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【特例法要件最高裁憲法判断】申立人の方や、4年前の裁判を闘った臼井さんなどのコメントが報道されています

2023年10月25日

 最高裁大法廷の違憲判決を受けて、申立人の方や弁護士のお二人、4年前に同種の裁判を闘った臼井崇来人さんや、先日静岡家裁での違憲判断を勝ち取った鈴木げんさんなどのコメントが上がっていますので、ご紹介します。

 申立人の方は、「性別変更は、今回の大法廷の審議では叶わず、先延ばしになってしまったことは、非常に残念です。今回の結果が良い方向に結びつくきっかけになると、うれしいと思います」とコメントしました。記者会見した代理人の南和行弁護士によると、性別変更を認めるべきだとする反対意見があったと報告した際、申立人は「自分のことをわかってくれる裁判官がいて安心した」と泣きながら語ったそうです。
 なお、NHKが、申立人の咲さん(仮名)に取材した記事を上げています。咲さんは「私の人生では手術は簡単にはできず、申立てをするしかなかった。その背景や理由を知ってもらえれば誤解も少なくなり、理解していただけるのではないかと思いました」とのことで、今回初めてメディアの取材に応じたそうです。この記事のなかで咲さんは、最高裁判断について「予想外の結果で大変驚いています。今回はわたしの困りごとからなされたことで、大法廷でも性別変更がかなわず、先延ばしになってしまったことは非常に残念です。今回の結果が良い方向に結びつくきっかけになるとうれしいです」とコメントしています。
 
 申立人の代理人である南和行弁護士は会見で、「法令違憲は珍しく、非常に意義がある」と評価しながらも、「一方で、何が悲しい、残念って、3年前に特別抗告を申し立てて『今日で』と思っていたこと。本人も勇気を振り絞って、『自分自身を見て判断してください』と、裁判官15人の前で(審問で)お話したにもかかわらず、結局、大事なところは見てもらえなかったという気持ちは、私も大きいし、本人も大きいです」と語りました。そのうえで「昔の民法では想定していないことがたくさん起きており、場当たり的なことをしていては意味がない。結婚や親子など、法律が人の幸せをサポートしていくにはどうしたらいいのか、国会で議論されるべきではないか」と語りました。
 同じく代理人の吉田昌史弁護士は、「司法が違憲と判断するまでに、民主主義的な過程で調整されるのがいちばん。立法を含めて20年が経った法律の建付けをどうしていくかの議論を進めてくださいよというメッセージでもあるのかなと思う」と語りました。

 4年前、最高裁は同様の家事審判で「現時点では合憲」との判断を示しましたが、この時に訴えたのが、岡山県で農業を営むトランス男性の臼井崇来人さんでした。臼井さんはオンラインで記者会見し、「違憲となってよかった。いろいろな方の応援のエネルギーに感謝している」と笑顔を見せました。
「最高裁は、そう判断してくれたか、そういう思いです。やっぱり最高裁が『違憲』というと、重みが違うというか。当事者にとって、とても心強い後ろ盾ができた」
「見た目がどこまで性別の決定の決定打なのか、改めて意識を変えられるチャンスだと期待をしたい」
「これまで多くの当事者が訴え、一段一段上ってきた階段。また一つ駒を進めた。感慨深い」
「トランスジェンダーがどうしたら生きやすくなるか。裁判をきっかけに社会が真剣に考えてくれたら」
 臼井崇来人さんのトランス男性としてのヒストリーや訴えに至った思いなどを詳しく追った記事が47NEWSに掲載されているほか、東京新聞岡山放送テレ朝などでも臼井さんがフィーチャーされています。

 先日静岡家裁での違憲判断を勝ち取った鈴木げんさんは、「申立人の方はお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。立法府には法律の改正を求めるとともに、性の多様性が当たり前になることを願います」「性別変更や同性婚が認められていない人がまだたくさんいる。法律が改正され、苦しみが解消されることにつながれば」とコメントしています。
 また、鈴木げんさんの裁判の弁護団の方と共同で発した声明では、「2019年の最高裁決定から前進があったことは大変意義深いですが、トランスジェンダーをめぐる人権救済としてはまだ途上にあります」「今回最高裁決定が4号要件の違憲性審査にあたり指摘した、「身体への侵襲を受けない自由に対する制約」「過酷な二者択一を迫る」という問題点は、5号要件にも共通するものです。この指摘を踏まえた適切な司法救済ないし立法解決が速やかに実現するよう願っています」と述べられています。

 杉山文野さんは、「やっと、1つクリア。でも、まだまだ気は抜けないなと。社会が多様化してるにもかかわらず、法律や制度が変わらない。その齟齬によって大きな生きづらさを生み出していると思いますので、よりよくするために制度を更新する、アップデートすることが何よりも大事」とコメントしています。

 トランス男性の木本奏太さんは、「これ(手術要件)をクリアしなければ、僕は男性として生きていけないんだと、結構絶望してしまった」「体にメスを入れて、自分の子どもを産めないような体にならなければ(性別を)変更できないというのは衝撃的すぎて」「本当に痛かったです。痛いという記憶しかなくて。これでやっと自分らしく生きられるとか、性別変更できるっていう感覚じゃなかった」「手術をしなければ自分の望む性で生きられないことが当事者にとってどれだけ苦しいか、今一度考えていただきたい」「自分は幼少期から悩んでいたが、同じような悩みを抱える子どもたちや若い人たちに絶望を感じてほしくない。必要な法改正を進めてほしい」とコメントしました。

 2020年10月のパンテーンの広告で話題になったトランス男性の合田貴将さんは、NEWS23で「自分の人生がかなり変わるので、朝から本当にドキドキしていました。(ニュースを見た)弟が電話をしてきて『本当によかった』ってずっと泣いていたので、弟が泣いているのを電話越しで聞いて、職場にいたんですけど涙が出ちゃいましたね」と語りました。

 埼玉県のNPO法人「レインボーさいたまの会」は、「当事者は命を削りながら人生を歩んでいる。全会一致で司法が応えてくれてうれしい」とコメントした一方で、「『女性の安全が脅かされる』などと判決への誤解が広められることによる当事者へのヘイトの悪化を懸念している」「手術要件が人権課題だと示され、人(当事者)が助かるだけで、誰かを危険にする判決ではないので不安になる必要はない」と語りました。
 
 福井市在住でトランスジェンダーの山口初さんは、「今後、手術をしなくても性別変更できる可能性がある。全ての当事者が性別変更を求めているわけではないが、選択肢が増えることはとても喜ばしい」「LGBTQ(性的少数者)が社会に受け入れられつつあるという変化を感じる」と語りました。
 福井県内の別のトランスジェンダーの方は、「手術要件は人権侵害」「当事者に対するヘイトスピーチがインターネット上などにあふれ、犯罪者のような扱いをされる可能性がある」「私たちは多様な性を認めてほしいだけ。市民には正しく理解してほしい」と語りました。

 岐阜市の性的少数者支援グループ「ぎふ・ぱすぽーと」共同代表で、自身もトランスジェンダーの雪齋さんは、「自身の性を考える時に立ちはだかる、大きな垣根がなくなったと考える当事者は多いはずだ」と決定を歓迎しました。「自分の体にメスを入れることへの抵抗感は強く、人道的にもおかしいと思い続けてきた」「それぞれが望む性で生きられる可能性が広がった喜びは大きい。後戻りすることなく、誰もが公平感を持って生きられる社会を、みんなで築くきっかけにしたい」
 同じく岐阜市の性的少数者交流グループ「はろっと!ぎふ」の元代表のトランスジェンダーの方は、「不妊化要件は人権侵害。違憲と判断され、世界の流れに追い付いた」「健康状態や金銭的な問題で手術を受けられない人の救いにもなる」「正しい情報が届いて理解が広がり、差別が解消されてほしい」と語りました。


 憲法学者でジェンダー問題に詳しい名古屋市立大学大学院の小林直三教授は、「今回の決定は、妥当で評価すべき。国際的な批判もあり、裁判所として『違憲』と判断せざるを得ない社会情勢になっていたため、今回の判断になったのだろう」とコメント。5号要件の審理を高裁に差し戻したことについては、「社会の多様化が加速するなか、裁判所は社会の流れに合わせ『違憲』と判断することが可能だったはず。権利救済の観点から言うと、差し戻しになれば、さらに時間などを費やすことになる。その意味では、司法の役割を果たしているのか疑問だ」と述べました。「高裁の差し戻し審の判断を待たずに、法改正することは可能。裁判所は、今回、国会にボールを投げたということでもあり、国会は、真摯に受け止め、法改正に向け行動してほしい」

 LGBTQの人権問題に詳しい青山学院大学の谷口洋幸教授は、「性同一性障害特例法の法律そのものができたときは、時期としては若干ほかの国よりは遅かったが時代に合っていたと思います。しかし、次第に要件を緩和して改正していこうという世界の流れがある中で、この要件が残っていることは大きな問題だと思います」「当事者にとっては生きやすさが保障され、勇気がもらえる重要な決定です。これまで法律上の性別を変更するために不本意に生殖腺を除去せざるをえなかった人が、自己決定に基づいて性別のあり方を決められるようになります」とコメントしました。審理のやり直しが命じられた点については、外観の要件についても今回の違憲判断の論理をそのまま適用することが可能だと指摘しています。

 憲法学者でジェンダー問題に詳しい名古屋市立大学大学院の小林直三教授は、「今回の決定は、妥当で評価すべき。国際的な批判もあり、裁判所として『違憲』と判断せざるを得ない社会情勢になっていたため、今回の判断になったのだろう」「社会の多様化が加速するなか、裁判所は社会の流れに合わせ『違憲』と判断することが可能だったはず。権利救済の観点から言うと、差し戻しになれば、さらに時間などを費やすことになる。その意味では、司法の役割を果たしているのか疑問だ」「高裁の差し戻し審の判断を待たずに、法改正することは可能。裁判所は、今回、国会にボールを投げたということでもあり、国会は、真摯に受け止め、法改正に向け行動してほしい」と述べています。
 
 静岡大情報学部の笹原恵教授(ジェンダー論)は、「家裁決定から立て続けに示された画期的な判断」と評価し、「戸籍上の性を生物学的機能と連動させず、本人の『性の健康に関する状態』を優先させた。差し戻し審でもこの流れに沿った判断が出ることに期待したい」と述べました。


参考記事:
はやく認めてほしい~手術せずに性別変更を求めた理由(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/shougen/shougen66/
【報ステ】「司法の役割果たしているのか」法改正は…性別変更に手術必要は『違憲』(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000321466.html
当事者「やっと1つ壁を越えられた…ただ」 性別変更めぐり“違憲”判断 最高裁(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/society/af7acd15f87e45658b2a35521499a139
「法律改正を求めるとともに、性の多様性が当たり前になることを願う」最高裁判断を前に変更認められた鈴木げんさんがコメント 戸籍上の性別変更に手術必要な規定は「違憲」(静岡放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbs/797900
「過酷な二者択一を迫る」戸籍の性別変更に手術が必要な要件「違憲」と最高裁大法廷が判断 当事者たちの思いは…(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/798871
最高裁が「生殖能力なくす手術必要な規定は違憲」岡山のトランスジェンダー当事者「すごく大きな後ろ盾得た」(山陽放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/798510
“性別変更に手術必要は違憲”と 最高裁が判断 2019年に合憲と判断された元申立人は一定評価も… 岡山(瀬戸内海放送)
https://www.youtube.com/watch?v=IHlqNl-MXXk
「性別変更かなわず残念」 最高裁決定受け申立人―弁護士「不利益解決せず」(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023102501121
ついに最高裁が動いた! 「性別の本質は、外見ではなく内面にある」トランスジェンダーの訴えで「生殖不能手術を求める法律」は憲法違反に(47NEWS)
https://www.47news.jp/10039159.html
戸籍の性別変更、最高裁が生殖不能手術要件は「違憲」と判断(オルタナ)
https://www.alterna.co.jp/104043/
「性の多様性へ追い風」浜松の鈴木げんさん 最高裁生殖不能手術「違憲」(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1343838.html
「職場で涙出た」弟の電話にトランスジェンダー男性は…性別変更“手術要件”は「過酷な二者択一」で「違憲」最高裁が初の判断(news23)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/799232
「誰かを危険にする判決ではない」 埼玉のLGBT当事者ら強調 性別変更要件「違憲」判決に喜びと不安(埼玉新聞)
https://www.saitama-np.co.jp/articles/51837
最高裁の判断に福井県のトランスジェンダーは…生殖能力なくす手術要件は違憲、性別変更を巡る決定に歓迎と懸念(福井新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1899466
性別変更の手術要件違憲「望む性で生きられる」当事者、決定を歓迎 公平な社会へ一歩(岐阜新聞)
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/306201

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