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レポート:ピンクドット沖縄2023

2023年のプライドイベントのフィナーレを飾るピンクドット沖縄が12月10日(日)、テンブス館前広場で開催されました。昨年に続きパレードも行なわれ、300名超の方たちが国際通りを晴れやかに行進しました

レポート:ピンクドット沖縄2023

2023年12月10日(日)、12月とは思えない夏のような暖かさのなか、第11回を数える(10周年を迎えた)ピンクドット沖縄がテンブス館前広場で開催されました。ピンクドット沖縄がテンブス館前広場に帰ってきたのは5年ぶりです。今年も国際通りでパレードも晴れやかに開催されました。レポートをお届けします。
(取材・文:後藤純一)


 ピンクドット沖縄は、もともと東京レズビアン&ゲイパレードを立ち上げた砂川秀樹さんが地元・沖縄に帰って活動をするなかで2013年に那覇市との共催で開催することになったものです(詳しくはこちらをご覧ください)。沖縄でパレードは難しいのではないかということで、シンガポールのピンクドット(公園にピンクの服を着て集まる集会型のプライドイベント)にヒントを得て、市の中心地である国際通りのテンブス館前広場でライブやトークショーなどを行なうイベントとして始められました。2016年には那覇市で「パートナーシップ宣誓制度」がスタートし、登録第一号のゲイカップルの結婚式が行なわれ、城間市長が証明書を授与し、MAXのRINAさんが祝辞を述べ、中島美嘉さんがサプライズで歌うという、感動的なイベントになりました。
 しかし、砂川さんがお仕事の都合で再び東京に戻ることになったのを受け、2017年からはホテルパームロイヤルNAHAの高倉さんや、カフー リゾート フチャク コンド・ホテルの荒井さんなど、アライの方々を中心に開催されるようになり、2017年にはMAXがライブを披露したり、過去最多の3000人が詰めかけ、2018年も東ちづるさん、中沢初絵さん(山咲トオルさんのお姉さん)らが出演するなどしました。2019年には諸事情で会場が変更となり、2020年からはコロナ禍でオンライン開催や規模を縮小したかたちでの開催となりました。
 昨年には10回を記念し、パレードが初開催されました。
 そして今年、晴れて、もともとの会場であるテンブス館前広場に戻ってきて、テンブス館の向かいのホテルパームロイヤルNAHAに再び巨大なレインボーフラッグが掲げられ、さらに、パレードも開催され、祝福感あふれる、晴れやかな1日となりました。


 12月10日(日)は最高気温26度という夏日で(私もTシャツ&ハーパン、キャップをかぶり、日焼け止めを塗って参加しました)ちょっと汗ばむような、でも、蒸し暑いというほどではなく、とても爽やかな、絶好のイベント日和となりました。
 
 テンブス館前広場には前夜からテントが並んでいましたが、午前中、関係者の方たちが出展ブースの用意をしたり、出演者の方たちがリハをしたりしていました。
 まずは出展ブースをご紹介します。









 12時にイベントがスタート!
 今回のMCは、これまでの狩俣倫太郎さんに代わり、同じRBC琉球放送のアナウンサーである与那嶺啓さんと、ブルボンヌさんでした。
 最初に、一般社団法人ピンクドット沖縄の高倉代表がご挨拶し、そもそもピンクドットは砂川さんが立ち上げたもので、と説明しながら、当時と今を比べると、だいぶLGBTQという言葉が浸透してきた、いま全国で同性婚訴訟が行なわれているのをピンクドットは応援する、同性婚実現を目指し、社会を変えていくと語り、昨年10回記念で初めてパレードも開催した、今年はすでに昨年を上回る申し込みがある、華やかになりそうです、と語りました。


 知念覚那覇市長が登壇し、開催おめでとうございます、関係者のみなさんに敬意を表します、すべてのひとが自分らしく生きられる社会を、那覇市では1990年代から多様性の啓発に取り組み、2016年には「パートナーシップ宣誓制度」も創設し、昨年からはファミリーシップ制度に拡充した、魅力ある都市となるべく、多様性を認め合い、尊重する社会づくりに取り組んできた、ますますの盛会と、みなさんのご健勝を祈ります、とご挨拶しました。
 その後、会場には来られなかったのですが、玉城デニー沖縄県知事の祝辞も読み上げられました。

 LGBTQIA混声合唱団「Pride Choir Tokyo」のみなさんが登場しました。代表して五十嵐ゆりさんが、「合唱」という漢字をデザインしたTシャツの説明や、曲の解説をしてくれました(ピンクの意味も)。最初は『RENT』の名曲「Seasons Of Love」。それからピアノを弾いていた森山至貴さんのオリジナル曲。五十嵐さんは「中学の頃の自分に聞かせたかった」としみじみ語りましたが、本当にそう思う、悩める思春期の当事者に贈るような、心に沁みる歌でした。最後に、沖縄戦のことを歌った歌だという背景を語りながら、「島唄」をRikiさんの三線とともに披露。会場からも「素晴らしい!アンコール」という声が上がっていました。合唱って、歌っているそれぞれの人の表情から思いが伝わってくるし、そういうところも含めて感動的だなぁということをあらためて実感できるような、とてもいいコンサートでした。



 同性婚について、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の寺原弁護士や、東京一次原告(現在は宮古島に移り住んでいるそうです)のただしさん&かつさんが登壇し、トークセッションが行なわれました。ブルボンヌさんも、身近な方の、病院では親族が優先されてパートナーの方が家族として認められなかったという身につまされるエピソードを語っていましたが、なぜパートナーシップ制度だけではだめで婚姻平等(同性婚の法制化)が必要なのかというお話を、とてもわかりやすく、説得力を持って伝えるような内容でした。全国の訴訟の状況なども語られました。


 昨年に続き、石嶺聡子さんがライブを披露してくれました(以前、レインボー祭りでも歌ってくれたことがある、とてもLGBTQフレンドリーな方です)。上京してすぐLGBTQの友達ができて、すごく支えてもらった、というお話をしながら、素敵な歌声を聴かせてくれました。代表曲の「花」も歌ってくれて、会場のみなさんも大きな拍手を送っていました。

 映画『コザママ うたって! コザのママさん!!』にも主演しているjimamaさんが登場。ピンクのブーゲンビリアの花言葉は「あなたは魅力に満ちている」なんだそうですよ、という話から、ご自身のLGBTQの友人のことを話し、私も知らずに傷つけていたこともあったかもしれない、早く自分のことを堂々と言える社会になってほしいと語りました。力強くも繊細で優しい、素敵な歌を届けてくれました。


 いよいよパレードの時間です。いつの間にかたくさんの方々が集まってきていました。15時半にパレードがスタート。先頭は主催者の方や出演者の方、そのあとに協賛企業の方たちが続きました。レスペラレンザさん、リンダさん、アブラマミレさん、クロレラさんといった沖縄のクイーンのみなさんも歩いていました。
 スピーカーを持った方が何人かいらして、テイラー・スウィフトの「Shake It Off」やダイアナ・ロスの「I'm Coming Out」、レディ・ガガの「Born this way」といった定番の曲が流れ(「Born this way」を大合唱する場面もありました)、ハッピープライド!と言いながら、笑顔で手を振りながら行進。歩行者天国の国際通りを行き交う観光客や、おじいやおばあ、沿道の人たちなども手を振り返してくれたり、なかには一緒に歩いてくれる(海外から来られたと思われる)カップルもいたり、お子さんといっしょの観光客の方も手を振ってくれたり、本当にリアクションがあたたかくて、祝福感やハッピー感にあふれていました。松尾の交差点で折り返すと、先頭のほうの人たちが後続の方たちとすれ違うかたちになるので、お互いに手を振ったりハイタッチしたりもしていました。短いコースではありましたが、パレードは本当に華やかに、晴れやかに盛り上がりました。

















 最後に、ピンクドット沖縄の副代表であるKPGの田中社長がご挨拶。マイクをずっと下まで下げていても声がはっきり聞こえるくらいだったので、MCの啓さんが「布施明さんよりもマイクが遠かったですね。すごい声量でした」とコメントしていてナイスだと思いました。


 パレードの高揚感も冷めやらぬなか、参加者のみなさんで集合写真を撮って、晴れやかさのうちに終幕となりました。終わってからもみなさん会場に残ってお友達としゃべったり、写真を撮ったりして、イベントの余韻を楽しんでいらっしゃいました。
 
★ピンクドット沖縄のレインボーパレードのフォトアルバムはこちら

 
 
ゆんたく会(交流会)

 2021年から開催されているプライドハウス東京主催の「沖縄LGBTQ+関連団体のゆんたく会」(交流会)。今回はテンブス館の会議室で開催されました。
 地元の多様な、それこそトランスジェンダー、ノンバイナリー、クエスチョニング、ろうのLGBTQ、またお子さんが当事者であるという方など50人近い方たちが集まっていました。最初に自己紹介をして、その後、グループに分かれて、パレードの感動、これからの理想の社会、最近感じた(LGBTQに関する)モヤモヤなど、いろんなテーマでお話しました。
 話し足りない、3時間くらいやってほしいという声も上がったくらい、2時間があっという間に感じられました。みなさんきっと、有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。
 


今年のピンクドット沖縄を振り返って

 実はピンクドット前夜にクラブパーティも開催されていたそうなのですが、それがあることを知らず(飲みに行った『DQ』というゲイバーで初めて知りました)、心と体の準備ができていなかったので、今回は見送らせていただきました…。
 
 ともあれ今年も、12月とは思えない暖かさのなか、主催者や出演者のみなさんも参加者のみなさんも心から楽しそうに過ごしていらして、本当にハッピーで祝福感に満ちた、また、同性婚のシンポジウムがあったり、このような地元の方たちや団体の方たちの交流会もあったりして、とても意義のある1日となりました。

 最後に、ピンクドット沖縄代表理事の高倉直久さんからのコメントをご紹介します。
 高倉さんはイベント開催を終えて「今回はてんぶす広場に戻っての開催、とても盛会で皆様のおかげで無事終えることができました。本当にありがとうございます」と語っていましたが、ピンクドット沖縄として改めてコメントも届けてくれました。(高倉さんはピンクドット沖縄として今年、2月の首相による「社会が変わってしまう」発言に対していち早く「結婚の平等を認める社会全体の雰囲気醸成のため力を注ぎ続けます」と声明を発し、7月にもryuchellさんに対して同じ沖縄県民としての心からの追悼の声明を発していて、胸を打たれました。本当に素晴らしい方です)
 
「今回のピンクドット沖縄のテーマはMarriage Equality Next をテーマに結婚の平等という大きな問題を更に前進させて行くという想いからこのテーマを掲げてさせて頂くことになりました。 
 2023年は同性婚訴訟の結果が札幌、東京、大阪、名古屋、福岡で判決がなされ、大阪は残念ながら合憲、それ以外の判決は違憲または違憲状態であると判断され、LGBT理解増進法が成立するなどLGBTQを取り巻く社会が大きく動いた一年となりました。
 一見前進した様に見える反面、理解増進法などは当事者の方々からは到底納得できる内容ではなく、かえって偏見や差別を助長させることに繋がりかねない危険な法律という見方がが大半であります。
 ピンクドット沖縄の最終目標は同性婚の実現。これからも勢力的この活動を続け啓発に取り組み社会変革を起こせる様に邁進して参りたいと思います。

一般社団法人ピンクドット沖縄 
代表理事 高倉直久」

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