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「定住者」の在留資格を求めた日米同性カップルの控訴審で、東京高裁は原告の訴えを棄却しました

2023年11月02日

 日本人と米国で同性婚した米国人が「特定活動」の在留資格が与えられたものの、「定住者」の在留資格を与えなかった入管当局の対応は違法だとして同性カップルが控訴していた訴訟で11月2日、二審の東京高裁(梅本圭一郎裁判長)は、「日本では同性カップルが男女の夫婦と同等の地位を社会生活上確立しているとはいえない」として憲法違反にはならないとの判断を示し、同性カップル側の控訴を棄却しました。(判決要旨はこちら
 お二人は上告することにしています。

 
 米国籍のアンドリュー・ハイさんは2015年、同性婚が認められている米国でパートナーの康平さんと結婚しました。
 その後、日本で暮らすことになり、仕事上の在留資格の更新が難しくなったため、定住者や外国人どうしの同性婚の配偶者に認められる「特定活動」への変更を申請したものの、認められなかったため、国に在留資格の許可と賠償を求める訴えを起こしました。
 昨年9月30日、東京地裁は、外国人どうしの同性婚なら配偶者に「特定活動」※の在留資格を与えているのに、日本人と結婚した外国人配偶者には与えない国の運用は「憲法14条の平等原則の趣旨に反する」とし、「男性に特定活動の資格を認めなかったのは違法だった」との判決を下しました(国の運用の違憲性を指摘した司法判断は初めてで、画期的です)。しかし、特定活動より永住資格に移行しやすい「定住者」資格などを求めた原告の訴えは却下されました。(ハイさんは今年3月、「特定活動」の在留資格が認められました)
 お二人は、あくまでも「定住者」の在留資格を求め、控訴していました。

※「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について個別に活動内容を判断して在留を認める資格。外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者等などが該当します。

 高裁は判決で、ハイさんには希望していた在留資格が認められなかったとしつつ、出国の準備のため約3ヵ月の在留が許可されていたとし、このことで不法滞在は回避でき、パートナーと共同生活を送る法的利益は侵害されていなかったとして、入管の対応に違法性はなかったと結論づけました。
 梅本裁判長はまた、外国人どうしの同性婚であればパートナーに「特定活動」の在留資格が認められるという差が生じていることについては「合理的な理由を見いだすのは困難で、少なくとも同等程度に保護する必要がある」と述べました。

 判決後の記者会見でハイさんは「とてもがっかりした」と話しました。
 なお、判決報告会のYouTubeライブ配信がこちらでご覧いただけます。

 裁判を支援するCALL4のサイトに、今回の判決の意味と、お二人のコメントが掲載されています。

康平さんからのメッセージ
「今までのご支援のおかげでここまで来れました。特定活動ビザをもらえることはできましたが、ただそれは本当の平等ではないと思います。我々また我々と同じ立場にいる人たちは何か特別な権利や特別なことを求めているわけではないと思います。今、日本国民みんなに与えられている権利を同じようにもらいたいだけです。そのために最高裁で戦っていけたらと思います。引き続きご支援のほどお願い申し上げます」

アンドリューさんからのメッセージ
「We just would like to thank everyone so much for their support as we proceed onto the Supreme Court – hoping of course that the Court will not only accept our case for consideration but will also understand the important Constitutional questions around equality that it involves. Recognizing the larger questions in this case is central to what we understand to be its importance: it’s not just about immigration, rather it’s fundamentally about the equal recognition of same sex relationships. And that in turn is about human rights and dignity. Thank you again so much for your support.」

 「特定活動」は原則として就労は認められないなど、異性カップルの場合に認められる「日本人の配偶者等」の在留資格と比較すると極めて不利な内容で、とても平等とはいえません。
 控訴審判決は、日本人と海外で同性婚をした同性パートナーに対して「日本人の配偶者等」のような在留資格が用意されていないことが憲法14条の問題になりうることは認めながらも、「同性間の婚姻について、男女間に成立した婚姻関係と同等の地位が社会生活上確立しているといえるほどの実態が、不許可処分がされた当時から存在していたとまでは認められない」として、「日本人の配偶者等」と同等の保護が与えられる「定住者」を認めなかったことは憲法違反ではないと判断するものでした。
 同性カップルには異性カップルと同等の保護が与えられなくても仕方がない。それこそが、性的指向による差別です。
 上告審では、その是正を求め、平等な判断を求めてたたかっていきます、とのことです。

 「結婚の自由をすべての人に」訴訟と並び、応援していきましょう。


参考記事:
異性夫婦と格差「合憲」 日米同性婚の在留資格(共同通信)
https://nordot.app/1092750670593015848?c=302675738515047521
二審も「定住者」認めず 日米同性婚の在留資格 東京高裁(時事通信)
https://sp.m.jiji.com/article/show/3089088
日米同性婚で「特定活動不許可」は不合理 東京高裁(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0161N0R01C23A1000000/
日米同性カップルの控訴棄却 在留資格巡る訴訟で東京高裁(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20231102/k00/00m/040/328000c

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