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自らドラァグしてアンチの攻撃に対抗したストックホルム副市長に拍手!

2023年07月03日

 オンラインマガジン「IDEAS FOR GOOD」で、世界的に広がっているドラァグクイーンの絵本読み聞かせのことが紹介されていました。
 2015年にサンフランシスコで始まった「Drag Story Hour」は、ドラァグクイーンたちが図書館、学校、本屋などで子どもに絵本の読み聞かせを行なうプログラムで、子どもたちにジェンダーが固定的なものではないと気づいてもらったり、クィアのロールモデルを示すことを目的とし、たとえ自身が性的マイノリティではないとしても性の多様性を尊重できる人に育ってほしいという願いも込められています。(かつてはアンダーグラウンドな存在と見なされていたドラァグクイーンですが、『ル・ポールのドラァグ・レース』のおかげで素晴らしいパフォーマーとして広く認知され、様々な場所で活躍するようになったということが、この子ども向けの読み聞かせを可能にしたと言えるでしょう)
 読み聞かせを行なっているドラァグクイーンのチョルーラ・レモンは、自身の内にある女性らしさを受け入れるのに長い時間がかかったと語っています。「自分が子どもの頃にクィアのロールモデルに出会えていたら、もっと早く自分を受け入れられたかもしれない」という想いが読み聞かせを行なうモチベーションになっているそうです。「子どもたちが比較的早い段階で、なじみのない人と接する機会があったほうが、寛容な心が育ちやすいのではないでしょうか」 
 保守的な南部のケンタッキー州で生まれ育ったダイアナ・レイ・エリスは、幼い頃に観たドラァグクイーンが主人公の映画がきっかけでドラァグクイーンになり、子どもたちに「ありのままのあなたで大丈夫だよ」と伝えたいとの思いから、読み聞かせに参加するようになったそうです。
 この「Drag Story Hour」はニューヨークなど米国の他の都市でも行なわれるようになり、やがてカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、ドイツなどにも広まっていきました。日本でも、「Drag Story Hour」に公認された団体「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー 東京 読み聞かせの会」が、2019年から各地で読み聞かせのイベントを開催しています。昨年夏には京都の由緒ある劇場でドラァグクイーンが「歌とダンスと絵本の読み聞かせによるスーパーバラエティーパフォーマンス」を繰り広げました(詳細はこちら
 
 しかし、「Drag Story Hour」発祥の地である米国では、近年のトランスジェンダー・バッシングから飛び火して、ドラァグ・ショーも“子どもに悪影響”だなどとして規制しようとする動きが強まっています。今年3月にはテネシー州で初めて、公共の場所でのドラァグ・ショーを制限する州法が成立してしまいました。
 特に保守的な州で、ドラァグクイーン・イベントに対する抗議が行なわれたり、会場の爆破予告などの脅迫に遭う事例も増えています。今年3月に行なわれた(上記のダイアナ・レイ・エリスが参加した)読み聞かせイベントには、「ドラァグクイーンの読書会は児童虐待」「あらゆる形態の同性愛や男性が女装をするようなことは神の掟に反する」などと書かれたプラカードを掲げて抗議する人たちが押しかけました。抗議するキリスト教保守派の団体は、「ドラァグクイーンは性的な関心に訴える成人向けのパフォーマンスを行なっている」「幼い子どもに性自認に関する話題を教えるべきではない」などと述べているそうです。
 こちらの記事でもお伝えしましたが、ウェストバージニア州ではこうしたドラァグクイーンイベントへの脅迫に対し、ストレートの格闘家の男たちがイベントでの警備を申し出るという、胸が熱くなるようなお話もありました。
 
 米国におけるこうしたバックラッシュもまた、海外に波及しています。
 日本でも7月23日(日)に東京都現代美術館で行なわれる「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」の告知のTwitter投稿に対してひどいコメントがついていて、本当にいたたまれない…暗澹たる気持ちにさせられます。
 スウェーデンでは、極右政党の党首がテレビ討論会で、ドラァグクイーンの読み聞かせの会に税金が使われるのは「非常識だ」と批判しました。これに対し、ストックホルムのヤン・ヨンソン副市長が自らドラァグクイーンに扮し、椅子に座り、床に座った子どもたちに囲まれながら、危険を冒しててでも信念のために立ち上がることの重要性について語るリンドグレーンの『はるかな国の兄弟』の一節を朗読する動画をTwitterに投稿し、ニュースになりました。ヨンソン氏は広告で、「物語は子どもに害はない。ドラァグクイーンも同じだ。だが、ポピュリズムと不寛容は子どもにとっても、大人にとっても危険だ」と述べました。ヨンソン氏はAFPに対し、「私自身がドラァグアーティストのためのキャンバスのようなものになることで、誰もが自由に自分を表現すべきだという主張を伝えられると思った」「『スウェーデンは自由な国であるべきだ』と言える人が増えることを願っている」とコメントしました(本当に素晴らしい。スタンディングオベーションを送りたい気持ちです)
 日本でも今後、さらにドラァグクイーンへの攻撃が強まっていくことも懸念されますが、ヤン・ヨンソン氏のように(ドラァグしろとは言いませんが)ドラァグクイーンの歴史や文化に敬意を払い、アンチの攻撃に毅然と立ち向かい、擁護してくれる方が増えてほしいですし、私たちももっと結束力を強め、素晴らしい歴史や文化を誇る(つい最近、英国のゲイメディアでも日本のドラァグクイーンカルチャーの歴史や豊かさが紹介されています)日本のドラァグクイーンを守っていきましょう。
 
 
 

参考記事:
ドラァグクイーンが絵本を読み聞かせ。子どもがジェンダーの流動性を知る場に(IDEAS FOR GOOD)
https://ideasforgood.jp/2023/07/03/drag-story-hour/

読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/06/27/32576.html

ストックホルム副市長、ドラァグクイーン姿で極右の「不寛容」に対抗(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3468544

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