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レディ・ガガが誹謗中傷にあったトランス女性に送ったメッセージが素晴らしいと賞賛されています

2024年03月21日

 3月8日の国際女性デー、多くの人がSNSなどで祝福のメッセージを発信したなか、モデルやTikTokerとして知られるトランス女性のディラン・マルバニーがレディ・ガガとのツーショット写真を投稿したところ「あなたは“本当の女性”じゃない」などといった誹謗中傷を受け、そんな彼女をガガが毅然と擁護したことがニュースになっています。


 トランスジェンダー活動家でもあるディラン・マルバニーは昨年10月、ロサンゼルスLGBTセンターから「LGBTQ+コミュニティの若者の良きロールモデルであること」を讃えるモデルズ・オブ・プライド賞を受賞しています。そんな彼女はレディ・ガガと実業家マイケル・ポランスキーが慈善活動家たちを自宅に招いて開いたチャリティイベントに招待された際、ガガとのツーショットを撮っていたのですが、3月8日、「国際女性デーおめでとう」という言葉とともにInstagramにその写真を投稿すると、「最高の写真!」「私が憧れている美しい女性たち。二人のコラボが見れてうれしい!」といった好意的なコメントが寄せられた一方で、「でもあなたは“本当の女性”じゃない」といったトランスフォビックなコメントも多数寄せられました。
 これを重く見たガガは自身のInstagramに同じ写真を投稿し、ディランやトランスジェンダーコミュニティへのサポートを示すため、次のようなメッセージを綴りました。
「ディランと私の国際女性デーにまつわる投稿が、強いヘイトスピーチの被害を受けていることを恐ろしく思います。ニュースでは“反発を呼んだ”という書かれ方をしていますが、これがヘイトであることを明確にしなければなりません。このようなヘイトは暴力の一種です。“反発”とは、私やディランのことを愛する人が、私たちの行ないに反対するということ。これは反発や批判ではなく、ただのヘイトです」
「トランスジェンダーの人権が尊重され安全に暮らせるようになるまでにまだまだやることが山積みな今の社会を考えれば、今回のことも驚くに値しません。ディランやトランスジェンダーコミュニティのことを守りたい気持ちでいっぱいです。ディランは差別や偏見、身体的やメンタル面での暴力や暴言の被害にあいながらも、品格を保ち、人々をインスパイアし続けています」
「私にはトランスコミュニティの代弁はできませんが、伝えたいことがあります。国際女性デーには、全ての女性が全ての女性を称えることを願っています。そして、全ての女性が平等に、全ての人類が平等に祝福される日が来るまで称える日々が続くよう願っています。いつか自身のジェンダーアイデンティティに即した記念日で祝福される日が来ますように。どのようなジェンダーアイデンティティ、人種であっても、皆が平和に暮らし、尊重されるべきなのです」
「すべての人が愛を持ち、受容的な温かい心を持って連帯できるようになりますように。トランスジェンダーの人生の複雑さや困難さに寄り添い、称えられるようになりますように。お互いに全てを知ることはできませんが、理解しようと努め、思いやりを持つことはできます。私は人々を本当に愛しているので、ヘイトを“反発”だなどと言って許すことができません。(トランスの)人々はもっと真っ当な扱いを受けるべきです」
 このガガの素晴らしい投稿にさえもトランスフォビックなコメントがついていて暗澹たる気持ちにさせられますが、「ガガ、いつも私たちのコミュニティへの支持を表明してくれてありがとう」「よく言ってくれた、その通り!」と賞賛するコメントもたくさん寄せられています。
 また、ディランの投稿にも「トランスジェンダー女性は、女性です。トランスジェンダー女性の存在が、シスジェンダー女性から何かを奪うことはありません」「私は、いわゆる“本当の女性”ですが、あの投稿を見て少しも嫌な気持ちにはなりませんでした。女性どうしが支え合う姿は素晴らしいし、誇りに思います。ヘイトを滅亡させる唯一の方法は、愛を持つことだと思います」といったアライの女性たちの言葉も寄せられています。

 
 『最も危険な年』という映画に如実に描かれていますが、米国では2015年に婚姻平等(同性婚)が実現して以降、保守派が攻撃の対象をトランスジェンダーに切り替え、保守的な州ではこうしたトランスジェンダー(やドラァグクイーン)を抑圧するような州法が相次いで成立し、昨年には米国最大の人権団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」が初めて「非常事態宣言」を発するほど、深刻な状況に陥っています。
 
 毎日新聞によると、米オクラホマ州で2月、出生時に割り当てられた性が女性でプロナウンがHe/They(ノンバイナリー)の高校生、ネックス・ベネディクトさんがトイレ利用にからんでいじめを受けていたことを苦にして自殺し、波紋を呼んでいます。ネックスさんは校内の女子トイレで別の生徒らにからかわれた翌日に死亡しました。当局による解剖などの結果、抗ヒスタミン薬と抗うつ薬の摂取による自殺と判断されています。出生時の性に合わせたトイレの使用を義務づける州法の施行後にいじめが激化したとの遺族の証言もあり、教育省が学校の対応に関して調査を開始しました。
 バイデン大統領は14日の声明で「ノンバイナリーの人たちは最も勇敢な米国民だ。しかし、ただ自分らしくあるために、勇敢でなければならないのはおかしい。誰も、ネックスさんが経験したようないじめに遭うべきではない」「LGBTQの子どもたちへの差別の撲滅に改めて取り組む必要がある」と訴えました。
 2022年に成立したオクラホマ州法は、公立学校で出生時に割り当てられた性別に合わせてトイレを使うことを義務化するもので、ネックスさんも女子トイレを使っていました。NPO「運動前進プロジェクト」によると、同様の州法はほかにも9つの州で導入されています。 
 LGBTQの自殺防止に取り組むNPO「トレバー・プロジェクト」の2023年の調査では、米国の13~24歳のLGBTQの41%が「過去1年間に自殺を真剣に考えたことがある」と回答しています。家族や周囲の理解がない場合や、学校に性別に関係なく利用できるトイレがない場合に自殺を試みる傾向が強かったといいます。

 共同通信によると、アーカンソー州が14日、州発行の運転免許証や身分証明書の性別欄のサードジェンダー表記「X」の廃止を決めました。同州のサンダース州知事(共和党)は声明で「性別は二つしかない。「X」はナンセンスで、私が知事である限り支持しない」と表明しました(なんと残酷な…)。人権団体は、ノンバイナリーの存在を「抹消しようとするものだ」と州を批判しています。AP通信によると、50州のうち少なくとも22州と首都ワシントンが運転免許証や身分証明書の性別欄でサードジェンダー表記を認めています。 

(州にもよりますが)トランスジェンダーにとって本当に厳しい状況が続いているだけに、今回のレディ・ガガのコメントは本当に素晴らしく、トランスコミュニティの人たちを力強く励ますものになったと言えます。 



参考記事:
レディー・ガガ、誹謗中傷が殺到したトランスジェンダー女性に送ったメッセージが話題(コスモポリタン)
https://www.cosmopolitan.com/jp/entertainment/celebrity/a60170179/lady-gaga-instagram-post-on-international-womens-day-hatred-dylan-mulvaney/

高校生自殺が波紋 「出生時の性」でトイレ利用、米州法施行が背景に(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240315/k00/00m/030/057000c

運転免許証の性別、男女以外不可 米アーカンソー州で「X」廃止(共同通信)
https://nordot.app/1141177018354156301?c=39550187727945729

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