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アート展レポート:キース・へリング展 アートをストリートへ

森アーツセンターギャラリーで開催中の「キース・へリング展 アートをストリートへ」をレポート。アーティストとしての軌跡を一望しながら、キースがこの世に遺した思いを受け取ることができるような展示になっていました

アート展レポート:キース・へリング展 アートをストリートへ

 80年代ニューヨークのレジェンドであり、ポップカルチャーとファインアートの世界に革命をもたらしながら、1990年にエイズによって早逝した天才アーティスト、キース・ヘリング。没後30年を過ぎてなお、その輝きは色褪せることがありません。そんなキース・ヘリングの大規模な展覧会「キース・へリング展 アートをストリートへ」が、森アーツセンターギャラリーで開催中です(12月1日の世界エイズデーに合わせて始まったものと思われます)。レポートをお届けします。
(後藤純一)

【キース・ヘリングに関する記事】
キース・ヘリングの生涯を余すことなく描いたドキュメンタリー映画『キース・ヘリング~ストリート・アート・ボーイ~』
https://gladxx.jp/review/cinema3/8080.html
ミュージカル『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』
https://gladxx.jp/review/theater/4631.html


 森美術館や森アーツセンターギャラリーに行かれたことがある方、少なくないと思います。結構入場が大変なイメージがあるかもしれませんが、今はそんなに混んでないので、思い立ってお出かけする感じでも(当日券でも)全然大丈夫だと思います。もちろんオンラインで日時予約をすると、確実に入れます。QRコードはエレベーターに乗る前と、森アーツセンターギャラリーに入るときと2回、タッチする感じです。 

 初期の「サブウェイ・ドローイング」作品群や、若い頃に描いたセクシャルな作品、エイズ・アクティビズムの代表作、レコードのジャケット、立体作品、舞台美術用の巨大な作品、亡くなる直前の作品、日本に来た時の記録映像など、実に多彩な作品が展示されていて、そのアーティストとしての軌跡を一望しながら、そのスピリットや、キースがこの世に遺した思いを受け取ることができるような展示になっていました。
 伝説のゲイクラブ 「パラダイス・ガレージ」で踊ってるときの写真や「パラダイス・ガレージ」のクロージングパーティのときのプレイを記念のレコードにした、そのレコードのジャケットやなんかも展示されていて、ゲイクラブカルチャーとの深いつながりがよくわかる一角もあって、素晴らしかったです(音楽も流れていました。ラリー・レヴァンがかけていたと思われる往年のハウスの名曲です)
 キースは白人のゲイですが、黒人の男の子とつきあっていましたし、主な客層が黒人のゲイであった「パラダイス・ガレージ」に通っていましたし、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に抗議する作品なども発表していました。
 人種差別やエイズのことだけでなく、キースはさまざまな社会問題についてもメッセージを発信していました。ある部屋には、人類の過ちというか、巨大な権力を持った人物が民衆を搾取し、殺していくような歴史を描いたと思われる寓話的なマンガのような作品も展示されていて、実に見応えがありました。
























 ほとんどの作品は撮影OKですし(最後の来日した際の作品や映像のコーナーは撮影禁止です)、そんなに混んでないですし、ストレスなく観ることができます。2月まで開催されていますので、お時間あるときにぜひ。お友達や彼氏さんと一緒に行って、あーだこーだ言いながら観るのも楽しいと思います。

 グッズや図版・カタログ本なども充実していましたので、ファンの方や、展示をご覧になってキース好きになった方はチェックしてみてください。
 
 なお、特別協力として名前がクレジットされているように、今回の展示作品のなかには中村キース・ヘリング美術館からの作品が多数含まれているように見受けられました。もしキースの作品をもっとたくさん観たいという方は、小淵沢の中村キース・ヘリング美術館にも足を運んでみてはいかがでしょうか。
 

キース・へリング展 アートをストリートへ
会期:2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
主催:朝日新聞社、フジテレビジョン、東映
特別協力:中村キース・ヘリング美術館
後援:J-WAVE
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
★この展覧会は、東京の後、神戸、福岡、名古屋、静岡、水戸と約1年にわたって巡回される予定です

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