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昨年の新規HIV感染は960名で、過去最少だった2022年より少し増えました

2024年03月27日

 厚労省エイズ動向委員会が26日、2023年の新規HIV感染者・エイズ患者の速報値を発表しました。新たにHIV感染がわかった方は前年比37名増の669名、エイズを発症してわかった方は前年比39名増の291名で、計960名となりました。過去最少の884人だった昨年より76名増加しています。
 保健所等におけるHIV抗体検査件数は106,137件で、昨年よりも33,033件増加しています。前年より少し増加したのは、検査数が増えたことが背景にあると厚労省は見ています。
 厚労省エイズ動向委員会の白阪琢磨委員長は「積極的に保健所などでの無料・匿名の検査を受けていただきたい」としています。
 
 感染経路別に見ると、同性間性的接触による新規HIV感染が476名(全体の約71%)、エイズ患者が157名(全体の54%)と、割合的にはこれまでと同様の傾向です。ただ、数を昨年と比較すると、同性間性的接触による新規HIV感染が39名増、エイズ患者が36名増となっていて、昨年から増えた分がほぼほぼ同性間性的接触によるものであるということがわかります。その理由については専門家の意見を待たなければなりませんが、昨年、新規感染が激減した理由について国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター名誉センター長の岡慎一医師が「都内の新規感染は大きく減少しており、PrEPの効果だと思います」と述べていたことに鑑みると、今年ゲイ・バイセクシュアル男性の間で感染が少し増えたのは、PrEPの普及の伸び悩みが原因ではないかと見ることもできるのではないでしょうか。
 先月末にツルバダの予防投与(PrEP)としての承認申請が行なわれましたが、薬事承認されることで医師も見守り医療や情報提供などがしやすくなり、利用しやすくなる反面、保険適用がされない(薬価が手が出ないくらい高くなる可能性が高い)、ツルバダのジェネリック薬が日本で買えなくなる、といった障壁も指摘されており、普及にはまだ課題がありそうな状況です。海外のように広く利用できるような体制(公費助成など)が整えられることを期待します。
 

 海外では、行政がきちんとPrEP利用の環境を整え、ゲイコミュニティと連携しながら促進し、驚くべき成果を上げることが明らかになっています(シドニー中心部での昨年の新規HIV感染者数はわずか11人でした)。日本でも同じことが言えます。
 「HIV/AIDS GAP6」は昨年8月、厚労相に「日本におけるHIVエイズの流行終結に向けた要望書」を提出しました。2030年までにHIV/エイズの流行を終結させることを目標に、具体的方策の策定など5項目を要望するものです(詳細はこちら
 10月には「2030年までのHIV流行の終結に向けた道筋とは -最新のHIV治療と残された課題を専門医・関連団体が語る-」と題するセミナーが開催され、ゲイコミュニティの方たちも多数参加したパネルディスカッションや、専門医の方たちによる学びの多いレクチャーなど、限られた時間の中で重要なお話がギュッと濃縮された、意義深い内容になりました(レポートはこちら
 30年前は「死に至る病」だったかもしれませんが、今は検査を受けて早くわかって治療をすれば、HIVを持っていない人と同じくらい長生きできますし、治療法も進歩し、半年に1回の注射でOKな治療法も出てきました。U=U(検出限界以下になったHIV陽性者からうつる確率はゼロである)は陽性者へのスティグマや差別感情の軽減に大いに貢献し、PrEPという画期的な予防法も普及しつつあります。そうしてコミュニティベースのHIV団体が今年、2030年までのHIV流行の終結に向けた提言を行ないました。今年11月28日〜30日に新宿で開催される「日本エイズ学会学術集会・総会」はaktaの岩橋恒太さんが大会長を務めることになっており、ゲイコミュニティとの連携が強まることが期待されています。行政も2030年までのHIV流行の終結を目指すという目標に本腰を入れて取り組み、HIVに関するコミュニティともっと連携し、PrEP普及のために体制を整えていただければと願うものです。


【Pick Up情報】
 4月21日の東京レインボープライドのパレードに、今年も「#UpdateHIV」フロートが出走します。aktaとぷれいす東京が中心となり、JaNP+、エイズ予防財団、製薬会社が協働で運営します。陽性者として歩きたい方や、ぷれいす東京の参加者として歩きたい方は、こちらからお申し込みください。募集締切は3月31日(日)です。

  
 
出典:
令和5年 HIV感染者・AIDS患者の年間新規報告数(速報値)(API-Net)
https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2024/2403/20240326_coment.pdf

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