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【同性パートナーシップ証明制度】埼玉県の川口市を除く全62市町村が一気に連携協定を結びました

2024年04月12日

 埼玉県では県内63市町村のうち川口市を除く62市町村で「パートナーシップ宣誓制度」などが導入されていますが、12日、その62市町村が連携協定を結んだことが発表されました。これほどたくさんの市町村が同時に連携協定を結ぶのは初めてです。「レインボーさいたまの会」は「自治体が少しでも格差をなくそうと人権問題として取り組む姿勢を見せてくれた」「当事者の安心感につながる」と評価しています。

 協定の締結を主導したのは川越市で、市長会や町村会に協力を呼びかけ、合意を得たといいます。12日に行なわれた締結式で川越市の川合善明市長は、「当事者の煩わしさをできるだけ減らしたいと考えた。制度の利用がさらに進むのではないか」「多様性を尊重する社会の推進に寄与すると考えている」とあいさつしました。
 報道陣の取材に対し、川合市長はまだ制度を導入していない県と川口市について「それぞれの考えがあるが、県が作ってくれれば協定がなくても済んだ。連携を県が主導することを(市から)打診もしたが、『主導する考えはない。市町村がやること』とのことだった。川口市が制度を作り、協定に加わりたいなら即、入っていただく」と語りました。

 県内で唯一、制度を導入していない川口市では、奥ノ木信夫市長が3月の記者会見で「市議の中に異論があることなどを踏まえて慎重に検討していた」「市としては導入に前向きだ」と述べています。今後、全63市町村での導入と連携が達成されるのではないかと見込まれます。

 埼玉県の大野元裕知事はこれまでずっと県としての制度導入には後ろ向きで、先月の会見でも「戸籍と同様、国の制度として基礎自治体に委託するべきだ」と述べるにとどめています。ただし、県営住宅の入居などについては婚姻と同じ扱いにするなどの対応を行なっています。2022年には「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例」を施行しました。

 2020年4月、さいたま市で宣誓第1号となった稲垣晃平さんは、「創設4年で62自治体まで広がったことは、本当にありがたい。各自治体の相互連携が進めば、県内の病院などに受診した際、安心して受診できると思う」と歓迎しました。

 まだ全国でも数えるくらいしか制度導入が進んでいなかった2018年に県内12市町議会に制度の導入を求める一斉請願を行なったのをはじめ、県内の計55首長に要望書を提出するなど、制度実現に尽力してきた「レインボーさいたまの会」の鈴木翔子共同代表は、今回の連携協定について「基礎自治体としてできることを頑張っていただいた」「実務的な話でいえば、県内で自治体をまたぐ引っ越しをする際に引き継がれ、(パートナーシップの)手続きが簡略化されるメリットがある。何より大きいのは、自治体が少しでも格差をなくそうと人権問題として取り組む姿勢を見せてくれること。それが当事者の安心感につながる」と歓迎しました。一方、「ファミリーシップ制度を導入したり、充実した行政サービスを受けられる自治体がある一方で、証明書発行だけのところもある」と、自治体ごとに制度が異なっていることで、受けていたサービスを転入先では受けられなくなるおそれもあるといい、「他県では県が導入し、統一的な運用をしている」「自治体ごとの差を縮めて一定レベルの保障がされるために、県が制度を導入することは重要」「埼玉でもそうすれば、市町村が連携する必要がなくなる。使い勝手のよい制度を県が導入してほしい」と求めています。
 ほぼ全市町村に拡大したことで見えてきた課題もあります。「パートナーシップ宣誓」に際し、予約して役所の窓口に二人そろって出向く必要がある自治体では、ハードルが高いと感じる方もいるため、鈴木氏は「松伏町や宮代町で実施されているような郵送での受付が広がってほしい」とも語っています。また、別居でも婚姻関係が認められる法律婚と違い、「パートナーシップ宣誓制度」は同居が条件となっており、「仕事の単身赴任以外にも、親や近隣にカミングアウトできなかったり、親の介護で実家を出られなかったりと、事情があって別居するカップルも少なくない」と指摘、個々の事情に寄り添うような制度設計の必要性も訴えています。

 全国の自治体に制度の導入を働きかけてきた明治大学法学部の鈴木賢教授は「パートナーシップは、国に法律をつくるよう促すテコ。60を超す自治体が連携することは大きな成果だ。市民や自治体の動きと合わせて県が動けば、国への強いメッセージになる」と語っています。 

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 東京都杉並区では2023年4月から「性の多様性推進条例」が施行され、「杉並区パートナーシップ制度」も始まりましたが、事実婚カップルは対象に含まれていませんでした。今年3月18日の杉並区議会本会議では、議長を除く47人の区議のうち公明・共産・立憲民主などの会派に所属する30人の区議が「パートナーシップ制度を事実婚カップルにも適用すること」を求める陳情の採択に賛成し、議論が始まりました。
 陳情の提出者の一人である杉並区の女性・Tさんは、元の姓を変えたくないという理由から事実婚を選択していますが、「事実婚だと明かすと、不思議がられることが多い」「かつては、知人から『不潔だ』と言われ、ショックを受けたこともありました」と語り、公的に結婚を証明する手段がないことで不都合を感じると話しています。一緒に陳情を提出した女性・Yさんも、「去年、杉並区がパートナーシップ制度を始めたとき、私も利用できたらいいなと思ったんですけど、異性の事実婚は駄目なんだと知り、がっかりしました」「性的マイノリティカップルの方たちと事実婚は、違うグループだと見られてしまうことが多いですが、自治体のパートナーシップ制度によって選択肢が増えるという点では同じだと思っています」と語り、事実婚も含まれるようになれば「心のよりどころができる」と期待をにじませています。
 同性パートナーシップ証明制度の対象に事実婚カップルも加える流れは2019年に千葉市から始まり、(正確な数はわからないのですが)全国のたくさんの自治体ですでに認められています。同性婚と全く同様で、ただ幸せを感じられるカップルが増えるだけで、誰も困りませんし、何も問題はないはずですが、これに反対する議員もいるようです。3月18日の本会議で無所属・都民ファーストの会の安斉昭区議は「パートナーシップ制度は昨年スタートしたばかりで、区民への周知が十分に進んでいない」「事実婚を含めることについて慎重な議論を求める声もある」として、「陳情を審査するのは時期尚早と言わざるをえない」と述べたそうです(なぜ慎重になるのか…よくわからないですね。国会で繰り返されてきた政府の答弁そっくりです)。なお、陳情を採択するかどうかの採決に際しては自民党・無所属杉並区議団の議員10人が退席したそうです。
 一方、岸本聡子区長は2月の議会で「事実婚を対象に加えることについても検討していく」と述べており、制度の拡大に前向きな姿勢です。

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 長野県松本市は今年度、結婚に伴って市内で新たに住居を購入したり賃借したりする際の費用を補助する「結婚新生活支援事業」の対象に「パートナーシップ宣誓制度」の利用世帯を加えることを明らかにしました。県内で最も早く制度を導入した自治体として、多様性を育むまちづくりをさらに推進するそうです。10日の定例記者会見で臥雲義尚市長は「パートナーの生活を後押しする市の姿勢やまちの多様性、包容力をアピールしたい」と述べました。
 結婚新生活支援事業は「国の地域少子化対策重点推進交付金」を活用し、夫婦共に29歳以下の場合は60万円、39歳以下は30万円を上限に、住宅取得や賃貸、引越し、リフォームなどの費用を補助する制度です。住宅取得やリフォームについては上限を超えた分に対し、市独自で10万円を限度に上乗せしています。「パートナーシップ宣誓制度」の利用者は国の補助金対象ではなく、全費用を市単独で補助する方針です。所得要件は夫婦またはカップルの合計所得が500万円未満であることです。詳しくは市の移住・定住ポータルサイト「まつもと暮らし」をご覧ください。

 

   
参考記事:
パートナーシップ制度 県全域で連携する協定締結(テレ玉)
https://www.youtube.com/watch?v=wVl1JrS9McI
パートナー制度で連携、埼玉 62市町村が協定締結(共同通信)
https://nordot.app/1151459395299197891?c=302675738515047521
パートナーシップ制度 ほぼ全域で連携 川口市除く62市町村が協定(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASS4D4DWSS4DUTNB001M.html
パートナー制度、埼玉県内市町村で連携 転居後も簡易手続きで継続 残る川口市も導入に前向き(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/321022

自治体のパートナーシップ制度に「事実婚」を含めるべきか? 杉並区議会で「賛否両論」(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/aa227f006b406919f69433fd51d4770fef050edc

松本市の結婚新生活支援事業、「パートナーシップ宣誓制度」利用世帯も対象に(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024041000886
松本市の新婚世帯支援事業 パートナー宣誓世帯も(市民タイムス)
https://www.shimintimes.co.jp/news/2024/04/post-25264.php

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