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国会は早く同性婚の法制化を議論せよとの新聞社説が続々と上がっています

2024年03月17日

 14日の札幌高裁の画期的な判決を受けて、15日、新聞各紙(朝日、毎日、産経、東京新聞)が朝刊1面トップでこれを取り上げました。
 そして、地方紙なども含め、この判決を高く評価するとともに国会は早く同性婚の法制化を議論せよと訴える社説が続々と掲載されています。以下に抜粋でご紹介します。

 
◎朝日新聞「(社説)同性婚訴訟 「違憲の法」いつ正す
 朝日新聞は「当事者は日々、喪失感に直面しており、急いで対策を講じる必要がある――。裁判長の真摯(しんし)な呼びかけに、国会はどう応答するのか」と書き出し、昨年2月に実施した朝日新聞の世論調査で「同性婚を法律で認めるべきだ」と答えた人が72%に上ったことや、東京訴訟では同性婚実現を見ずに亡くなった原告(佐藤郁夫さんのこと)もいることなども挙げ、岸田首相が参院予算委員会で「引き続き、判断に注視していく」と述べるにとどめたことに対して「政府・国会がただ見ているだけでは、遠からず不作為を問われることになりかねない」と指摘し、「さまざまな制度は異性間の結婚を前提につくられている。整合性のある法制化に一日も早く着手するときだ」と結んでいます。

◎朝日新聞「(時時刻刻)多様な愛、社会も司法も 24条、趣旨は「人と人の自由な婚姻」 同性婚訴訟
 同紙は社説の前に、1面で札幌高裁判決を取り上げた朝刊の「時時刻刻」(ニュースを深く掘り下げる記事)でもこのテーマを論じていて、この判決の意義を詳しく説明したり、諸外国の動きを解説したり、昨年のトランスジェンダー関連の画期的な最高裁判断のことなどにも触れながら、同性婚実現の機運が盛り上がっているなか、政治の動きだけが鈍い、と指摘していました。

◎毎日新聞「社説 同性間にも「婚姻の自由」 尊厳を守る画期的判決だ
 毎日新聞は「同性愛者と異性愛者が社会的に区別されるいわれはない。ともに個人として尊重されるべきだと、明確に示した画期的判断だ」と評し、「政府や国会は重く受け止め、直ちに同性婚の法制化に動かなければならない。個人の尊厳を守るには、制度で権利を保障することが不可欠である」と結んでいます。

◎毎日新聞「同性婚訴訟「違憲」 個人の尊厳、保護重視 24条1項、柔軟に解釈
 同紙は「オピニオン」という社説に近い記事でもこのことを取り上げ、札幌高裁の意義を語っていました。後半、自治体の同性パートナーシップ証明制度(公的承認制度)では同性カップルの権利保障に限界があるということを指摘し、「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟の原告が2023年10月の意見陳述で「法的効力を持たない弱々しい灯(ともしび)」と表現していたことを紹介していました。

◎東京新聞「<社説>同性婚否定「違憲」 「結婚の自由」立法急げ
 東京新聞は、「性的指向・性自認に即して、不自由なく暮らすことは大事な権利だ。立法を急がねばならない」として、同性カップルが被っているさまざまな不利益のことに言及し、札幌高裁の判決は「画期的でその意味は重い」とし、「政府と国会は真摯に受け止めるべきである」「政府の腰が重いのなら、立法府主導で法整備を進めることが国民代表の責任だ」と訴えていました。

◎北海道新聞「<社説>同性婚訴訟判決 違憲是正の法整備急げ
 北海道新聞は、地元の札幌高裁でこのような判決が下されたことについて「初の控訴審判決を言い渡した札幌高裁でも違憲の結論が導かれた意義は極めて大きい」「個人の尊厳を何より重んじたと言える」「昨今の社会の動きにも目配りしている」と高く評価しています。そして「同性婚が認められていない現状をこれ以上放置するのはいよいよ許されなくなったと言うべきだ」「国会は早急に同性婚の法制化に動かなければならない」と述べ、「(国会は)重く受け止めて、多様な家族のあり方を尊重し合う社会を構築する。それが政治の責務だ」と結んでいます。

◎信濃毎日新聞「〈社説〉同性婚の法制化 政治の怠慢は許されない
 これまでもLGBTQの権利擁護を最も積極的に社説で発信してきた新聞社の一つである信毎新聞は、「婚姻の平等の重要性に大きく踏み込んだ画期的な判決だ」「政府、国会は判決を重く受け止めるべきだ」としながら、「それなのに林芳正官房長官はきのうの記者会見で「同性婚制度の導入は国民一人一人の家族観とも密接に関わる」と述べ、国民の意見や国会の議論を引き続き注視すると述べただけだ。法務省も「確定前の判決」と静観の構えだ」「判決が確定するまで、まだ数年かかるとみられる。それまで現状を放置するのは看過できない」「国会がこのまま論議を怠れば、賠償命令の判決が現実味を帯びると認識する必要がある」と国の無策(立法不作為)を鋭く批判しています。

◎京都新聞「社説:同性婚訴訟で違憲 権利の保障へ法制化に動け
 京都新聞の社説は「当事者が待ち望んだ明快な判決である。ほぼ全面的に違憲とされた重みを受け止め、国はすみやかに法整備につなげねばならない」と明快な書き出し。背景に「近年の裁判で性的少数者の権利保護が重視されてきた流れがある」ことや、対照的に昨年の理解増進法の制定に際して「保守派が反発し、文言が後退した」ことなどにも触れ、「これ以上、性的少数者に苦しい思いをさせない社会とするために、政府と国会はただちに法制化の議論を始めるべきだ」と結んでいます。
 
◎神戸新聞「<社説>同性婚訴訟/違憲是正へ法整備を急げ
 神戸新聞は、札幌高裁の裁判長が異例の付言で、国民の間に反対意見があることも認めたうえで「社会の変化を受け止めることが重要だ。対策を急ぐ必要がある」と述べたことを「異性婚と同じ制度を早急に適用するよう迫るメッセージである」と指摘し、「ところが政治の動きはなお鈍い」「このまま放置すれば政治への失望は高まるばかりだろう」「政府と国会は判決の確定を待たず同性婚の実現に向けた議論を始め、政治の責任を果たさねばならない」と訴えました。

◎中国新聞「同性婚訴訟、二審も違憲  もはや放置は許されない」
 中国新聞は、「この国で、家族として生きていっていいと言ってくれた」という原告の声を紹介しながら「彼らの尊厳と思いに寄り添った判決」だと讃え、「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まってからの5年間で社会がどのように変わったかということなどにも触れています。また、「全ての人々が性自認、性表現、性的指向に関係なく、暴力や差別のない生活を享受できる社会を実現する」と謳うG7広島サミットの首脳声明に触れながら「この声明を主導した岸田文雄首相だが、有言実行には程遠い」「議論すら始めてない現状は、司法に「長期にわたって措置を怠った」と指摘されたとしても反論できまい」と批判、「司法がこれほど明確な判断を示した事実を、政府や国会は重く受け止める必要がある。速やかに同性婚の法制化へ向け議論を始めるべきだ」としています。

◎高知新聞「【同性婚訴訟】国会は急ぎ議論を深めよ
 高知新聞も「これ以上、当事者の不利益を放置することは許されまい。国会は早急に具体的な形で議論を深める必要がある」「国会はいまなお具体的な検討すら行っていない。これでは立法の不作為と批判されてもやむを得ないだろう。迅速な対応が求められる」としています。

◎熊本日日新聞「<社説>同性婚訴訟 「違憲」放置すべきでない
 熊本日日新聞も「政府や国会はこうした状況を無視するように「不作為」状態を維持している。同性婚を巡る議論を本格化させる兆しも見えない。いつまでも放置したままでよいはずがない」「政府や国会は、漫然と放置し続ければ賠償責任が生じると受け止めるべきだ」としています。

◎沖縄タイムス「[社説]同性婚否定二審も「違憲」 国は速やかに法整備を
 沖縄タイムスは「司法には、憲法が保障する権利と自由を守る役目がある。その責任を示す意義ある判決だ」と評しながら、「多様な家族観を認める意識や性的マイノリティーへの権利制約は許さないとする流れの中で、依然として足踏みを続けているのが政治である」「政府、国会は法整備を早急に進め、政治の責任を果たすべきだ」と訴えました。

【追記】2024.3.21
 その後も日経新聞をはじめ数紙が社説を掲載しています。

◎日経新聞「(社説)早急な議論を迫る同性婚判決
 日経新聞の社説は「札幌高裁は「違憲」との判断を下した。国に早急な議論を迫ったものといえる」として、判決の内容や訴訟のこれまでの状況を説明し、内外の情勢にも触れながら、「同性カップルが家族として尊厳を持って暮らすためには、どのような法整備が必要なのか。度重なる司法からのメッセージを重く受け止め、国会や政府の場で議論を急ぐべきだ」と述べるものでした。

◎琉球新報「<社説>同性婚札幌高裁判決 国会の不作為許されない
 これまで最も熱心にLGBTQの権利擁護を訴えてきた新聞社の一つである琉球新報は、札幌高裁判決が三つの争点についてどう判断したかを説明し、「現状を「人格が損なわれる事態」とした判決は重い。ただちに法整備の議論を始めるべきだ」と述べました。また、「長期間にわたって放置されてきた人権侵害が、訴訟を通じて改められる歴史が繰り返されている」としてハンセン病や強制不妊手術の問題、そして昨年最高裁大法廷が性同一性障害特例法の不妊化要件を違憲だとしたことを挙げ、「しかし判決だけでは決着しない。新たな法整備、社会の偏見の払拭など、課題は長く残る」と述べました。そして、小泉司法相が「国民的なコンセンサスと理解が求められる」と従来の見解を繰り返したことに対し、「これ以上、政府と国会の不作為は許されない。高裁判決が述べる通り、これはコンセンサスではなく、人権侵害の問題だからだ。国政選挙をはじめ各選挙で争点にするなどして政府と自民党を動かし、一刻も早く法整備に着手すべきである」と結びました。

◎西日本新聞「【社説】同性婚の法制化 「違憲」の放置許されない
 「日本では愛する人が同性というだけで法的な婚姻が認められない。税制や社会保障で不利益を受け、個人の尊厳も傷つけられる」と書き出し、「同性婚は新しい制度を作るのではなく、現行制度を同性間に広げるだけでよい。決して難しいことではない。同性婚が可能な国・地域は30を超える。政府や国会は社会の変化を受け止め、議論をこれ以上放置してはならない」と結ぶ、平坦な言葉遣いのなかにもLGBTQへの理解や支援の姿勢がにじむ、理路整然とした社説でした。


 (そもそも違憲の判決が出ること自体、とても稀なことであるのに)これだけ違憲判決が続いていて、社会もすっかり同性婚を認める方向に変わっているにもかかわらず、政治だけが動かない、これ以上、国が放置することは許されない、との論調がほとんどでした。
 岸田総理は15日の参院予算委で「憲法上、想定されていない」「確定前の判決であり、裁判所に同種訴訟が継続していることから、引き続き注視していく」と答弁しましたが(詳細はこちら)、そうした姿勢についても、これだけ違憲判決が出ている以上、放置は許されない、いまは立法不作為による国会賠償請求は棄却されているが、そのうち賠償責任を言い渡されてもおかしくないとする新聞社がいくつもあったことが印象的でした。
 

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