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神奈川県が同性パートナーを持つ職員に扶養手当を支給、来年度から

2023年11月13日

 神奈川県は10日、同性パートナーがいる職員も来年度から異性間の事実婚と同等に扶養手当や結婚休暇の対象とすることを発表しました。育児参加やパートナーの出産、短期介護などの特別休暇制度も取得できるようになります。
 
 朝日新聞が全国47都道府県に調査した結果を9月に公表していますが、その時点で神奈川県は同性パートナーがいる職員への扶養手当の支給は「できない」と回答していました。
 しかし、今年7月、全33市町村で同性パートナーシップ証明制度の導入が完了したことを踏まえ、方針を変え、市町村が発行するパートナーシップ証明書を確認したうえで扶養手当の支給を認めることを決めました。
 
 同性パートナーがいる職員への扶養手当の支給は9月時点で東京都や岩手県、鳥取県など11都県が「できる」としており、島根県も10月から「パートナーシップ宣誓制度」導入と併せて実施しています。
 茨城県や長野県、福岡県、佐賀県などは、県で導入している「パートナーシップ宣誓制度」の趣旨を踏まえ、申請があれば支給するとしています。
 また、那覇市も昨年4月からパートナーが同性である市職員を結婚休暇や介護休暇などの対象に含め、扶養手当やパートナーが新型コロナウイルスで亡くなった場合の傷病手当金なども支給する施策を導入しています。
 神奈川県横須賀市も、申請があれば同性でも支給できるよう、検討中だそうです。(同じ神奈川県では、小田原市が市職員互助会で結婚祝い金を支給することになっていて、横浜市と川崎市は結婚休暇などの特別休暇を認めているそうです)
 
 一方、北海道では、同性パートナーを持つ元北海道職員が扶養手当の支給などを求めた訴訟の一審で札幌地裁が請求を棄却し、原告の方は「不当判決」だとしました。最近も北海道新聞で「「扶養家族」の手当は事実婚でもOKなのに、なぜ同性パートナーはダメ? 判決に専門家の批判が次々、他県ではOKのケースも」と問題提起する記事が上がっています。原告の佐々木さんは控訴はしませんでしたが、こうして声を上げ続けています。
 辻村みよ子・東北大名誉教授(憲法)は「全国で同性婚訴訟が争われているなか、婚姻規定の合憲性を前提に判決を下している。法の下の平等を定めた憲法14条に違反しているかどうかにも触れず、形式的で消極的な判決といえる。今後は道や地方職員共済組合は世の中の変化に応じて条例などの改正を検討する必要がある」と、早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「どこに住んでいるかやどこで働いているかで格差が生じるということは適当ではない。同性カップルの法的な権利や地位を認めるよう、国が早急に検討すべきだ」と述べています。
 過去には、同性のカップルも婚姻に準じた関係であり、法的保護の対象だとの司法判断も出ています。同じ札幌地裁では同性婚を認めないのは憲法14条違反だとの判断も示されています。
 
 佐賀県では、9月の朝日新聞の記事で「申請があれば支給する」と書かれていたことから、県議会で「『判決が出たのに支給して大丈夫か』と疑問の声を複数の県民からいただいた。慎重、適切に行わなければならない」との質問が出たそうです。
 建石真公子法政大教授(憲法)も「自治体は給与や手当支給についての裁量権があり、時代遅れの解釈に縛られる必要はない」と述べているように(北海道新聞「札幌地裁、同性扶養認めず 「多様性の時代に逆行」 元道職員、判決に失望」より)、自治体が同性パートナーを持つ職員に事実婚のカップルと同等に扶養手当を支給することに法的な問題は特にありません。
 ただパートナーが同性であるというだけで待遇に差をつけられている(構造的に差別されている)ことの不平等を解消し、等しく与えられるべき権利を回復すること、これは人権の問題だという認識が広まり、全国の自治体(や企業)で扶養手当に限らず待遇の平等化が進んでいくことを期待します。
 

参考記事:
同性パートナーに扶養手当 「孫休暇」も導入、神奈川(共同通信)
https://nordot.app/1095631752063467717
同性パートナーいる職員も扶養手当支給対象に 神奈川県が新制度導入(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1033948.html

「扶養家族」の手当は事実婚でもOKなのに、なぜ同性パートナーはダメ? 判決に専門家の批判が次々、他県ではOKのケースも(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/939848/

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