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性別変更後に凍結精子によって生まれた子の認知をめぐる裁判について最高裁が弁論へ――認知を認めなかった高裁判決が覆る可能性

2024年04月18日

 戸籍上の性別を女性に変更したトランス女性とそのパートナーの女性が、凍結精子を用いて生まれた二人の子の認知※を求めていた裁判について、2022年に東京高裁(木納敏和裁判長)は、子2人のうち性別変更前に出生した長女について親子関係を認めましたが、次女については「性別変更後に生まれたため女性を『父』とは認められない」として訴えを退けていました(詳細はこちら)。二人は上告し、最高裁の判断を仰いでいましたが、最高裁が5月31日、判決を変更するのに必要な弁論を開くことを決めました。高裁の判断が覆される可能性があります。

※認知 婚姻関係にないカップルの間に生まれた子とその父との間に法律上の親子関係を生じさせる届出です。認知届を提出することによって、子どもの戸籍の父母欄に「父」の氏名が記載されるようになります。民法は「父または母が認知できる」と規定しています
 
 Aさんは性同一性障害と診断され、6年前に戸籍上の性別を男性から女性に変更し、性別を変更する前に凍結保存していた自身の精子を使ってBさんとの間に2人の娘をもうけました。娘たちについて「父」としての認知届を自治体に出しましたが、戸籍上女性であるため、認められず、これを不服として家族で裁判を起こしました。
 提訴の際の会見でAさんは、「私たちは普通の家族ですし、出産の時は立ち会ったり、保育園も顔を出したりもしています」「生物学上の親であるうえ、実際に子どもを監護・養育しています」「現状、子どもの身に何かあっても、保護者として扱われません」「子どもがほしいという思いは性的少数者でも同じ。親子と認められなければ、病気や事故の時に、私は書類上、他人となってしまいます。病院が親と見なしてくれるのかいつも不安に思っています」「私たちの認知が通ったとしても、誰も困りません。一般の方たちに迷惑がかかることではないと思うんです」「今回の裁判が親子と認められずに困っている人たちの助けになれば」と語っています。
 原告代理人の仲岡しゅん弁護士は、「認知されないことによって、子の福祉に反する形が続いているといえます。認知されれば扶養に関する権利義務関係が発生し、相続の権利も得る。ところが、血縁関係があって現に養育しているにもかかわらず、法律上の親子関係がないからと、何かあっても法的には他人としてしか扱われないという問題が生じています」「多様な性のあり方、家族のあり方があるにもかかわらず、国のシステムはそこに追いついていない。この問題を今回の訴訟を通じて訴えたいです」と述べています。

 一審の東京家庭裁判所は「今の法制度で法的な親子関係を認める根拠は見当たらない」として訴えを退け、二審の東京高等裁判所は性別変更前に生まれた長女について「父親」としての認知を認め、変更後に生まれた次女については認めませんでした。原告はこれを不服とし、次女についてのみ上告していました。

 最高裁判所第2小法廷の尾島明裁判長は17日、判決を変更するのに必要な弁論を来月31日に開くことを決めました。二審(東京高裁)の判断が見直される可能性があります。
 血縁上の父親が性別変更した後に子をもうけた場合に法的な親子関係が認められるかどうかについて最高裁が判断を示すのは初めてです。最高裁は2013年、性同一性障害で戸籍上の性別を女性から男性に変えた夫が第三者から精子の提供を受けて妻が出産した子を法律上の夫婦の子と認める画期的な判決を出しています。昨年には、経済産業省に勤めるトランス女性の職員が職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だと認め、また、性同一性障害特例法の不妊化要件を違憲だとする判断を示しています。

 代理人を務める仲岡しゅん弁護士は、「親の性別にかかわらず子どもの権利が認められるような判決を望みます」とコメントしています。


 

参考記事:
性別変更した当事者 娘との親子関係求めた裁判 最高裁で弁論へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240417/k10014424831000.html
性別変更後に生まれた子の認知めぐる裁判 5月31日に最高裁で弁論へ 親子関係認めないとした判決が見直しの可能性(日テレNEWS)
https://news.ntv.co.jp/category/society/d9f21758f5ad47dfa45652ed976460af
性別変更後の親子関係巡り最高裁が5月に弁論へ 次女の認知否定の判決見直しか(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000345577.html
親が戸籍上の性別変更後にもうけた実子は法的な親子か?最高裁が弁論期日指定 親子関係認めなかった2審判決見直す可能性も 凍結精子でもうけた子の認知めぐり(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1120979
子不認知の二審判決を見直しか 性別変更後に誕生、最高裁(共同通信)
https://nordot.app/1153251430149570971?c=302675738515047521
親子関係否定、見直しか 性別変更後に誕生の子巡り 来月弁論へ・最高裁(時事通信)
https://sp.m.jiji.com/article/show/3214922
性別変更後に凍結精子で出生 「親子認めず」見直しか(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE174YR0X10C24A4000000/
女性へ性別変更後に子が出生、親子関係巡り最高裁が初判断へ…5月31日に弁論(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240417-OYT1T50124/
凍結精子で出産の女性カップルの子 認知巡り最高裁が弁論へ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240417/k00/00m/040/257000c
女性に性別変更後に生まれた娘と「父子」になれるか 最高裁が判断へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS4K2R45S4KUTIL01MM.html

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