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【婚姻平等訴訟】北海道訴訟の控訴審が結審、判決は来年3月14日になりました

2023年10月31日

 10月31日、「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟の控訴審の最終弁論が行なわれ、原告のみなさんが高裁での最後の訴えを行ないました。同控訴審は札幌高裁で結審し、判決が来年3月14日に言い渡されることになりました。

 この日は原告側の弁護団がこれまでの主張を改めて説明し、戸籍上同性どうしの二人が婚姻を希望してもできない現状は「重大な脅威、障害」であり、正当化する具体的な理由は考えがたいとしました。そのうえで、今年1月までに同性婚を承認した国は34ヵ国にのぼることを挙げ、国内外で社会情勢の変化が認められるにもかかわらず「国会や政府が、立法に向けた具体的かつ実効的な動きを見せていない」と批判しました。
 そして、原告の女性カップルと男性カップルがそれぞれ、札幌高裁での最後の意見陳述を行ないました。
 札幌市の中谷衣里さんは「どうか、この訴訟を通して、私たち同性カップルにも人権の灯がともり続ける社会にしてください」「これ以上、私たち同性カップルをこの社会にいない者にしないでください」と訴えました。中谷さんは、提訴直後の2019年5月、両親に訴訟に原告として臨んでいることを伝えたそうですが、「両親はたくさん葛藤しただろうが、私たちをないものにしないで、という願いを尊重してくれた」といいます。中谷さんとパートナーのCさんが親族と集まる機会を設けようと動いたり、9月には「遅れてごめんね」と、札幌市の「パートナーシップ宣誓制度」に登録したお祝いをくれたりしたそうです。そんなお母様はこの日、傍聴席から見守ってくれていたそうです。中谷さんは「同性どうしの二人にも、平等に、結婚という社会保障が認められるよう、賢明な判断を」と訴えました。HTB北海道ニュースの取材に対し、中谷さんは、「違憲判決を望んでいます。同性カップルも法律上の婚姻が認められるそんな自由に選択できる社会が早く訪れるような、素晴らしい判決を期待しています」と語りました。
 函館市の国見亮佑さんとたかしさん(いずれも仮名)も証言台に立ちました。お二人は冒頭、「結婚という未来を描けない日本で、法的には他人であっても、二人で築いてきた何の変哲もない日々の暮らしはかけがえのないものです」と語りました。一昨年、札幌地裁で違憲判決が出たときには「日々暮らすなかではあまり感じることができない『人権』を感じられた」といい、涙したそうです。しかし、国見さんのお父様が今年5月に亡くなり、「裁判の行く末を見せられなかったことが心残り」と悔やみました。各地の地裁が「違憲」や「違憲状態」との判断を示しても、法改正に向けた具体的な動きを見せない国に対しては「まるで私たちが諦めるのを待っているかのようだ」と、「政治は変わりませんが、国民の意識は変わっています。同性間の婚姻を認めない今の国のあり方を諦めるのは、政治の方ではないでしょうか」と訴えました。
 一方、国は「同性どうしの結婚は憲法で想定されていない」などとして、訴えを退けるよう求めています。

 札幌高裁での控訴審(二審)の判決は来年3月14日に言い渡されます。2021年3月17日、札幌地裁が「法的に同性カップルが結婚できないのは差別的取扱いであり、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」との画期的、歴史的な判断を示した日からちょうど3年後になります。
 全国5ヵ所の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の中でも北海道訴訟は最も早く進行しており、控訴審(二審)の判決が出るのも札幌高裁が最初となります。中谷さんも語っているように、婚姻平等が早く実現するような素晴らしい判決が出ることを期待しましょう。

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 それから同日、「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟の控訴審・第2回口頭弁論も行なわれました。
 今回の口頭弁論では、同性カップルも子育てをしているということ、国際的なルールにおいても相当議論が進んでいるということ、LGBT理解増進法もでき、社会が変化しているということ、法的に婚姻が認められないことによってLGBTQへのスティグマが醸成されているということを説明し、原告の意見陳述も行なったそうです。

 東京一次訴訟では昨年11月末、東京地裁が、同性カップルが家族になるための制度がない現状は「同性愛者への重大な脅威、侵害であり、憲法24条の2項に違反する状態にある」(違憲状態である)との判決を下しました。一方、「同性カップルが家族になるために、婚姻とは別の制度を設けることも可能」だとも述べていました。
 原告のただしさんは「別制度も可能」とした東京地裁の判断に差別を感じたと意見陳述で述べました。「別制度を設けるというのは、白人と黒人でバスの席やトイレを別々にしたアメリカの人種差別と同じであり、結婚の権利のある人とない人の分離」であると、たとえ「準結婚」のような制度ができても、家族や友人から「準結婚おめでとう!」と言われ、祝福されながらも別扱いされるような未来は望まないと述べました。代理人の加藤慶二弁護士も、「結婚制度の代わりに『登録パートナーシップ制度』などを導入しても結婚と同等の社会的承認は得られず、差別意識を強化する」と意見陳述で述べました。
 ただしさんはもう一点、東京地裁判決が同性婚について「国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ」検討されるべきと判断したことに触れ、「結婚は数多くの社会保障が受けられる制度であり、それを利用する権利は誰もが等しく持っているはずの人権なのに、なぜ国の伝統や国民感情の物差しで測る必要があるのでしょうか、自分たちは結婚できる人たちの奴隷なのでしょうか?」と訴えました。
 原告の西川麻実さんは、同性カップルが結婚制度を利用できないことは社会の偏見を強化し、性的マイノリティ当事者や子どもたちを孤独にさせていると意見陳述で述べました。西川さんはパートナーの小野春さんとともに3人のお子さんを育ててきましたが、同性カップルに対する偏見への恐れから、家族のメンバーそれぞれが学校や職場で生活を隠しながら生きなければならなかったといい、小野さんの実子が学校に持っていく写真を選ぶ時には西川さんと西川さんの実子が写っていないものを慎重に選び、家に友人を連れてくることもなかったそうです。15年間塾講師として働いてきた西川さんも、生徒たちにカムアウトしたことは一度もありませんでした。西川さんと小野さんは2010年に結婚式を挙げていますが、式の翌日に小野さんと歩いていた時に、ガーデンウェディングで学校の先生が生徒たちに結婚を祝福されているのを見て衝撃を受けたと語りました。「自分は結婚式で教え子に『おめでとう』と言ってもらえることは無いのだと思うと、気付いたらぼろぼろと涙がこぼれていました」
 この日の報告会で西川さんは、「反対尋問で『経済的な不平等以外に困り事があるか』と聞かれたことがあって、そのときは子どもの共同親権のことなどを答えたのですが、あとでじっくり考えて、いちばん困ってるのは、孤独なんだな、と思った。同性愛者は、異性愛前提の家庭の中で孤独であり、台東区議がいきすぎた教育で、などと言っていたが、学校でも社会でも『自分だけが違う』と感じてしまい、孤独を癒そうと思って、好きな人を見つけても、社会に応援されない。制度にも守られず、関係がいつ壊れてもおかしくない。そういう孤独に苛まれていると思ったんです」とおっしゃっていて、身につまされました。パートナーのいるいないにかかわらず、多かれ少なかれ誰もが感じてきたことだと思います。制度として差別され、平等に扱われないことが、当事者にどれだけ深い傷やスティグマを刻み、孤立無縁感や自暴自棄な生き方、希死念慮、自死を誘引し、未来や希望を奪ってきたかということを、国も、裁判官のみなさんも、深刻に受け止めていただきたいと、改めて感じました。

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 昨年9月30日、米国で日本人男性と法的に結婚した米国籍の男性が、配偶者であることを前提にした在留資格を求めた訴訟の判決が東京地裁で下され、外国人どうしの同性婚なら配偶者に「特定活動」の在留資格を与えているのに、日本人と結婚した外国人配偶者には与えない国の運用は「憲法14条の平等原則の趣旨に反する」とし、「男性に特定活動の資格を認めなかったのは違法だった」との判決が出ました。国の運用の違憲性を指摘した司法判断は初めてで、画期的でしが。一方、特定活動より永住資格に移行しやすい「定住者」資格などを求めた原告の訴えは却下されたため、原告のアンドリューさんと康平さんは控訴していました(詳しくはこちらをご覧ください)。その注目の高裁判決が11月2日(木)15時、東京高裁で下されます。応援しましょう。



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 なお、「結婚の自由をすべての人に -Marriage For All Japan」では、だれもが「愛する人との結婚」を選べる社会にするために、訴訟を応援する方の署名を募集しています。提訴からすでに98,400通を超える賛同署名が集まっていますが、ぜひ10万、15万と賛同を増やし、裁判所が画期的な判決を出してくれたり、国が法制化に向けて動いてくれたりする後押しにつなげましょう。「結婚の自由をすべての人に -Marriage For All Japan」の公式Xアカウントもぜひフォローしてください。



参考記事:
札幌の同性婚訴訟控訴審、判決は来年3月(共同通信)
https://nordot.app/1091993352368095750
同性婚訴訟2審 すべての審理終わる 来年3月判決 札幌高裁(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20231031/7000062128.html
原告の女性「私たち同性カップルにも人権の灯がともり続ける社会にしてほしいと願っています。」同性婚訴訟の控訴審が結審 判決は2024年3月14日(北海道ニュースUHB)
https://www.fnn.jp/articles/-/609012
原告の30代女性「この社会からいないものにしないで」同性婚訴訟の控訴審が結審 地裁判決は違憲判断するも賠償請求は棄却(HBCニュース北海道)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/809922
1審で憲法違反と判断の同性婚訴訟控訴審が結審「婚姻が認められる判決を」判決は来年3月14日 札幌高裁(HTB北海道ニュース)
https://www.htb.co.jp/news/archives_23261.html
「同性カップル、いない者にしないで」控訴審で当事者吐露 札幌高裁(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASRB06TSKRB0IIPE01S.html
同性婚訴訟控訴審結審 原告「結婚認める法整備を」 札幌高裁(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/934294/

同性婚を認めないのは「生き方差別」…同性カップルがパートナーシップ制度では不十分と訴える理由(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/287146
「準結婚」は差別的な分離政策。結婚平等を望むLGBTQ当事者が法廷で訴える(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-tokyo1-2-2_jp_653fa9c6e4b032ae1c9bdbfe

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