱暴なやり方はしたくない。より多くの県民にご理解をいただけるための環境づくりを行なう一定の時間が必要」だと述べました。
 24日の県議会の委員会でも、議論が深まっていないとして、ベテラン県議から9月定例会への提出は「無謀」との声が出ていたそうです。
 馳知事は今後について、「12月定例会での提案をめざしますが、その環境が整うかを今から言うべきではない」と述べました。
 
 石川県では10月9日(月祝)に金沢プライドパレードが開催されます。県としての制度実現を求める声が上がりそうです。

 
参考記事:
和歌山県 パートナーシップ制度 今年度中に導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/wakayama/20230829/2040015700.html
LGBTなど性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」施行に向け 9月にパブリックコメント実施 和歌山県(テレビ和歌山)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Qbei38H9dU0
和歌山県・パートナーシップ制度創設などでパブコメ実施へ(和歌山放送)
https://news.wbs.co.jp/188548
パートナーシップ宣誓制度 県、年度内導入へ意見公募 あすから1カ月(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230831/ddl/k30/040/174000c
誰もが幸福追求を 和歌山県、人権3施策を施行へ(紀伊民報)
https://www.agara.co.jp/article/301227
人権3施策に意見募集 パートナーシップ制度等(和歌山新報)
https://www.wakayamashimpo.co.jp/2023/08/20230830_119036.html

性的少数者のパートナーシップ制度の導入めざし福島市が審議会に諮問(福島中央テレビ)
https://www.fct.co.jp/news/area_news_2878
福島市「パートナーシップ制度」24年度導入 性的少数者公的に(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20230829-801566.php
福島市が性的少数者の「パートナーシップ制度」導入目指す 2024年度中(福島民報)
https://www.minpo.jp/news/moredetail/20230829109975
福島市、パートナーシップ制度を来年度に導入 制度の具体化へ検討を諮問(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230828khn000054.html

「パートナーシップ宣誓制度」道内他都市と連携 釧路市が事務局案(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/900423/
パートナーシップ制度、市が取扱要綱たたき台示す【釧路市】(釧路新聞)
https://kushironews.jp/2023/08/30/451258/
 
パートナー制 十勝6自治体前向き 首長アンケート(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/901777/

性的マイノリティーカップルを“夫婦”と同じ関係に…「前向きに進めていこうと思っている」パートナーシップ制度導入に向け 上越市(新潟放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/bsn/687246?display=1
パートナーシップ制度求め6110人分の署名集める 市民団体が上越市に提出(上越タウンジャーナル)
https://www.joetsutj.com/2023/08/28/190438

性的少数者理解深める条例案、9月議会提出見送りへ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR8Z7KW7R8ZPISC007.html

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