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厚労省がPrEPに使用される抗HIV薬「ツルバダ」をギリアド・サイエンシズに開発要請

2023年10月21日

 先日の「2030年までのHIV流行の終結に向けた道筋とは」というセミナーでもお話がありましたが、20日の共同通信の記事で、世界中でPrEPに使用されている代表的な抗HIV薬「ツルバダ」を感染予防目的で使えるようにする(PrEPを公的に実現する)ため、厚生労働省がギリアド・サイエンシズに開発要請※をしたことが明らかになりました。いよいよ国内でのPrEPの薬事承認の日が近づいてきたと言えそうです。
  
※海外で承認されていながら日本では承認されていない「国内未承認薬」については、国内での薬事承認を得るまでに長い年月を要する「ドラッグ・ラグ」が問題視されてきました。2010年に薬価制度として「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」が試行的に導入されるとともに、厚労省は、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(以下、検討会議)を設置し、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促進してきました。国内未承認薬については、開発要望を募集し、応募があった開発要望については、検討会議で医療上の必要性を評価するとともに、製造販売承認申請に必要な試験の妥当性や公知申請への該当性を確認する等の検討を経たうえで、開発企業を募集または開発要請を行なう流れになっています。
 
 米国で2012年にツルバダが薬事承認されたのを皮切りに、主要国の多くでツルバダなどの抗HIV薬が承認され、PrEPが普及し、HIV感染の減少に貢献してきましたが、日本ではずっと薬事承認された薬がなく、(いわばアンダーグラウンドなかたちで)海外のジェネリック薬を個人輸入するなどしてPrEPが利用されてきました。PrEPの有効性は海外でも実証済みで、HIVの流行を終結させるための重要なツールだと認識されていますし、国内でも国立国際医療研究センターなどのチームが臨床研究で有効性を確認しており、日本エイズ学会なども厚労省に薬事承認の要望を上げてきました。そうした流れを受けて、厚労省は「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を8月30日に開き、9月1日付でツルバダを製造販売するギリアド・サイエンシズに開発要請を行なったのです。これでようやく、(世界から遅れをとること10年以上ですが)薬事承認されることになりそうです。
 
 上記のセミナーでも、「HIV感染予防のための選択肢の拡充及び啓発について」のお話の中で、PrEPを早急に保険適用するとともにガイドラインの整備など普及のための取組みを検討してもらいたい、との要望が上がっていました。 
 一方で、予防投与に対して保険が適用されることはなかなかされないので、価格が高くなる懸念もある、ジェネリックの活用も踏まえながらクリニックでの見守り医療を広げていくことが大事、という話も出ていました。たとえツルバダが正式に国内で開発され、薬事承認を受けても、保険適用されない(自費負担)ということになると、とても高価な薬になってしまい、欲しくても買えない方が出てくるのでは…と心配されます。たとえそうなったとしても、買えない人たちを見捨てるのではなく、HIVの流行の終結という大きな目標のためにはPrEPを広く普及させることが重要なのだから、国もガイドラインを整備してPrEPの安全な利用法を周知させてほしいし、安価なジェネリック薬も活用しながら、クリニックでの見守り医療を広げ、安心・安全に利用できるようにしていくことが大事だよね、という話です(本当は保険適用してくれることがいちばんなのですが…)
 今後、国内でのツルバダの価格がどれくらいになるのかによって、コミュニティ側がどう対応していくかも変わってくると思います。また続報が入り次第、お伝えしたいと思います。
 
 
 なお、ギリアド・サイエンシズは9月13日、日本初の多剤耐性HIV-1感染症治療薬「シュンレンカ」(一般名:レナカパビルナトリウム)の皮下注射と錠剤を発売しています。これはHIV複製サイクルの複数の段階で効くとても強力なカプシド阻害剤で、これまでのように毎日薬を飲まなくても半年に1回の皮下注射で済むという画期的な治療法になります。

 それだけでなく、ギリアド・サイエンシズは昨年のTRPや今年のTRPにも協賛し、箱型のブースに入ってHIVについての情報をアップデートできる独自のアトラクションを展開するなどしています。プライドハウス東京のサポーターにもなっています。そのようにLGBTQコミュニティに貢献しながら「HIV/AIDS GAP6」も支えているわけで、たいへん素晴らしい企業だと言えます。
 
 
 
参考記事:
抗HIV薬、感染予防目的にも 厚労省、企業に開発要請(共同通信)
https://nordot.app/1088026243209248862

ギリアドのブライスティング社長 抗HIV薬・ツルバダ、国内初の予防適応取得に意欲(ミクスonline)
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=75439

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