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コメディアンのウィル・フェレルがトランス女性の友人と旅するドキュメンタリーがサンダンス映画祭で異例のスタンディングオベーションを受けました

2024年01月25日

 コメディアンのウィル・フェレルが、脚本家で性別移行中のハーパー・スティールと一緒に旅をする様子を収めたドキュメンタリー映画『Will & Harper(原題)』が、サンダンス映画祭で異例のスタンディングオベーションを受けました。
 
 
 人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』にレギュラー出演してブッシュのマネをしたり、『オースティン・パワーズ』シリーズでトルコ人暗殺者を演じたり、主演作『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』『俺たちニュースキャスター』が大ヒットしたりして人気コメディアンとなったウィル・フェレル。『プロデューサーズ』『奥さまは魔女』などでご覧になった方も多いと思います。最近では『バービー』にマテル社のCEOの役で出演しています。
 一方のハーパー・スティールは日本ではあまり知られていないと思いますが、1995年から2008年まで『サタデー・ナイト・ライブ』の脚本を書いていたほか、映画『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語』やドラマ『The Spoils of Babylon』など多くのコメディ作品の脚本を手がけてきました。
 二人は30年来の大親友で、『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語』では一緒に脚本を書いたくらいです。2022年、トランスジェンダーだとカムアウトを受けたウィルは、とてもびっくりしました。ウィルはトランスコミュニティについての知識を「全く持ち合わせていなかった」と『バラエティ』誌に語っています。「みんな大切な人に対してサポーティブだし、愛情を表現してきたよね…でも、どうやって手助けしたらいい?っていう類の質問しか出てこなかったんだ」
 二人は「この友情を新しいステップへと進める」ために、旅に出ることにしました。そして、「シスジェンダーの人たちにカミングアウトと性別移行がどんなものかを示し、愛するトランスの人をよりよく理解する手助けとなるよう」彼らの旅をドキュメンタリー映画に収め、サンダンス映画祭でプレミア公開されることとなりました。

 二人はニューヨークから旅を始め、カリフォルニアに向かいます。途中でバスケの試合や大衆酒場、おしゃれなラスベガスのレストランなどに立ち寄りながら、性別移行途中のハーパーがウィルとの友情を再確認したり、アメリカにおいてトランスジェンダーであるということの意味を考えさせるものとなっています。
 『バラエティ』誌によると、カンヌ国際映画祭やヴェネチア国際映画祭とは違い、サンダンスでスタンディングオベーションが起きることは少ないそうです。
 ウィルは「私は多くのトランスの人たちと会ってきたが、人生の中でパーソナルに会ったことはなかった」「私にとってこれは全て新しい領域だった。それが、この映画が私たちをその世界に飛び込ませるようなワクワクする作品だと考える理由。シスジェンダーのみんなにとって、この映画がトランスジェンダーについての会話におけるガイドブックになったらうれしい」と語りました。
 ハーパーは「これは性別移行を迫られたトランスの人のシスジェンダーの友人の物語だ」と付け加えました。

 約20年前、性別適合手術を控えたトランス女性のもとに実の「父親」を探しているという少年から連絡が入り、二人は一緒に旅をすることに…という『トランスアメリカ』という名作映画がありましたが、今回の『Will & Harper』もきっと、そのような名作なのではないかと。公開日は未定ですが、早く日本でも観られるようになるといいですね。
 


 なお、世界最大級のインディーズ映画の祭典であるサンダンス映画祭は、グレッグ・アラキの『リヴィング・エンド』など「ニュー・クィア・シネマ」が生まれる土壌となったり、伝統的にクィアムービーが多数出品されてきました。映画祭もそれをサポートし、公式サイト上に「Your Guide to the Projects by LGBTQ+ Filmmakers at the 2024 Sundance Film Festival」というページを設けてクィア関連作品を紹介しています。
 今回は、『Will & Harper』のほかにも、アラブ系のドラァグクイーンの恋の葛藤を描いた『Layla』、25歳の作家志望の青年が処女小説のためにセックスワークを始めるというストーリーの『Sebastian』、ノンバイナリーの詩人ALOKのドキュメンタリーでジョディ・フォスターがプロデュースしている『ALOK』など、32に及ぶクィア作品が上映されるそうです。また、40周年を記念するプログラムでは『ハーヴェイ・ミルク』や『GO fish』などの名作が上映されます。


【追記】2024.2.9
 1月28日にサンダンス映画祭が閉幕し、コロンビア系アメリカ人でクィアのアレッサンドラ・ラコラッツァが脚本、監督を手がけた半自伝的ドラマ『In the Summers(原題)』がUSドラマ部門審査員大賞を受賞しました。長編初監督のラコラッツァは同部門の監督賞にも輝いています。
 『In the Summers』は、夏ごとにニューメキシコに住む父親と一緒に過ごす姉妹の様子を長年にわたって4つのパートで描く作品です。中毒を抱えた父親と娘たちの関係が、年と共に変化していくところが繊細に描かれ、さまざまな問題がありながらも、変わることのない父娘の絆を感じさせます。ティーンエージャーになってからのクィアの姉ヴィオレッタを、昨年同部門で審査員演技賞を受賞したリオ・メヒエルが、妹のエヴァを『ザ・フラッシュ』のスーパーガール役で注目を浴びたサッシャ・カジェが演じ、グラミー賞受賞歌手レネ・ペレス(ステージ名レジデンテ)が父親役で俳優デビューし、高く評価されているそうです。



参考記事:
ウィル・フェレル&トランス公表の親友がロードトリップへ『Will & Harper』がサンダンス映画祭でスタオベ(CinemaCafe)
https://www.cinemacafe.net/article/2024/01/24/89656.html

Will Ferrell wanted to support his transgender friend after she came out, so they made a movie(Advocate)
https://www.advocate.com/will-ferrell-transgender-documentary

ノーラン&ダウニー・Jrも出席 インディペンデント映画の祭典サンダンス映画祭注目作(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/page/A0009074

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