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レポート:東京トランスマーチ2023

3月31日のトランスジェンダー可視化の日、トランスマーチが開催されました。記録的な暑さのなか、約300名の方たちがトランスジェンダーの生きる権利を訴え、新宿の街を行進しました。レポートをお届けします

レポート:東京トランスマーチ2023

本当は昨年、11月20日(国際トランスジェンダー追悼の日)の前日・19日に開催される予定だったのですが、延期となっていた東京トランスマーチ2023が、国際トランスジェンダー可視化の日(International Transgender Day of Visibility)に当たる3月31日に開催されました。トランスジェンダーコミュニティを祝福し、トランスジェンダーが直面する差別の現状への認知を高める日です。東京トランスマーチはトランスジェンダーを“犯罪者予備軍”や”社会の撹乱者”として描く差別言説に対抗し、トランスジェンダーの〈主体性〉を取り戻し、多様な人々が共に生きる社会をめざし、差別言説を跳ね返していこうとする趣旨で開催されました。今回で3回目となります(2022年のレポートはこちら
レポートをお届けします。(後藤純一)

 
 前日からにわかに暖かくなり、3月31日(日)は最高気温28.1度という3月としては異例の暑さを記録した日でした。都庁横の新宿中央公園ではお花見を楽しむ方たちもたくさんいました。
 新宿中央公園水の広場には、各地のパレードでお会いするアライの方や、杉並でトランスヘイトと闘っているゲイの友人、アフリカのLGBTQ支援に携わるゆーすけさん、日本ろうLGBTQ+連盟のモンキー高野さんなど、いろんな方が来られていました。90年代、それこそ97年のダイクマーチとかにも参加していたレジェンド、ドラァグクイーンのジャスミンさんも来られていましたし、2015年2016年のTRPに素晴らしいフロートを出していたアマランス・レジーヌさん(2011年の「石原都知事の同性愛者差別発言に抗議する」デモにも参加されていたPRIDEクイーンです)、マダム・ラフランスさん(TRPの初期の代表をつとめた方)なども来られていました。
 13時半、主催するTransgenderJapanの事務局長・村田さんがマイクを握り、今回、フロートを2台用意していたものの、人数を見て、警察から1台でまとまって歩くようにと言われたため、先頭のDJフロート1台だけで、コールを予定していた2台目のフロートはナシになりましたと説明がありました(残念ですね…でも2台目のフロートも最後尾で一緒に行進してました)。代表の畑野とまとさんからも挨拶がありました。


 参加者が整列し、出発の前に、今日この場に来られなかった、命を落とした仲間のために黙とうが捧げられました。14時頃、ドラァグクイーンが乗ったDJフロートに先導され、マーチが出発しました。アギレラの「Beautiful」のクラブリミックスが流れ、DJのとまとさんが「みなさんは美しいです」と語りました。その後も清志郎だったりリリー・アレンだったり、トランスフォビックな世の中に抗議するようなプロテスト的なメッセージが感じられる多彩な音楽が流れました。最後尾では、ハウスの四つ打ちのリズムに合わせて「Trans rights are human rights」といったコールが(たぶん)即興で行なわれ、ラップみたいでカッコよかったです。
 新宿中央公園から右にまっすぐ向かったパレードは、甲州街道に出て、左に曲がり、新宿駅南口へと向かいました。大勢の人でにぎわう南口辺りでは、手を振って応援してくれる人や、写真を撮る人などもたくさんいました。DJのとまとさんや、最後尾のコールのみなさんも、多様な人々が共に生きられる社会をと訴えるメッセージを沿道に伝えていました。
 明治通りで左折し、伊勢丹の前を通り(やはり大勢の人たちが見ていました)、靖国通りを左折し、歌舞伎町を行進、大ガードをくぐって、新宿中央公園へと帰着。80分くらいのかなり長いマーチになりました。 























 みなさんがゴールした後、特に集会はなかったのですが、再び村田さんがマイクを握り、感謝の言葉と、参加者が300名だったというアナウンス、そして、今後もまたトランスジェンダーをめぐる世の中の状況に応じて発信を続けていきます、と語りました。代表の畑野とまとさんも簡単にご挨拶し、最後に村田さんが「この次のトランスマーチでも生きて会えますように」と語り、散会となりました。

 参加した方がおっしゃっていて、本当にそうだなぁと思ったのですが、日頃SNSでヘイトスピーチを行なっているようなアンチの人たちのいやがらせなどもなく、平和に歩けたのは幸いでした(3/8のウィメンズマーチ東京では結構ひどいいやがらせがあったそうです)。スタッフとしてアライの男性の方たちが参加者を守るように伴走してくださっていたこともよかったのではないでしょうか(ありがとうございます)

★東京トランスマーチ2023のフォトアルバムはこちら
 

 
 なお、この日、全国各地でトランスジェンダーの権利擁護を訴えるスタンディングや、支援の催しが行なわれました。
 青森レインボーパレードのみなさんは、三戸駅前〜八戸駅前〜三沢駅前〜青森駅前でスタンディングツアーを行ないました。
 埼玉・川越の最明寺は、トランスジェンダーカラーの花手水で支援を表明しました(4/5までやってるそうです)
 福岡のBookClubFukuokaでのR4LM(トランス差別に反対する読書会)も福岡PARCO前でスタンディングを行なったそうです。
 
 SNSでも多くの人が#国際トランスジェンダー可視化の日のハッシュタグで連帯を表明しました。
 トランスジェンダー映画祭も開催されました。
 『片袖の魚』が3月31日からアマプラやHuluなど多くのメディアで配信されるようになったというお知らせもありました。
 
 全国の当事者&アライのみなさんがそれぞれの持ち場でできることをして、そんな一人ひとりのアクションがこの日(たとえ考え方や方向性などは異なるとしても)トランスジェンダーが直面する困難への認知を高め、一緒に差別に抗していこうとするムーブメントを生み出していました。
 私たち一人ひとりの力は決して強くはないかもしれませんが、これからもトランスジェンダーの人たちの命や生活が脅かされないように、トランスフォビアや差別、ヘイトと闘っていくために、当事者とアライの人たちがもっと強く連帯し、運動が大きくなっていくことを願います。

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