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石川大我議員らが総務政務官に就任した杉田水脈議員に対して「生産性ない」発言の謝罪や撤回を求めましたが、応じられませんでした

2022年11月09日

 11月9日、参院政治倫理確立・選挙制度特別委員会で石川大我参院議員らが、2018年に「”生産性”がないLGBTカップルに支援が必要か」などと寄稿した杉田水脈総務政務官に謝罪と寄稿内容の撤回を求めましたが、杉田氏は「当時からLGBTの方を差別する意図は全くなかった」と述べ、謝罪や撤回には応じませんでした。
 

 杉田水脈衆院議員は2018年、月刊誌「新潮45」8月号に同性カップルらを念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと寄稿したり、YouTube番組で同性愛者の自殺率の高さを嘲笑う姿など、LGBTQへの差別的な言動が問題視され、永田町の自民党本部前で(LGBTQの抗議デモとして史上最多となる)5000人規模での抗議が行われるなどしましたが、それ以降もLGBTQに対して発言の撤回や謝罪はしてきませんでした。ほかにも、女性への性暴力に関して「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言したり、国会で「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と言い放つなど、ジェンダーについても問題発言を繰り返しています(ジャーナリスト伊藤詩織さんを中傷するツイッター投稿に「いいね」を押したことが先日、東京高裁判決で名誉毀損と認定されました)
 そのような人物が8月の内閣改造で総務政務官に任命されたことを受けて、様々な方面から批判の声が上がっていました。
 毎日新聞は「「多様性の尊重」を掲げる岸田首相に「うそつき」と毒づきたい」と、信濃毎日新聞は社説で「杉田氏らの人事を再考すべき」と断じています。
 北丸雄二さんは9月5日の大竹まことゴールデンラジオで、統一教会との関わりという視点から杉田氏を論じています。
 
 本日掲載されたDialogue for peopleの「公権力による差別に抗うために――身近なところから社会の仕組みを変えていく」という記事で、佐藤慧記者は、「「差別の意図はなかった」「扇動するつもりはなかった」という言い訳も耳にするが、実際にその行為により被害が生じた場合、意図がどうであろうとその責任は問われなければならない。無自覚な加害者とならないためにも、ヘイトスピーチの持つ「沈黙効果」や「差別扇動効果」などは、議員の席に就く人間として最低限知っておく必要があるだろう」と指摘しています。「本来であれば、「自由権規約」や「人種差別撤廃条約」に鑑み、国や自治体には差別や暴力の扇動に歯止めをかける責任がある。それをせずに放置することは、単に「何もしない」のではなく、「差別や暴力を容認する態度」として、社会に伝わっていく危険性がある」
 同記事で外国人人権法連絡会事務局次長の瀧大知さんは、「そもそも、『差別には声をあげなければならない』という意識が、公的な立場にいる人々に欠如している、ということが言えるのではないかと思います」と現状を憂えています。「戦後、大戦以降の世界では、『どのように差別を止めるのか』あるいは『差別と闘う』ということが、社会の大きな課題として認識されてきたと思います。例えば、『人種差別撤廃条約』のフォローアップ文章として、『一般的勧告35』があります。そのタイトルは『人種主義的ヘイトスピーチと闘う』というものです。当然、“公人”である政治家は率先して差別と闘う姿勢を見せる必要があります。この文書の37項には、公人が差別に対し明確な態度を示すことの意義が書かれています」「しかし残念ながら、日本ではそうした前提が共有されていません。非難以前に、公人による差別が堂々とまかり通ってしまっており、『差別は許される』というメッセージが送られ続けています。杉田水脈氏による数々の差別発言をはじめ、杉田氏が反省すら示さずに議員を続けていられる、まして総務大臣政務官という役職にまでつけてしまうのは、その象徴ではないでしょうか」。こうした問題に対し、市民一人ひとりが「声をあげることが何よりも大切」だと瀧さんは語っています。「例えば、杉田氏の差別発言が報じられたあと、間髪入れずに自民党本部前でのデモが行なわれたり、抗議の声が上がったりしましたよね。これがとても大切なことだと思います。明らかな差別発言、差別行為に対し、『それは許されることではない』と即座に社会が反応すること。そうした差別が誰によって行なわれるものであっても、ましてや公人によって行なわれるものには明確に『ノー!』と声をあげることが欠かせません。数週間後、数ヶ月後にやっと指摘するということではなく、差別に敏感な社会であることが大切です」
 
 10月27日、衆院倫理選挙特別委員会で立憲民主党の岡本章子議員が、杉田氏の「“生産性”がない」との寄稿に言及し、謝罪を求めたものの、杉田氏は「暮らしやすい社会の実現への努力をもってお応えしたい」などと答弁し、謝罪を拒みました(これを受けて31日、カンニング竹山さんがラジオ番組で「こういう方こそ国民の審判を問われなきゃいけないから、これは小選挙区で出さなきゃいけないと思う。政務官に抜擢するんだったら説明がないと。誰も納得しないでしょ」と批判しました)
 
 そして11月9日、参議院でも杉田総務政務官への追及が行なわれました。参院政治倫理確立・選挙制度特別委員会で、複数の議員が杉田氏に「“生産性”がない」発言の撤回・謝罪を求めました。
 石川大我議員は、自身が「“生産性”がない当事者の一人」だとして、寄稿の撤回・謝罪の意向を尋ねました。杉田氏は「不用意に生産性という表現を用いるなど拙い表現で不快に感じたり、傷つけられたりした方がいることは大変重く受け止めている」と反省の色を見せつつ、「努力をもって社会に還元して参りたい」として、謝罪や撤回には応じませんでした。石川氏は、杉田氏が同性愛を「一過性のもの」「不幸」などとした主張についてもただしましたが、杉田氏は「配慮を欠いた表現をしたことは率直に反省している」と答え、有識者や当事者らとの交流を通じて悩みなどへの理解を深めたとして「差別のない暮らしやすい社会の実現のために努力してきた。今後も努力したい」と述べました(野党席からは「撤回しろ」などのヤジも飛びました)。石川氏は最後に「あなたの発言、寄稿文で多くの方が傷つきました。自民党前(の抗議デモ)には5000人もの人が集まっているわけです。撤回・謝罪をしないというのは、自分の信念を貫くんだと、LGBTに対する差別を貫くんだということじゃないでしょうか」と述べ、政務官辞任を求めましたが、杉田氏は「(自身の)努力をもって、社会に還元していきたい」と応じるにとどめ、撤回・謝罪することなく答弁を終えました。
 また、重度障害を持つれいわ新選組の天畠大輔議員は、「生産性がない者は行政の支援に値しないと断ずる発言に、重度障害を持つ当事者として恐怖を覚えた」「人の価値を生産性で評価する発言の根底には(障害者施設の入所者らが殺傷された)『やまゆり園事件』を起こした植松聖死刑囚の考えと同じものを感じる」と述べました。杉田氏は「植松死刑囚と私が同じだという意見を持つ方がいるのは非常に残念に思う」「障害を持つ方に寄り添い、しっかり生活できる社会の実現に頑張る。まだまだ努力が足りていない」などと述べ、やはり撤回・謝罪はしませんでした。
 委員会が終了した後、日刊スポーツの取材に応じた石川氏は、「内容に関して『反省』という言葉は使っているが、謝罪と撤回を拒否するというのは、反省されていないということ。差別する意図はないともおっしゃったが、結果的に差別や偏見が助長され、広がりっぱなしになっている」と指摘し、「あまりにも責任に無自覚。(自身の発言に対する)責任を取ってもらわないといけない」と述べ、政務官の辞任を求めていく考えを示しました。今後も、国会での質問の機会を通じて杉田氏の責任をただしていくそうです。
 
 国会議員、しかも総務政務官という、総務大臣を助け、特定の政策及び企画に参画し、政務を処理することを職務とする役職に就いた人物が、過去にLGBTQへの差別発言をして非難を浴び、こうして国会で追及を受けても発言の撤回・謝罪を拒み続けていることに対し、「任命する岸田政権が掲げる「多様性の尊重」が偽りである証」「辞職に値する」など、批判の声が再燃しています。石川議員らとともに私たちも声を上げ続けていかなくては、と思う方も少なくないことでしょう。#杉田水脈氏の総務政務官起用に抗議しますのハッシュタグも、まだ動き続けています。

 

参考記事:
杉田水脈政務官に辞任を要求 LGBT当事者公表の石川議員(FNNプライムオンライン)
https://news.goo.ne.jp/article/fnn/nation/fnn-442502.html
「生産性ない」謝罪応ぜず=重度障害の天畠氏と質疑―杉田総務政務官(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022110900714
杉田水脈総務政務官がまた「答弁控える」連発 「生産性」発言の撤回求められると連発したのは…(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/212933
杉田水脈政務官「差別する意図は全くなかった」LGBTは「生産性ない」寄稿に関し謝罪撤回せず(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202211090000249.html

「LGBT差別はない」杉田水脈はナゼあんなことを言うのか?元・東京新聞記者が統一教会問題を通して見えた安倍派のカラクリを分析(文化放送)
https://www.joqr.co.jp/qr/article/64141/

公権力による差別に抗うために――身近なところから社会の仕組みを変えていく(Dialogue for people)
https://d4p.world/news/19290/

杉田議員「見解控える」繰り返す 差別発言巡り、国会で初答弁(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15457009.html
カンニング竹山、杉田水脈政務官の謝罪拒否に「小選挙区で出て国民の審判を」専門家は「重要な問題提起」(Smart FLASH)
https://smart-flash.jp/sociopolitics/207890/1

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