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日本での婚姻平等(同性婚法制化)が社会に与えるポジティブな影響についての試算が発表されました

2023年02月21日

 LGBTQ(性的マイノリティ)に関する調査研究、社会教育を行なう認定NPO法人虹色ダイバーシティがこの度、日本で婚姻平等(同性婚)が実現した場合、結婚する可能性のあるカップルの人数や、それによる経済効果の推計を発表しました。※1


 2023年2月現在、全国5ヵ所で「結婚の自由をすべての人に」訴訟が続いており、5月に名古屋地裁、6月に福岡地裁で判決が予定されています。この訴訟で争われているのは憲法で保障されている基本的人権であり、経済的な損得とは切り離して考えるべきです。しかしながら、婚姻平等への賛否を明らかにしていない国会議員が39%程度(「マリフォー国会メーター」参照)いることや、企業からも「規模感が見えないとビジネスとして準備しにくい」という声があることから、婚姻平等が日本社会に与えるポジティブな効果を具体的にイメージいただくための材料として、どのくらいの人が結婚する可能性があるのかを試算したとのことです。
 試算結果は以下の通りです。


婚姻平等(同性婚)が実現した場合に結婚する可能性のある人 = 246,455人(123,227組)
<調査方法>
2020年国勢調査の未婚者の人数にLGB人口割合2.1%※2と未婚率を乗じて算出

LGBTQのメンタルヘルスが10%〜20%改善すると仮定した場合の社会的損失の低減効果 = 119億円〜855億円(年間)
<調査方法>
LGBTの自死による社会的損失1,188億円〜4,277億円※3から推計
(デンマークとスウェーデンでは、婚姻平等実現前後で同性パートナーのいる人の自死率が46%減少したという調査もありますが、今回は短期的な効果として仮に10〜20%で算出しました)

結婚イベントによる直接効果+間接効果 = 8,110億円、雇用効果7万4千人
<調査方法>
結婚1組あたりの経済波及効果が658万円※4との推計を用いて計算(結婚イベントは挙式、披露宴・ウエディングパーティ、結婚前イベント、婚約記念品・指輪、写真関連等を含む)

※1 推計には、法政大学グローバル教養学部の平森大規助教ならびに「Business for Marriage Equality」キャンペーン運営メンバーの皆様のご協力がありました
※2  2019年に大阪市で実施された無作為抽出調査で同性愛者、両性愛者と明確に回答した方は2.1%
※3 性的マイノリティの自殺・うつによる社会的損失の試算と非当事者との収入格差に関するサーベイ(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
※4 結婚市場の経済波及効果推計2021(『リクルートブライダル総研』調べ)


【留意すべき事項】
・本試算はLGBTQの人口、(結婚できるようになったとしての)未婚率、メンタルヘルスの改善度合い、結婚イベントに消費する金額(異性カップルと同じと想定)など、いくつかの仮定に基づいて計算しており、今後、LGBTQに関する基礎データの積み上げにより、より精緻な試算ができるようになる可能性があります。
・今回はすでに経済波及効果が発表されていた結婚イベントに関する数字だけを試算しましたが、結婚に伴い、新婚旅行、住居や保険の見直し、車の購入、子どもを持つことを検討する場合もあります。結婚イベント以外の業種を勘案すると、さらに大きな経済効果になる可能性もあります。

【論点となる部分】
・LGBTQですでに結婚している人もいますが、現時点で未婚の人が結婚することを新たな経済効果として出すための推計であることから、未婚者の数をベースとしています。国勢調査で死別、離別、配偶関係不詳と回答した人は含んでいません。
・今回の推計では、人口割合を保守的に2.1%としました。同性愛者、両性愛者とはっきり自認していなくても同性をパートナーとして生活している人はいますが、今回の推計には含んでおりません。
・未婚率に関して、20代は一般データと同じ、30代以降は異性愛者の生涯未婚率を元に計算いたしました。LGBTQの方がパートナーを見つけにくいことや、親族から反対にあう恐れがある等の要因で、未婚率が高くなる可能性もありますが、それがどの程度かは現時点では明らかになっておりません。
・婚姻平等が実現することによって、同性をパートナーとして生活する人の生活の安定やLGBTQへの社会的受容度の向上が見込まれ、LGBTQのメンタルヘルスが向上することが期待されておりますが、どのくらいの期間で、どの程度の効果があるのかは、現時点では予測が難しい点となっております。
・結婚イベントに消費する1組あたりの金額は、異性カップルの平均値を用いました。カミングアウトの困難さから結婚式を行なわない、招待客が少ない等の可能性もあります。逆に、子どもの少なさや今まで祝福される機会を持てなかったことから特にお金をかける人が出てくる可能性もあり、現時点では予測が難しいポイントとなっています。また、未婚者の中でも結婚式だけはすでに挙げている人もいますが、その数の把握は難しく、今回の推計では考慮しておりません。

 
 さまざま留意点や論点はありながらも、今回、同性婚が認められたら12万組を超えるカップルが結婚するだろう、制度的な差別がなくなることによる当事者のメンタルヘルスの改善で数百億円もの社会的損失が改善されるだろう、結婚式などのイベントによる経済効果は8000億円超に上るだろうとの推計がなされ、どれだけ日本社会にポジティブな影響を与えるかということが具体的にイメージできるようになりました(良いことずくめですよね)
 戸籍上異性愛のカップルは結婚できて、同性だと結婚できないというのは構造的・制度的な差別であり、憲法で保障されている法の下の平等や幸福追求権などにも反する人権上の問題であることは言うまでもありませんが、このように、同性婚は「LGBTQにだけ関係があること」「社会が変わってしまうようなこと」というのではなく、「異性愛者も含めて社会全体にとっていいことがあるよ」というふうに示していくことは、世間の性的マジョリティの人たち(なかんずく力を持った方々)の見方や考え方を変えることにもつながるでしょう。(海外では盛んに行なわれてきたかもしれませんが)ある意味、画期的なことと言えるのではないでしょうか。
  
 
参考記事:
婚姻平等(同性婚法制化)によって国内で結婚する可能性のある人は12万組と推計 経済効果は8千億円以上(Digital PR Platform)
https://digitalpr.jp/r/68256?fbclid=IwAR1WZK6yWQrAfjqdMwmn_5BpQr-c8-9GTVLdXE2MSoXuo3XopNyXX28w8Rg

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