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性同一性障害特例法の要件をめぐる裁判の先人である岡山県の臼井さんが「希望を持って」再び申立てを行ないました

2023年12月15日

 性同一性障害特例法の4号要件(不妊化要件)について最高裁判所大法廷が憲法に違反であり無効だと判断したことを受けて、過去に申立てを行なって訴えを退けられていた岡山県の臼井さんが、再び法的性別変更を認めるよう家裁に申立てを行ないました。

 岡山家庭裁判所津山支部に性別変更を申し立てたのは、岡山県新庄村在住のトランス男性、臼井崇来人さんです。臼井さんは7年前、不妊化要件は違憲だとして手術を受けなくても性別変更を認めてほしいと申し立てましたが、2019年、最高裁判所で退けられました(最高裁は「現時点では合憲」との判断でしたが、社会状況の変化に応じて判断は変わりうるとして「不断の検討」を求めたほか、2人の裁判官が「憲法違反の疑いが生じていることは否定できない」との補足意見を述べました。詳細はこちら)。2021年、浜松の鈴木げんさんが同様の申立てを行ない、今年10月、静岡家裁で4号要件(不妊化要件)は違憲であるとして性別変更を認める初の判断が出ました。また、同月、最高裁大法廷は、4号要件(不妊化要件)について「手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」などとして違憲であり無効だとする判断を示しました。臼井さんは「違憲となってよかった。いろいろな方の応援のエネルギーに感謝している」「当事者にとって、とても心強い後ろ盾ができた」「これまで多くの当事者が訴え、一段一段上ってきた階段。また一つ駒を進めた。感慨深い」とコメントしていました(詳細はこちら)。臼井さんはこの判断を受け、改めて申し立てることを決めたといいます。

 申立て後の会見で臼井さんは「希望を持って申し立てをした」と笑顔を見せ、「これまであきらめようと思ったこともあったが、社会の変化を見てアクションを起こすことは大切だと学んだ」と語りました。「一歩を踏み出したことで、現在では最高裁も違憲決定を出してくれ、後ろ盾もできた」「ここまで来ることができたので、いつかみんながわかる日がくるのではないか」「固定観念を脇に置き、性別変更について考えるきっかけになればと思う」
 会見では「外観要件の憲法判断が持ち越されている」ことに関する質問もありました。臼井さんは「手術する以前に個人の性自認は確立されている。手術することでその人の違和感が緩和されることはあるが、あくまで選択肢の一つ。強要されることは不当だ。いずれ撤廃される方向に向かってほしい」と語りました。
 また、臼井さんは女性のパートナーと暮らしていますが、申立てが認められて法的性別変更が実現すれば、法的に結婚もできます。臼井さんは「(認められるかどうか)気が抜けないが、結婚したいです」とも語りました。

 代理人の大山知康弁護士は「今回の申立ては認められる可能性がある」「全国で同じ悩みを抱えた人も、法改正を待たずに申し立てできることを知ってもらえれば」と語りました。


 
 最高裁判断を受けて、性同一性障害特例法の改正が待たれることとなります(少なくとも4号要件の撤廃は必須です)。今のところ政府や国会の動きは鈍いですが、12月12日、法務省と厚労省が性同一性障害者の戸籍性変更に必要な医師の診断書に関し、現在の生殖腺機能に関する記載を不要にするとの通知を全国の自治体や関係学会に出しました(通知書は、厚労省公式サイトの「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第2項に規定する医師の診断書について」というページのいちばん下に掲載されています)
 



参考記事:
性別変更 岡山の当事者改めて申し立て 最高裁違憲判断受け(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231215/k10014289441000.html
「強い希望を持って」トランスジェンダーの臼井崇来人さん 2度目の性別変更を申し立て【岡山】(山陽放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/897146
手術なしの性別変更求め トランスジェンダー当事者が裁判所に再び申し立て「強い希望を持って」 岡山家裁津山支部(瀬戸内海放送)
https://news.ksb.co.jp/article/15084664
性別変更求める申し立て、認められる可能性(共同通信)
https://www.47news.jp/10268808.html
性別変更を求める審判、2度目の申し立て 今回は「希望を持って」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASRDH6KPLRDHPPZB003.html
臼井さん「結婚の願い 現実的に」 性別変更申し立てで一問一答(山陽新聞)
https://www.sanyonews.jp/article/1490533?rct=area_content
 
戸籍性別変更、生殖能力記載不要に(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20231214/ddm/012/040/067000c


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