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『94歳のゲイ』長谷忠さんがTRPに参加するそうです

2024年04月17日

 20日から『94歳のゲイ』がポレポレ東中野ほかで公開されますが、長谷忠さんが初日の舞台挨拶に登壇し、TRPにも参加することがわかりました。


 『94歳のゲイ』は男が好きということを「絶対に言われへん」時代を生き、ずっと思いを胸に秘め、セックスすらせず、90近くなるまで誰にもゲイだと知られずに孤独に生きてきた長谷忠(はせただし)さんの人生を追ったドキュメンタリー映画です。2022年にMBSで放送された「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」が大きな反響を呼び、2023年にはTBSドキュメンタリー映画祭2023にて関西限定上映され、今回は追加撮影の素材も加えた90分の再編集版『94歳のゲイ』として劇場公開されます。

 長谷忠さんは1929年、香川県に生まれました。父親の愛人の子でした。初恋は小学校の先生でしたが、告白なんてできない時代でした。14歳で満州に渡り、通信兵などの任務に就き、終戦を迎え、1年後に本土に帰ってきました。
 戦後は大阪に住み、いろんな仕事を転々としました。同僚と身の上話になったりしたときに「なぜ結婚しないのか」と聞かれるのがいやで、親密になるのを避けてきたといいます。男の人に惹かれるということは「おかしいと思ってたけど、外にはもらさなかった」「言葉に出されへんかった」。そうして母親やきょうだいとも疎遠になってしまいました。
 長谷さんは10代の頃から長谷康雄の名で詩を書いて雑誌に投稿したりしていました。文学の世界では本当の自分を表現できたのです(あの谷川俊太郎さんにも認められる詩人だったそうです)
 誰ともつきあうこともなく、セックスすらせず、ひっそりと孤独に生きてきた長谷さんのことを知って、友達のようにサポートしはじめたのが、西成区で「にじいろケアプランセンター」を経営するケアマネジャーの梅田政宏さんというゲイの方でした。長谷さんは同じゲイだと知って、梅田さんに心を開きます。(2022年当時、56歳だった)梅田さん自身も周囲の無理解ゆえにカミングアウトできず、うつを経験したり、苦しんできた方でしたが、「昔の厳しかった時代を生きてこられたということを想像するだけでつらかった。大先輩やな、巡り会えてよかったな」と感じ、毎月の長谷さんの健診に付き添ったり、親身になってサポートするようになりました(しかし、2022年のMBSのドキュメンタリーの放送の3日後に、梅田さんが急逝…なんということでしょう…言葉を失います)
 梅田さんのサポートのおかげもあって、長谷さんはコミュニティにつながり、2020年に釜ヶ崎のカフェで初めて女装をして人前で歌うという経験をし、2021年には朝日新聞の記事「91歳「死ぬ前に女に」 一日限り、さらけ出す舞踏場」でフィーチャーされました(詳細はこちら)。そして2022年、MBSでドキュメンタリーが製作され、今回、満を持して劇場公開されることとなりました。

 4月20日(土)の公開を前に、この映画の監督である吉川元基さん(毎日放送報道情報局)が長谷さんに先日の札幌高裁判決をどう受け止めたかをお聞きした記事が公開されています。
「こんな時代に生まれたかった。僕はそれが残念やなって思うわ」
「(僕は)男を好きなことを隠そうとすると嘘をつかないとあかんし、友達も作らなかった。本当にしんどかった。好きな人はおったけど、言葉には絶対出されへん。気持ちはずっと抑えたままやった」
「同性愛者もいるんやなという世の中にならないとだめ。絶対に同性愛者がいるんやから。同性愛者を異性愛者がどのように認めていくかで世の中は変わっていく。『僕はゲイです』ってなにげなく言える世の中になったらええのにな。そしたら暮らしやすいやん。自由に生きられる社会になってほしい」
 この記事で、長谷さんが上映にあわせて上京すること、プライドパレードにも参加予定であることが伝えられました。


 上映館であるポレポレ東中野のインフォメーションによると、長谷さんは20日11:50の回の上映後と14:00の回の上映前に登壇するそうです。予告編にもあるように、ふだんは電動車椅子に乗って生活している方なので、移動するのもひと苦労だと思うのですが、映画の初日の舞台挨拶とTRPに参加するために、上京を決意をされたようです。
 厳しい時代をずっと孤独に生き抜いてきた94歳の大先輩が、生まれて初めてプライドイベントの会場に来られるということに感動を禁じえません…(人出がすごくて疲れるでしょうから長谷さんも長居はされないと思うのですが)もし会場でその姿をお見かけしたら泣いてしまうかも…。もし長谷さんに敬意を表し、ぜひ会いたいという方は、代々木公園ではお会いできるかどうかわからないので、11:50の回の上映後の舞台挨拶をご覧になるのがよいと思います(舞台挨拶後に個別にお話できる機会も設けられるかもしれません)
 
94歳のゲイ
2023年/日本/90分/PG12/監督:吉川元基
4月20日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次公開
 


参考記事:
94歳のゲイ、願うのは「自由に生きられる社会」 偏見や差別恐れ…交際経験なし(MBS/TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1117212

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