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アート展レポート:能村個展「禁の薔薇」

4月12日から新宿眼科画廊で能村さんの個展「禁の薔薇」が始まりました。以前の作風とはまた違った作品に出会えます。二丁目に行くついでにでも、ぜひふらりとお立ち寄りください

アート展レポート:能村個展「禁の薔薇」

 2021年のALAMAS CAFEでの個展以来となる、能村(a.k.a. Taka Nomura)さんのひさしぶりの個展が新宿眼科画廊で始まりました。初日に新宿眼科画廊におじゃましました。



 まず、入口に掲示されている前説的な文章に心を奪われました。憧れの東京に出てきて働きはじめたものの、アウティングされた、ゲイであることは隠し続けなくてはいけないのだと思い、隠すのに疲れてしまい、結局その会社は辞めてしまった、それでも絵を描くことはあきらめなかった…という能村さん自身の体験が短い私小説のように語られ、画家として伝えたいことは何だろうと考えたときに、異性愛が前提の社会でゲイはいろんなことが禁じられていて不自由で、以前は仕方ないと思っていたけど、ようやくそれが不当なものだと気づき、「隠された風景とされてきた物事に徐々に光があたり始め」たと、「誰もが光に照らされ」「プライドを掲げずとも、不当に傷つけられることがない日々が訪れ」るようにとの祈りを込めて、今回、プライドを薔薇にたとえ、光を「金」とし、多くの行動が「禁」じられていることとかけて「禁の薔薇」とした、という文章でした。これまでいろんな美術展を観てきましたが、こんなに胸を打たれる前説ってそうそうないです。3年前に初めてaktaで能村さんの作品を拝見したときと同じように、心震える思いがしました。
(ちなみに今回、「おかまくん」というZINEも展示されているので、そちらも併せて読んでみてください。小中学校の頃、女の子とばかり遊んでいたり、先生に「もっと男らしくしろ」「お前はおかまか」と怒鳴られたことがある方は少なくないと思いますが、そういう話が綴られています)

 aktaで初めて観たときの作品は、ちょっと抽象的でフランシス・ベーコンを思わせるような「怒り」や「叫び」を感じさせるもので、ALAMAS CAFEの個展の作品もその延長線上にあると感じましたが、今回の個展の作品は、人物の顔や腕、脚などが具象的に描かれていて、ただ、それらは、ある絵では犬のお面で隠されていたり、ある絵では顔自体がお面のように浮かんでいたり、顔が半分埋もれていたり、何かで覆われたり隠されたりしていて、部分(パーツ)として描かれていましたし、どの顔もあまり幸せそうには見えませんでした。ゲイとして、自分はこういう人ですと隠すことなく世間に表し、そのままでいいんだよと受け容れられたらいいのですが、現実はそうではなく、いろんな抑圧や制限があるがゆえに、全人的な存在ではいられず、どこかを覆い隠さなくてはいけない、そんな苦しい気持ちが表現されているんだろうなと思いました。ただ、以前の作品のような「怒り」ではなく、もっとこう…シニカルというか、アイロニーというか、どこかユーモアも感じられるような作品でした。
 以前の作品ではレザーがフィーチャーされていたのですが、今回は六尺や黒猫(褌)を描いた絵が2点ありました。1点は「腕」が黒猫とお花を花束のように抱えているような作品。もう1点は、干された六尺と同じような感じで「脚」がぶら下がっていて、その足元に椿の花があり、後ろには獣の脚が見えるという幻想的な作品。和のテイストであることで、どこか柔らかくて親しみやすさが感じられる作品になっていると思いました。腕毛やすね毛の感じもエロティックでよかったです。
 
 初めて能村さん自身にもお会いできて、いろいろお話できたのもよかったです。
 
 週末、二丁目に行くついでにでも、ぜひ、ふらりと立ち寄ってみてください。土日は能村さんも在廊しているそうです。
 

能村 solo exhibition「禁の薔薇」
会期:2024年4月12日(金)~17日(水)
会場:新宿眼科画廊スペースS
開館時間:12:00-20:00(水曜 -17:00)
入場無料

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