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特集:2024年3月の映画・ドラマ

2024年3月に上映・放送・配信される映画やドラマの情報をお伝えします。今月は「ロックンロールの創始者」でありゲイであったリトル・リチャードの素顔を包み隠さず描いた『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』、かつて本当にあった恐ろしい事実をアカデミー賞監督が映画化した『ナチ刑法175条』などが上映されます

特集:2024年3月の映画・ドラマ

(『DOGMAN ドッグマン』より)


もうすぐ春ですね。すごく暑くなったかと思うとまた寒くなったり、春の嵐が吹いたり…花粉もつらいし、なかなかお出かけしづらいシーズンかもしれませんが、週末、天気がよければ、劇場ギャラリー、映画館にも足を運んでみませんか? 今月は「ロックンロールの創始者」でありゲイであったリトル・リチャードの素顔を包み隠さず描いた『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』、かつて本当にあった恐ろしい事実をアカデミー賞監督が映画化した『ナチ刑法175条』、リュック・ベッソンの新作で主人公がジェンダークィアなキャラクターの『DOGMAN ドッグマン』などが上映されます。大阪ではアカデミー賞国際長編映画賞に出品されたフィリピンのアニメ映画『行方不明』が大阪アジアン映画祭で上映されたり、「キミノコエ -YourVoice」ロンドン国際映画祭外国語短編部門最優秀監督賞受賞を記念したtheStagPartyShowMovie大阪上映会なども開催されます。
というわけで2024年3月に上映・放送・配信される映画やドラマの情報をまとめてお伝えします。
ちなみに3月1日はファーストデー。各館1100円〜1200円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『Firebirdファイアバード』なども上映中です。
(最終更新日:2024年3月11日)
 
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3月1日より全国公開
リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング

 1950年代半ばに彗星のように音楽シーンに現れ、後進のロック・ミュージシャンに多大な影響を与えた革新的黒人アーティスト、リトル・リチャード。ミック・ジャガーは「ロックンロールはリトル・リチャードが始めた」と語り、エルヴィス・プレスリーは「彼こそロックンロールの真のキングだ」と称賛(映画『エルヴィス』にもリトル・リチャードがちょっと登場してましたね)。ビートルズのデビュー前から親交があったジョン・レノンは「初めて会ったとき、畏敬のあまり、硬直してしまった」と言い、ポール・マッカートニーは「歌で叫ぶのはリチャードの影響さ」と語ります。本作は、豊富なアーカイヴ映像、本人およびその親族や関係者、識者に加え、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ポール・マッカートニー、デイヴィッド・ボウイら著名ミュージシャンによる証言映像とともに、リトル・リチャードの史実と素顔をつまびらかにするヒューマンドキュメンタリーです。
 立ったままでピアノを弾き、左手でブギウギを、右手では打楽器的打鍵を披露、激しいリズムを背景に、叫ぶように歌ったかと思えば、ピアノの上に立ち、衣服を脱ぎ捨ててステージを縦横無尽に駆けめぐる――今ではすっかり当たり前になっているパフォーマンスの数々が、約70年前にゲイの黒人シンガー・ソングライターによって創造された事実を再確認する興奮と感動。ゲイであることを隠さなかったリトル・リチャードが「神からいただいたものは全部さらけ出すのさ」と語るシーンもあります。
 本作はロックンロールの創始者の一人であり、人種差別や同性愛差別が激しい時代にカムアウトしていたリトル・リチャードという偉大なミュージシャンの素顔、喜び、苦悩、葛藤などを包み隠さずに描いた作品です。 

リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング
原題:Little Richard: I Am Everything
2023年/米国/101分/監督:リサ・コルテス/出演:リトル・リチャード、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ポール・マッカートニー、デイヴィッド・ボウイほか
3月1日よりシネマート新宿ほか全国で公開



3月1日より公開
52ヘルツのクジラたち

 2021年に本屋大賞を受賞した町田そのこさんのベストセラー小説「52ヘルツのクジラたち」が映画化されました。クジラの鳴き声はそのほとんどが10~39ヘルツなのですが、稀に52ヘルツという高い周波数で鳴くクジラがいて、他のクジラにはその鳴き声が聞こえないため「世界で最も孤独なクジラ」と呼ばれているんだそう。『52ヘルツのクジラたち』は、孤独なクジラのように、心の中で誰にも届かない叫び声を上げ続けている人々を描いた作品です。こちらの記事にもあるように、主人公の貴瑚の声なきSOSを聴き取り、絶望の淵から救い出してくれた“アンさん”こと安吾はトランス男性です。監督の成島さんは、トランスジェンダーを取り巻く社会の状況が変わったことに鑑み、「(原作と)変える必要があるところは変えさせていただくことになったのですが、そこを町田さんが快くOKしてくださったので、大変ありがたかった。2019年に公開していたとしたら、宣伝の段階でアンさんがトランスジェンダー男性であることは伏せたと思うんですよ。でもこの映画では、アンさんのことを初めからわかってもらったうえでお客様に一緒にアンさんの痛みを共有してもらいたいと思いました」と語っていて(詳細はこちら)好感が持てますし、アンさんを演じるのが『女子的生活』でトランス女性役を経験している志尊淳さんであり、当事者の俳優・若林佑麻さんがトランスジェンダー監修に入っているところでも安心感があります。
 
<あらすじ>
自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく…。

52ヘルツのクジラたち
2024年/日本/原作:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社刊)/監督:成島出/出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、余貴美子、倍賞美津子ほか
20243月1日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開



3月2日開催 広島
映画『愛で家族に〜同性婚への道のり』上映会

 G7広島サミットをきっかけに結成された、広島市内で中高年LGBTQの交流の場づくりをする市民グループ「ニーナアリカ」が、「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」とタッグを組んで、映画『愛で家族に〜同性婚への道のり』の上映イベントを開催します。同グループの共同代表、木谷幸広さんと広島修道大の河口和也教授(社会学)は、いずれもオープンリー・ゲイの方で、G7広島サミットに合わせて広島を訪れた婚姻平等訴訟の方たちと出会い、背中を押され、広島で活動を始めたそうです。今回の企画は、市民に同性婚への理解を広げるねらいで、市民計6人と東京のLGBTQ支援団体が実行委員会をつくり、準備を進めてきました。木谷さんは「同性婚を実現するため、広島でもできることをやりたい」と語っています。2月6日、市役所で記者会見した河口教授は「地方都市では同性カップルが抱える問題を市民が知る機会は少ない。理解を広げたい」と語りました。
 映画上映後に鈴木賢さん(明治大学教授)、坂田麻智さん・坂田テレサさん(「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟原告)、三輪晃義さん(公益社団法人Marriage For All Japan 共同代表)によるアフタートークが行なわれます。懇親会もあるそうです。

映画『愛で家族に〜同性婚への道のり』上映会
日時:3月2日(土)13時半~17時
会場:合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市中区袋町6-36)
無料
申込みはこちらから
主催:結婚の平等にYES!広島実行委員会



3月3日、8日上映 大阪
行方不明

 今年のアカデミー賞の国際長編映画賞にフィリピンからゲイのアニメーターを主人公としたアニメ映画『Iti Mapukpukaw(原題)/The Missing(英題)』が出品されました。首から下げたホワイトボードで他人と交流する「口のない」アニメーターの青年のトラウマとの闘いを描いた感動作だそう。実写映像をベースにアニメーション化するロトスコープという手法で制作されており、シネマラヤ映画祭最優秀作品賞&NETPAC賞を受賞しています。この作品が大阪アジアン映画祭で『行方不明』の邦題で上映されます。

<あらすじ>
主人公のエリックはフィリピンでアニメーターとして働きながら、ごく普通の生活を送っていた。マンションに住み、高収入の仕事に就き、好きな男性もいる。唯一目立つことといえば、「口がない」ということだけだった。ある日エリックは母からの電話で、音沙汰のないおじの様子を確認してきてほしいと頼まれる。おじがすでに亡くなっていることを知ったエリックは、なぜだか知っているような気がする異星人と出会う。異星人はエリックの記憶と感情をひもとく手助けをしてくれるのだった…。

行方不明
2023年/フィリピン/90分/言語:タガログ語・英語、字幕:日本語・英語/監督:カール・ジョセフ・パパ/声の出演:カルロ・アキノ、ドリー・デ・レオン、ジオ・ガホール
大阪アジアン映画祭の1プログラムとして3/3(日)14:20- シネ・リーブル梅田シネマ4、3/8(金)13:00- ABCホールで上映(ゲスト登壇あり)



3月5日放送
日本テレビ開局70年SPドラマ『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』

 日本テレビ開局70年スペシャルドラマ『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』に中村中さんがトランスジェンダーの記者の役で出演します。このドラマは、日テレの報道記者ら80人に徹底取材を行ない、実話を基にテレビ史に残るニュースの裏側をドラマ化した作品で、日テレの報道局を舞台に、オウム真理教事件、秋葉原無差別殺傷事件、女子大学生殺人放火事件と時効撤廃、東日本大震災、新型コロナウイルスなど、時代を象徴するような大ニュースと、それらのニュースを伝えてきたテレビ報道記者たちの各世代ならではの悩み、迷い、葛藤を描くことで、あらためて昭和・平成・令和を振り返るヒューマンドラマになっています。中村中さんが演じるのは、トランスジェンダーであることをカムアウトして働く報道局デジタル班の記者・高梨和美です。「私が演じた高梨は、警視庁記者クラブに勤務経験のある数人の記者の方の体験を合わせた人物です。そのうちの一人でトランス女性であることを公表して働く谷生俊美さんから「トランスジェンダーを演じるのは当事者であってほしい」との希望がありました。私は、経験したことのない人物を演じることは、その人物に触れ、理解を深めることでもあると思うので悪いことだとは思いません。ですが谷生さんは過去にトランスジェンダーを非当事者が演じる何かを観て納得できなかった経験があるのかもしれません。放送に携わる立場から考えた選択だとも思うので、その事も念頭に置いて撮影に臨みました」と語っています。

テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~
3月5日(火)20時~
日本テレビ系にて放送



3月8日より公開
DOGMAN ドッグマン

『レオン』『フィフス・エレメント』のリュック・ベッソンが実際の事件に着想を得て監督・脚本を手がけ、第80回ベネチア国際映画祭で上映されるや「リュック・ベッソンが完全復活!」と大絶賛の嵐を巻き起こした作品です。ベッソンの原点回帰とも言えるダークでエッジの効いたバイオレンス・アクションで、主人公がジェンダークィアなキャラクターです。主人公のダグラスは子どもの頃、父親の虐待を受け、犬小屋に閉じ込められたトラウマを抱え、犬たちが自分を救ってくれたと感じながら大人になり、仕事を探してキャバレーにたどり着き、ドラァグクイーンにあたたかく迎えられ、自身もエディット・ピアフになりきってステージでショーをして拍手喝采を浴びるシーンもあるそうです。主演は注目の若手演技派俳優、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、音楽はベッソンのほとんどの作品を手がけている盟友エリック・セラ、美術は『ジャンヌ・ダルク』以降、数多くの作品でタッグを組んでいるユーグ・ティサンディエが務めています。

<あらすじ>
ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席にはマリリン・モンローのような女装をした血だらけの男性がいて、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していくなかで恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまったのだった…。

DOGMAN ドッグマン 
原題:Dogman
2023年/フランス/114分/PG12/監督:リュック・ベッソン/出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョージョー・T・ギッブス、クリストファー・デナム、クレーメンス・シックほか
2024年3月8日より新宿バルト9ほかにてロードショー



3月17日上映 大阪
theStagPartyShowMovie大阪上映会「丘を越えて」「ヴァイオレットセブン」「キミノコエ」「いつか桜通で」

  theStagPartyShowMovieの「キミノコエ -YourVoice」がロンドン国際映画祭で外国語短編部門最優秀監督賞を受賞したことを記念し、最新の大阪未公開作品「丘を越えて」「ヴァイオレットセブン」とともに、この度受賞した「キミノコエ」とtheStagPartyShowMovie第1作「いつかさくら通りで」を一挙公開する上映会が大阪で開催されます。
 
theStagPartyShowMovie大阪上映会
2024年3月17日(日)
「丘を越えて」13:20-15:10
「ヴァイオレットセブン」15:45-16:45
「キミノコエ・いつか桜通で」17:15~18:45
※開場は上映開始の10分前となります
会場:十三シアターセブン(大阪市淀川区十三本町1-7−27 サンポードシティー5階)
チケットはこちら

 


3月19日開催 新潟
海⾨回声

 昨年3月に世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として開催され、多岐にわたるプログラムとアジア最大級の規模の大きさで大きな反響を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭の第2回が3月15日から始まります。その中の、国境を越えていま制作中・企画中の話題作のプロセスを見ることで時代を先取りする「ワーク・イン・プログレス」というカテゴリーで中国の『海門回声』(原題:Chinese Queer)という作品がフィーチャーされています。
 切尸红人魔による漫画『海門回声』は中国のリアルなゲイの生活や心情を痛快に描き、大きな反響を呼んだ作品で、中国作品として唯一、フランスのアングレーム国際漫画祭にノミネートされています。この『海門回声』のアニメーション化プロジェクトの紹介とパイロットフィルムの上映が行なわれます。企画発起人の王亦杰(株式会社Rootingファウンダー)と翁銘(監督)が登壇します。
(ちなみに今回の新潟国際アニメーション映画祭では『同級生』も上映されます。3/18 11:50- 詳細はこちら

上映付きトークプログラム『海⾨回声』(第2回新潟国際アニメーション映画祭)
日時:3月19日(火)11:20-12:20
会場:日報ホール

 

3月23日より公開
ナチ刑法175条

 かつてドイツで施行されていた同性間の性行為を犯罪とする「刑法175条」を題材に描いた震撼のドキュメンタリー『ナチ刑法175条』が劇場公開されます。
 1871年に制定され、1994年に撤廃されるまで120年以上にわたってドイツに存在した刑法175条は、ナチスドイツ支配下でゲイ弾圧の口実に使われ、約1万〜1万5000人が強制収容所へ送られて強制労働や医学実験に供され、生還できた人は約4000人、本作の製作時に生存を確認できたのはわずか10人に満たなかったといいます。本作は6人のゲイと1人のレズビアンによる証言を通し、その衝撃的な事実に迫ります。(なお、映画『大いなる自由』の主人公・ハンスが、戦争が終わった後も刑務所から出られなかったのは刑法175条のせいでした)
 監督はアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ハーヴェイ・ミルク」のロブ・エプスタインと、同作のスタッフだったジェフリー・フリードマン。自身もゲイであるルパート・エヴェレット(『アナザー・カントリー』『ベスト・フレンズ・ウェディング』『2番目に幸せなこと』『僕の巡査』)がナレーションを担当。2000年のベルリン国際映画祭で最優秀記録映画賞と審査員特別賞を受賞するなど世界各地で数々の映画賞を獲得した作品が2024年3月、デジタルリマスター版にて劇場公開されます。
 
ナチ刑法175条
原題:Paragraph 175
1999年/米国/81分/監督:ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン
3月23日より東京・K's cinemaほか全国で順次公開




3月23日上映 東京(清瀬)
ジェンダー・マリアージュ

 『ジェンダー・マリアージュ』は(邦題が微妙なのですが)もともと第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『アゲンスト8』として上映された作品で、カリフォルニア州の同性婚を禁じる住民投票「提案8号」の違憲性を訴え、ゲイカップルとレズビアンカップルが原告になり、最高裁まで闘った訴訟を追ったドキュメンタリーです。同性婚をめぐる裁判とは「愛は憎悪に勝る」ということの証明だったんだなと思わせるものがあり、とても泣ける作品です。映画祭では終映後、会場からひときわ大きな拍手が贈られたことも、感動的でした。
 そんな『ジェンダー・マリアージュ』の無料上映会が東京都清瀬市で開催されます。多摩エリアや所沢にお住まいの方など、足を運んでみてはいかがでしょうか。

『ジェンダー・マリアージュ』上映会
日時:3月23日(土)14時〜16時
会場:清瀬市男女共同参画センター(アイレック)会議室
無料
申込みはこちらから(※3/1から公開されます)




3月24日、31日上映 東京
ハーヴェイ・ミルク

 1977年、サンフランシスコ市政執行委員に当選し、オープンリー・ゲイとして全米で初めて公職に就いたものの、翌年、同僚議員ダン・ホワイトによって暗殺された伝説の活動家ハーヴェイ・ミルク(『タイム』誌が選ぶ「20世紀の英雄・象徴的人物100人」選出、大統領自由勲章受章)を描いたドキュメンタリー『ハーヴェイ・ミルク』が、『ナチ刑法175条』の上映に合わせ、東京都 K's cinemaで特別上映されます。ハーヴェイ・ミルクが議員に当選してサンフランシスコのパレードを盛大に開催しようということでレインボー・フラッグが誕生したということや、暗殺犯のダン・ホワイトへの刑があまりにも軽かったために抗議デモが起こったことなど、歴史上の重要な出来事がたくさん記録されています。ハーヴェイ・ミルクのことをあまり詳しく知らないという方は、この機会にぜひ。第57回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞している感動作です。監督のロバート・エプスタインは、ジェフリー・フリードマンとともに『セルロイド・クローゼット』や『ナチ刑法175条』、2019年のストーンウォール50周年の記念作『State of Pride』など、LGBTQコミュニティにとって重要な作品をたくさん手がけてきた方です(ゲイの方です)

ハーヴェイ・ミルク
原題:The Times of Harvey Milk
1984年/アメリカ/監督:ロバート・エプスタイン
上映スケジュール
東京都 K's cinema
2024年3月24日(日)10:00-
2024年3月31日(日)14:30-



3月29日〜4月1日 オンライン
トランスジェンダー映画祭2024春

 トランスジェンダー映画祭は年に数回、オンラインで開催されています。毎年3月31日の「トランスジェンダー可視化の日」にあわせて、2024年春も開催します。今回はトランスコミュニティを描いた4作品(うち1作品は短編アニメーション)をお届けします。加えて、無料で視聴できる作品として、パレスチナにおける人権侵害とLGBTコミュニティのあり方について問う映画『これがピンクウォッシュ シアトルの闘い』を本映画祭としてご紹介します。ぜひご覧ください。
 
最も危険な年

 トランスジェンダーの人口は1%未満にすぎません。マジョリティの無知は、しばしば少数派への偏見や不安に結びついてきました。2016年米国ワシントン州では、トランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が持ち上がり、「出生時の性別のトイレを使うべきだ」とする主張に対し、トランスジェンダーの子を持つ親たちが立ち上がります。差別と戦う武器は、自分たちのありのままの物語を語ること。日本でも広まりつつあるトランスヘイトの問題を考えるうえで必見のドキュメンタリー作品です。

最も危険な年
2018年/米国/90分/監督:Vlada Knowlton
トランスジェンダー映画祭2024春にて配信


Major(メジャーさん)!

 1969年6月、LGBTQ解放運動のブレイクスルーとなる「ストーンウォール」暴動のまっただなかにいたトランスジェンダーのメジャーさん。78歳になった今でも投獄されたトランスジェンダーたちに手紙を書き続けます。家族から見放された人たちを娘たちと呼び、数えきれない人たちからママと慕われる彼女のたどった人生とは? トランスコミュニティの愛と闘いを描く至極のドキュメンタリー作品です。

Major(メジャーさん)!
2015年/米国/91分/監督:Annalise Ophelian 
トランスジェンダー映画祭2024春にて配信


アロハの心をうたい継ぐ者

 太古ハワイ王国では、男性と女性、そして男性と女性の両方を持ち合わせるマフが、自然と調和し暮らしていましたが、植民地支配によってハワイ文化は抑圧され、マフも抑圧や差別の対象となってしまいます。現代のハワイでクムヒナ(ヒナ先生)は、マフとして、植民地支配で奪われたハワイ文化の心を若い世代に受け継いでいます。尊敬される先生、誇り高いハワイ人マフ、現代西洋社会を生きるトランス女性。そんなクムヒナの生きるハワイを描いたドキュメンタリー作品です。
※太古ハワイ王国の言い伝えを描いた短編アニメ『カパエマフの魔法石』も同時配信

アロハの心をうたい継ぐ者
2014年/米国(ハワイ)/77分/監督 :ディーン・ハマー、ジョー・ウィルソン
トランスジェンダー映画祭2024春にて配信


これがピンクウォッシュ シアトルの闘い

 過去76年と現在進行中のパレスチナ人に対する入植植民地支配・虐殺を行いながら、イスラエル政府は自国を中東で最もLGBTフレンドリーな国であるとし、日本を含めた各国のLGBTのプライドイベントにブース出展をするイメージ戦略を取っている。この映画では、シアトルを舞台に、イスラエルのLGBT活動家を歓迎するかどうかで現地のコミュニティが激論になる様子を描く。監督は、社会正義と公平を求めるトランスジェンダーの活動家としても有名なディーン・スペード。LGBTコミュニティとして人権侵害を許容せず、連帯して抵抗していくためにはどうしたらよいか、作品を通じてぜひ一緒に考えてみませんか。

視聴URL:https://vimeo.com/126391030
原題:Pinkwashing Exposed: Seattle Fights Back!  邦題:これがピンクウォッシュ! シアトルの闘い
監督:Dean Spade 
時間:56分 2015年 米国にて製作
音声:英語 字幕:日本語など(全6ヵ国語)
※無料作品であるため、チケット料金は発生しません。



3月29日公開
美と殺戮のすべて

 写真家ナン・ゴールディンの人生とキャリア、そして彼女が医療用麻薬オピオイド蔓延の責任を追及する活動を追ったドキュメンタリー。ナン・ゴールディンと聞いてドラァグクイーンの楽屋裏でのリアルな姿をとらえた印象的な写真を思い出す方もいらっしゃるかと思います。彼女自身もバイセクシュアルであり、10代の頃からクィアの友人たちと家族同然につきあい写真の被写体にしてきました。また、80〜90年代のエイズ禍の時代のことも映し出されます。ナン・ゴールディンが、依存症や過剰摂取による中毒死が急増し、社会問題となっているオピオイド系鎮痛剤の問題に声を上げ、製薬会社パーデュー・ファーマと会社を所有するサックラー家への抗議活動を展開する姿は「ACT UP」の活動とも重なります。クィアとはまさにエイズ危機に際しての政府の無策に抗議するために生まれたムーブメントであり、ナン・ゴールディンの闘いは正しくクィアなのです。監督は『シチズンフォー スノーデンの暴露』で第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したローラ・ポイトラスです。

美と殺戮のすべて
原題:All the Beauty and the Bloodshed
2022年/米国/121分/R15+/監督:ローラ・ポイトラス/出演:ナン・ゴールディンほか
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、グランドシネマサンシャイン池袋ほかで3/29より全国公開



3月30日・31日上映 東京
リスケ

 第9回八王子ShortFilm映画祭でグランプリ、観客賞、審査委員特別賞を獲得した短編映画『リスケ』の無料試写会が東京・シネマハウス大塚で開催されます。監督の鈴江誉志さんは「作り手がラベリングをしない、あくまで普遍的な物事として作った先に、少しでも当事者としての認知が生まれるのではないかと強く願い、自分の人生と熱の全てを注ぎ、映画を紡ぎました」とコメントしています(映画ナタリーより)。なお、この試写会では、鈴江監督がndjc2022ワークショップで制作した『昨日は誰と寝たの』も併映されるほか、主演の野島健矢さんと鈴江監督が登壇する舞台挨拶も行なわれます。

<あらすじ>
「今度結婚する。だから写真を撮ってほしい。」写真家のユウスケ(野島健矢)は、久々に再会した中学の同級生・アズサ(野川大地)にウェディングフォトを頼まれる。アズサとは中学の時から付き合っていた。しかし、とある理由で大学卒業と同時に別れた。承諾するユウスケだが、アズサの結婚相手はユウスケとの関係を知らない。

リスケ
2021年/日本/30分/製作:ボーイズフィルムワークス/監督:鈴江誉志/出演:野島健矢、野川大地、志々目知穂、山田ジャンゴ、湊あす香、両角颯、吉見茉莉奈

映画『リスケ』単独試写会
2024年3月30日(土)18:45- / 3月31日(日)18:35-
シネマハウス大塚(東京都豊島区巣鴨4丁目7-4-101)
無料
申込みは公式サイトから


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