g-lad xx

NEWS

茨城県知事が県庁内のトイレ環境の整備を表明、経産省トランス女性職員訴訟最高裁判決を受けて

2023年07月20日

  茨城県の大井川知事は20日の定例会見で、経産省トランス女性職員が起こした訴訟の最高裁判決を受けて、県庁内でも性的マイノリティの人たちがトイレを利用しやすい環境を整備していく考えを示しました。
 会見で最高裁判決についての所感を、と求められた知事は、「今回の最高裁の判決は、その経済産業省の特定の職員のケースに対するその個別の判断だというふうな理解ではおりますものの、性的マイノリティの方も含めて、様々な方が働きやすい職場環境の整備を義務づける妥当な判決じゃないかなというふうに感じております。こういう判決も踏まえて、県庁内でも、しっかりとそういう方々が利用しやすいような環境というのを整備していこうというふうに考えております」と述べ、具体的には、県庁舎の中の12ヵ所の障害者用のトイレにオールジェンダーのような表記を追加することで、当事者が利用しやすい環境を整備したいということで、検討を進めているそうです(発言の要旨はこちらに記載されています)
 知事自らがこのように発信することで、県庁内の当事者の方だけでなく、県内で日々、不安を感じているトランスジェンダーの方も、県知事もこのようにおっしゃっているということで、守られているという自信を持ち、少しでも安心して暮らせるようになるのではないでしょうか。大井川知事は全国で初めて県として同性パートナーシップ証明制度の導入を実現した方ですが、今回も迅速にトランスジェンダーのための施策を進めてくださいました。アライの鑑のような方ですね。
 
 
 新潟県長岡市では17日、ひとりぼっちプライドパレードが緊急開催されましたが、19日には那覇市役所前でトランスジェンダー差別に反対の意思を示すスタンディングが行なわれ、10人以上の方たちが「トランスヘイトをなくそう」と書いたプラカードを掲げ、道行く人に差別反対を訴えました。
 市民グループ「沖縄カウンターズ」の女性の方が「トランスヘイトがひどくなるなか、沖縄では抗議の動きがあまり目に見えない。声を上げないと、受け入れたことにされてしまう」と考え、スタンディングを呼びかけたそうです。SNSを見て駆け付けた30代の女性は「ヘイトスピーチで精神的にダメージを受け、実生活に影響を受ける当事者がいる。トランスジェンダーは犯罪者ではない。問題は差別する側だ」と語りました。 
 

 SNSを中心に広がっているトランスヘイト(女子トイレや女湯に侵入する犯罪者であるかのようなデマや中傷)について、各地の当事者の方が声を上げています。
 兵庫県尼崎市のNPO法人ミックスレインボーのいよたみのりさんは、神戸新聞の取材に対し、自身のことを語りながら「犯罪者と混同せず、どうか生身の当事者と対話してほしい」と訴えました。
 石川県在住のまみさんは、万が一トラブルになった時のために、性同一性障害の診断書を持ち歩いていると明かしました。「男らしくとか女らしくじゃなくて、自分らしく、ありのままの姿でいたい。自分らしく生きるっていうところに自分の誇りも希望もあるだろうし。そうやって生きていけたら幸せだなと思います」
 沖縄の団体「てぃーだあみ」の共同代表・竹葉梓さんは、「ryuchellさんがなぜ生きられなかったか、それぞれが自身と沖縄社会に照らして考えていく必要がある」と語りました。


 アライの方たちも発言しています。
 プライドイベントなどにも度々参加してくださっている小島慶子さんは、「言うまでもなく、トイレでの犯罪行為は、公共のトイレを使用する全ての人の安全を脅かします。その「全ての人」には、現在、男女別トイレを使用しているトランスジェンダーの人たちも含まれます。安全なトイレは、トイレをトランスジェンダーではない人だけの場所にしても実現しません。プライバシーを確保し死角を作らない設計、逃げ道や通報手段の確保など、取り組むべき多くの課題があります。そして偏見や無知が、トランスジェンダーの人たちにとって深刻な脅威になっています。今回の判決は重要な一歩と言えるでしょう」と述べました。
 HIV陽性者のための調査研究に参加したこともある健康社会学者の河合薫さんは、「トランスジェンダー職員のトイレ問題とryuchellさんの訃報は全く別の問題ではありますが、私には「根っこは同じ」ように思えます。2人ともこれまで「そこにあるのにない」ように扱われた問題に声を上げ、「これまでの当たり前が当たり前じゃない」と一歩踏み出した人。どちらも「私」たちの社会の問題でもあるのに、「自分が見ている世界」が全てとばかりに、憶測に基づく罵詈雑言が綴られていて呆れました」と述べています。「言いたくても言えない、知られたくない、でも、自分らしく生きたい…。そんな生きづらさを抱えて生きている人がいる。生きる力がいつ萎えるかもわからない、ギリギリの状態にある。なのに「場外から石を投げる人」があとを断ちません」
 
 朝日新聞は19日、「(いちからわかる!)トランスジェンダーとは」「(時時刻刻)トイレと性別、論争と現実 最高裁、使用制限「違法」」「差別意図しない「不安」にどう応える トランスジェンダーの日常とは」という記事を一挙に掲載し、「女性スペースでのトラブル」に関する不安がどのように政治的に利用されてきたかを検証しながら、「いまこそ多数派の側に、正しい情報を得る努力が求められている」と訴えました。
 
【追記】20233.7.21
 『GQ』に佐藤かよさんのインタビューが掲載されました。
「最近は性的マイノリティのために行われること(法整備やジェンダーレストイレの設置、同性婚の法制化など)に反発する人々がいます。一部の犯罪をする人や、性的マイノリティのふりをして犯罪を犯すLGBTQ+でもなんでもない人を例に挙げて、「トランスジェンダーやゲイはこういうことをする!」といった解釈をするんです。それが理解できません」
「性的マイノリティの人のあいだでも、東京レインボープライドやパレードに否定的な人や「LGBTQというカテゴリーが自体がいらない」と言う人もいます。けれど、そういうプライドの活動をしている人たちは自分たちが楽しむためだけにやっているのではなく、自分たちの後の世代や子どもたちが安心して暮らせる社会を作るために「LGBTQ+」という看板を背負っているのだと思うんです。私も「LGBTQ+」という言葉ができて、すごく説明がしやすくなったし、周囲に理解されやすくなったと思っています」
「「LGBT理解増進法」をめぐって、女湯に女装した男が入ってくると主張する人がいます。ですが、本当のトランスジェンダー女性で体が男性のまま女湯に入りたいと思う人は、私はほぼいないと思います。私が女性ホルモンを打ち始めた頃、女子の同級生たちに「佐藤は女の子だから女子トイレに入りなよ」と言われていたのですが、当時はすごく抵抗がありました。だって、女子トイレを使う人は、私や私を理解している友達だけじゃなくて、他の人もいますからね。温泉にみんなで行こうと誘われたときも、自分が男の子の体の状態で入るのがすごく嫌でしたし、ましてや女湯に入りたいなんて思いもしません。本当のトランスジェンダーとして生きている私は、少なからずそう思いました」
「私自身、昔はトランスジェンダーである自分に自信がもてませんでした。自分はどこか足りていない不完全な状態で、なりたい理想の自分をイメージしながら、自分ではない別のなにかになろうとしていたから、自信がなかったんです」
「年齢を重ねて、経験を積んで、トランスジェンダーである自分に自信をもてるようになりました。トランスジェンダーとして生きて、いろいろな経験をしてきたからこそ、そう思えるんです」
 トランス女性としての佐藤かよさんの語りはとてもリアルで、重みがありました。とてもいいお話でした。

【追記】
 Transgender Japanが7月25日(火)19:00〜新宿アルタ前広場で「TransgenderLive Vol.3〜ホラ、やっぱり差別禁止が必要じゃんヽ(`Д´#)ノ〜」を開催、“LGBT理解増進法”成立後のヘイトクライムだらけの状況に抗議の声を上げます。


参考記事:
県庁舎 性的マイノリティーの人たちも利用できるトイレ整備へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20230720/1070021587.html

「トランスジェンダーは犯罪者ではない。問題は差別する側」 那覇市役所前 差別反対のスタンディング(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1189806
性的少数者への差別やめて 那覇市役所前でスタンディング抗議行動「すべての人が安心して過ごせる社会に」(琉球新報)
https://nordot.app/1054575913824616931?c=768367547562557440

トイレ利用に苦心…トランスジェンダー LGBT理解増進法巡り中傷やSNSデマ「『心は女性』主張の男性が…」(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202307/0016565391.shtml

LGBTQ+は「不安にさせる人たち」なのか 帰宅までトイレも我慢…トランスジェンダー女性が語る(石川テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/545837

性自認と性的指向に悩む人に広がる動揺 性的少数者の支援者「性は多様 苦しい時は話を」(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1187708

小島慶子「偏見や無知は深刻な脅威になる トイレの使用について最高裁判決は重要な一歩」(AERA)
https://dot.asahi.com/aera/2023071900016.html

ryuchellさんが浴びせられた「罵詈雑言」の卑劣。“自分らしく”も許されないのか?(mag2)
https://www.mag2.com/p/news/580635

(いちからわかる!)トランスジェンダーとは(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15692751.html
(時時刻刻)トイレと性別、論争と現実 最高裁、使用制限「違法」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15692749.html
差別意図しない「不安」にどう応える トランスジェンダーの日常とは(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR7L5JJXR6HOXIE025.html

「トランスジェンダーとして生きる経験を話したい」──佐藤かよが語る、ゲーム、アイデンティティ、プライドのこと(GQ)
https://www.gqjapan.jp/article/20230721-kayo-sato-gq-voice

INDEX

SCHEDULE

    記事はありません。