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【同性パートナーシップ証明制度】神奈川県全33市町村でコンプリート、山梨県、淡路市、庄原市、佐伯市でも導入へ

2023年07月03日

 先日、同性カップルも婚姻相当と承認する自治体が7割に達したとお伝えしましたが、その後も続々と、制度導入に関するニュースが届いています。まとめてお伝えします。(今回は南から順にお伝えします)

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 大分県の佐伯市は27日、来年度から「パートナーシップ宣誓制度」を導入する方針を示しました。
 大分県では臼杵市、竹田市、豊後大野市、日田市、豊後高田市で同制度が導入されています。また、今年1月に「性的マイノリティへの理解促進策を検討する有識者らの調査研究会」が県全体で「パートナーシップ宣誓制度」を導入することが望ましいとする提言を行ない、県は「具体的な取組みについて検討していきたい」としていました。今年6月には大分市も導入を表明し、県知事も「非常に意義があることだ」と評価しました。

 なお、大分県といえば、その温泉の魅力ゆえに世界中から観光客が訪れ、外国人留学生も多い立命館アジア太平洋大学(APU)があり、また、ドラァグクイーンを招いてイベントを開催するブルーバード劇場もあり、ゲイナイトが開催されたこともある別府市があります。いち早く制度を導入してもよさそうなものですが、別府市の長野恭紘(やすひろ)市長は28日、「やるとしたら県全体として考えていくべき」として、市独自の制度導入に慎重な姿勢を示しました。LGBTQ支援の姿勢を打ち出すことで観光業の振興にもつながるはずですし、ぜひ前向きに検討を、と願うものです。

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 山口県で初めて、2021年9月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入した宇部市について、宇部日報が記事を上げていました。
 これまでに6組のカップルが宣誓したそうです。宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)を提示することでサービスを提供する市内事業所は金融機関など6ヵ所となり、市では宣誓者による市営住宅の申込みも受け付けています。また、LGBTQへの理解促進や制度についての啓発も行なう出前講座も随時開催しています。2021年3月には、市役所職員向けのLGBTガイドラインを策定し、毎年研修を行ない、職員の意識向上に努めています。それ以前に2020年度から市内の全中学1年生に性の多様性についてのパンフレットを配布してきたそうです(素晴らしいですね)
 市人権・男女共同参画推進課には、県内2番目の制度導入に向けて動きだしている山口市からの問い合わせもあるそうです。同課の担当者は「サービスを提供する事業者制度などについて共通の枠組みができれば、個別支援の輪も広がる」と期待しているといいます。
 
 その山口県では、今年のGWに初めてプライドパレードが開催されました(開催に至るまでに多くの議員の方などの協力があったそうです。こちらの記事をご覧ください)。地元にも大きなインパクトを与えたと思われます。

 村岡知事は今月、LGBT理解増進法が成立したことを受けて、できるだけ早く県庁内に関係する課でつくるワーキンググループを設け、普及啓発に取り組み、「パートナーシップ宣誓制度」についても議論していくことを明らかにしました。
 26日の県議会で石丸典子県議(公明)から、LGBT理解増進法が成立したことや、宇部市に続いて山口市で「パートナーシップ宣誓制度」の導入が検討されていることを挙げ、県の対応について質問しました。これに対し村岡知事は「性的少数者の方々への正しい理解と認識を深め、性の多様性を認め合う意識を醸成することにより誰もが活躍できる社会の実現に向けて積極的に取り組む」と述べました。そのうえで今後、県庁内に関係する課でつくるワーキンググループを設置し、職場での配慮をまとめたハンドブックを新たに作成することや、県職員に対する研修の充実や相談窓口の設置など就業環境の整備を図っていく考えを示しました。「宣誓制度を導入するかどうかを含め、まずはこのワーキンググループで検討していきたい」とのことです。

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 広島県の山間部にある人口3.5万人の庄原市が「パートナーシップ宣誓制度」の準備を進めていると報じられました。導入時期は未定ですが、まずは人権啓発セミナーや広報誌を通じて、市民に性の多様性に対する理解を深めてもらうそうです。
 広島県内では広島市、三原市、三次市、東広島市、廿日市市、安芸高田市、府中町、海田町などで「パートナーシップ宣誓制度」が導入されています。先月は初めてパレードも開催されました。
 庄原市では週に一度、「Chosen Family Shobara」というLGBTQのためのセーフスペースが開設されています。60代のトランス女性・奥田圭さんが行なっている取組みです。奥田さんの活動が、市が支援策へと動くことにつながったのではないでしょうか。
 
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 兵庫県淡路市が、今年度中に「パートナーシップ宣誓制度」を導入する方針を決めました。兵庫県では阪神間の市町明石市、姫路市など多くの自治体で制度導入が進んでいますが、島内3市では初めてです。市民に周知し、制度の内容を充実させるため、市は23日からパブリックコメント(意見公募)を実施するそうです。

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 和歌山県で初めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入した橋本市は、10月1日に制度を改正し、宣誓者の子どもや親なども家族として認める「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」とするそうです。事実婚を含む婚姻していないすべてのパートナーも対象になります。市人権・男女共同推進室によると、これまで4組が宣誓しているそうです。

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 先月、「パートナーシップ宣誓制度」の案を公表した岐阜県は、29日、パブリックコメントを実施したうえで、市町村や民間企業と連携して速やかに検討を進める方針を示しました。県議会で野村美穂議員(県民ク)の質問に古田肇知事が答えたものです。
 岐阜県内では関市や海津市で制度が導入されています。
 
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 愛知県長久手市が6月から「市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を導入しました。宣誓したカップルは、パートナーの子の保護者として学校の面談に出席できたり、市営墓地の使用権を継続できたりなど、一部、夫婦、家族と同等のサービスを受けられます。市担当者は「制度をきっかけに、多様性のある社会について考えてもらえれば」と話しています。
 なお、長久手市の宣誓受領書(パートナーシップ証明書)とカードは、県立芸術大の学生がデザインしたそうです。


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 山梨県の長崎幸太郎知事は23日、県として「パートナーシップ宣誓制度」を導入する考えを明らかにしました。
 県は今年から当事者や有識者などによる研究会を設置していました。長崎知事は、「全ての県民が安心して生活することができることを旨とし、身近な市町村の意見も伺いながら当事者の視点から制度の詳細を詰めて参ります」と述べました。まずは要綱で導入し、モデル運用を始め、検証したうえで条例化を検討するそうです。同性カップルが受けられる具体的なサービスや導入のスケジュールについては現時点では未定です。

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 福井県議会で23日、杉本達治知事が秋頃をめどに「パートナーシップ宣誓制度」を導入すると表明しました。
 都道府県では現在、青森県から佐賀県まで12都府県で制度が導入され、長野県が8月、島根県が10月から導入予定です。福井県は15例目(島根県より早ければ14例目)になりそうです。

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 石川県が導入を進めている性的マイノリティへの理解を促す条例と「パートナーシップ宣誓制度」について馳浩県知事は、LGBT理解増進法を受けて、慎重な議論が必要だと述べました。
 23日開かれた県議会で打出喜代文県議(未来石川)は、これまで通り9月の条例制定を目指すのかどうかと質問し、馳知事は、前週に国会で成立したLGBT理解増進法の条文に数ヵ所修正が加えられたことに触れ、「慎重な議論が必要だ」と強調しました。「条例案を出すことありきの議論はしないほうがいい、と経験上思っている。9月に出したいと思っているのは事実だが、今後の議論の深まりに応じて。私の考えを押し付けるつもりはありません」
 県の条例については、今年5月に初めて条例案が示された際、(まだ審議中だった)LGBT理解増進法の与党修正案と全く同じ「不当な差別はあってはならない」という文言が使われていたと報じられています。馳知事は「与党の修正案(の骨格)も条例素案も私がつくったので同じなのは当然だ」と述べましたが、一方で「差別とはそもそも不当。国語の表現として極めておかしい」と与党案を批判し、ちぐはぐな発言をしています(詳細はこちら
 SNSでは「信用ならない」との声も上がっています。
 
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 新潟県は、県としての同性パートナーシップ証明制度の導入の必要性など、LGBTQについての県民の意識を探る調査を26日から始めました。今国会でLGBT理解増進法が成立し、性の多様性に対する理解を広めるための取組みが自治体にも求められるなか、調査の結果を県の施策に生かします。
 県によると、意識調査は県内に住む18~79歳の3000人を無作為に選び、43の質問からなる調査票を郵送するかたちで実施します。調査では、「アウティング」や「LGBT」などの言葉をどの程度知っているかを尋ねます。「身近な人から性的マイノリティであると打ち明けられたらどうするか」といった質問もあります。県・市町村の取組みとして、研修会の開催、相談窓口の設置、共用のトイレ・更衣室の設置などが必要と考えるか、といった質問もあります。同性パートナーシップ証明制度を利用したカップルが公的なサービスを夫婦と同様に受けられるようにすることへの賛否も問うそうです。
 花角英世知事は今月14日の定例記者会見で「性に関する受け止めは人によってまだ大きな開きがあるように思う。県としての対応を整理したい」と述べました。
(県民に制度の必要性を問うことには、これまでのLGBT法の議論と同様の問題が懸念されます。県民に是非を聞き、もし反対が多かった場合、制度導入が進まないとなれば、そのことも当事者にショックを与えるでしょうし、県民の否定的な意見はそのまま差別発言になりえるわけで、それが公表された場合、当事者が深く傷つくことになります。差別の再生産、二次被害のようなものです。質問項目の見直しがなされることを期待します)

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 7月1日から神奈川県秦野市、伊勢原市、真鶴町で「パートナーシップ宣誓制度」が導入されます。これにより、2019年4月1日の横須賀市と小田原市から始まった神奈川県内33市町村での制度導入がすべて済み、コンプリートすることになります。香川県に次いで2例目の偉業です。NPO法人SHIPなど、神奈川県で活動する団体の方たちの尽力のおかげでもあるでしょうし、それぞれの自治体の方たちの支援の行動のおかげでもあるでしょう。本当に素晴らしいことです。拍手!  

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 神奈川県などとは対照的に、まだ県内の市町村で一つも制度が導入されていないのが、宮城県と福島県です。福島県では富岡町と伊達市が制度導入を表明していますが、宮城ではそれもありません。仙台市は日本で最後の、制度が導入されておらず、検討も進んでいない政令指定都市となります。
 福島県の内堀雅雄知事は6月12日の会見で「制度については、住民に身近なサービスを提供する市町村などの意向を伺ってまいります」と述べるにとどめています。県男女共生課の担当者は「全国の情報は把握している」「県民の意向を聞きながら情報収集中」としています。
 福島市では、6月の定例議会で、市民団体から出されていた制度導入を求める陳情が採択されました。しかし、木幡浩市長は22日の記者会見で「対応を検討する」としながらも、「自治体側とすれば、おそらく市町村単位でやっても効果は薄いのではという見解が多いと思う」と述べ、導入するかどうか明言を避けました。
 宮城県では、1992年に東北初のゲイサークル「仙台ユニット E-betcha」が、1993年には市民団体「東北HIVコミュニケーションズ」が立ち上げられ、東北でも最も古くからLGBTQの団体が活動する地域となっています。現在は「にじいろCANVAS」などの団体が活動し、みやぎにじいろパレードも行なわれるようになりました。仙台市議会では6年前から制度導入に関する質問が度々出ていて、2021年には男女共同参画推進審議会が制度導入に向けての検討をするよう答申しています。仙台弁護士会は2021年、県と県内各市町村に対して同性パートナーシップ条例の制定を速やかに行なうことを求める決議を発表しています。しかし、仙台市の郡和子市長は6月20日の記者会見で「政令指令都市において本市がいちばん最後まで残されたところとなった」「どのような制度が望ましいのか、考えていくというところ。『こういう形でやりましょう』というところまで固まっていないので、今申しあげることができない」と述べました(6年前から市議会で質問しているのに、これから「考えていく」とは…)
 みやぎにじいろパレード2023共同代表の大森駿之介さんは、いわてレインボーマーチで「この先も宮城で生きている自分を想像したい。すべての人にとって生きやすい宮城を作るパレードにしたい」と語っていました。
 自身もゲイであり、LGBTQの居場所作りや啓発活動に取り組む福島大学の前川直哉准教授は、「パートナーシップ制度を作るというのは、『性的少数者のことを無視していません』『性的少数者も大切な県民、市民だ』というメッセージを出すこと。その意義をきちんと考えてほしい」「国は自治体任せにせず、同性婚を早く法制化すべきだ。しかし現行の結婚制度も夫婦同姓を強いられるなどの問題がある。家単位ではなく個人単位で権利が保障される社会になってほしい」と語っています。

 宮城県と福島県のプライドパレードは、今年はどちらも11月に開催されます。ふくしまレインボーマーチが11月4日(土)、みやぎにじいろパレードが19日(日)です。全国から多くの参加者が駆けつけ、県や市に制度導入を訴えたら、重い腰も上がるかもしれません(徳島では昨年、とくしまプライドパレードが初開催され、県としての制度導入を求める東ちづるさんの講演会なども行なわれました。結果、つい先日、県としての導入が決まりました。山口県も同様ですよね)
 
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参考記事:
佐伯市、来年度からパートナーシップ宣誓制度導入へ(大分合同新聞)
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2023/06/27/JDC2023062702246
パートナーシップ制度「県全体として考えていくべき」 別府市長、市独自の導入に慎重(大分合同新聞)
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2023/06/28/JDC2023062802342

LGBT理解増進法 県庁内にワーキンググループ設置し啓発へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20230626/4060017331.html
「LGBT理解増進法」成立・施行受け 山口県庁ワーキンググループ設置へ(テレビ山口)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tys/563579
パートナーシップ宣誓制度、山口県が可否を検討 知事が県議会で答弁(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR6V7S7QR6VTZNB007.html
LGBT理解増進法成立 県庁内にWG設置へ 知事意向(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230628/ddl/k35/010/223000c

性的少数者カップル認定、パートナーシップ宣誓制度 庄原市が導入検討(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/325912

パートナーシップ宣誓制度、淡路市が年度内導入へ 23日から意見公募(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/awaji/202306/0016504336.shtml

パートナーシップ制度 宣誓者家族も対象へ 10月1日施行 橋本(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230627/ddl/k30/040/231000c

県、パートナーシップ制度導入に向け意見公募 市町村や企業と調整図る(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/719624
岐阜県のパートナーシップ制度 市町村と連携して検討する方針(ぎふチャンDIGITAL)
https://www.zf-web.com/news/2023/06/29/201600.html

パートナーシップ制導入 長久手市、6月から(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/718088?rct=aichi

パートナーシップ宣誓制度を秋ごろ導入 県議会で知事が表明(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/715880

同性カップルの「パートナーシップ宣誓制度」 県が導入の考え 山梨(テレビ山梨)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/560062

馳石川県知事「条例案出すことありきでない」LGBT理解促進に向け“多様な議論”求める(MRO北陸放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/560282

新潟県「性の多様性」で意識調査(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72301430Y3A620C2L31000/
性の多様性意識は 県が調査、パートナーシップ制度など施策に反映へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR6V77HSR6RUOHB00G.html

パートナーシップ制度、神奈川県内の全市町村に整備(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1001357.html

パートナーシップ制度「空白県」の今 福島と宮城、慎重な姿勢崩さず(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR6Q7J2ZR6BULUC016.html

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