g-lad xx

NEWS

【追悼】ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』の原作者でもある作家の浅原ナオトさん

2023年07月19日

 ドラマ化・映画化された『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』など、ゲイを主人公にした小説を書いてきた作家の浅原ナオトさんが16日、悪性リンパ腫のため東京都墨田区の病院で亡くなったことがわかりました。7月1日に自身のblogで入院を報告し、それが最後の投稿となりました。38歳でした。葬儀・告別式は近親者で行なうそうです。謹んでご冥福をお祈りします。
 
 
 2019年にNHKで放映されたドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』をご覧になった方も多いと思います。前年に『女子的生活』『弟の夫』『半分、青い』といったドラマでLGBTQをフィーチャーした流れで、NHKが浅原ナオトさんの『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を原作としてドラマを制作したのでした。
 妻子持ちのおじさんとつきあっていながらゲイであることを周囲には伏せている男子高校生の純が、「普通の幸せを手に入れられるかもしれない」と思い、腐女子の同級生・三浦さんの告白を受け入れ…というストーリーの青春群像劇でした。クイーンが好きな純のチャット友達、Mr.ファーレンハイト(彼氏からHIVをうつされたという20歳のゲイ)にまつわるショッキングな出来事、そして純自身の絶望が描かれた作品でした。Mr.ファーレンハイトの彼氏がエイズを発症して亡くなってしまった(手遅れだった)という設定があまりにも時代遅れだと問題視されたり、ゲイは“普通”じゃないという前提の物語になっているあたりも批判を受けたりしました。しかし、年齢やお住まいの地域、置かれた環境によっては、その「痛み」がとてもリアルに、自分事として感じられた方もいらしたと思います。ドラマは大きな反響を呼んだようで、その後『彼女が好きなものは』とのタイトルで映画化もされました。
 
 『#塚森裕太がログアウトしたら』では、冒頭、自分はゲイだと自覚はしていたものの「認める」ことはなかなかできず、学校では仮面をかぶっていたという少年の語りが展開され、周りにもカミングアウトできないし、自分自身にもカミングアウトできないという、非常に多くの方が経験してきたであろうリアリティが切実に描かれていました(その仮面のたとえがナウシカがつけてる防護マスクで、よかったです)
 
 新作『100日後に別れる僕と彼』は、パートナーシップ宣誓をして有名になったゲイカップルにドキュメンタリー撮影の依頼があったものの、実は二人はすでに別れていて、それでも、世の中への影響を考えて「つきあっているてい」で撮影に応じるが、次第にほころびが…というお話でした。
 この新作についてのインタビューで浅原さんは「こぼれ落ちているものを拾いたい」と語っていました。
 
 
 ryuchellさんとは全くタイプやジャンルが違う方ですが、それでも同じ時代に生きたゲイの作家の方が30代という若さで亡くなったのですから、胸の痛みを覚えずにはいられません。
 
 キラリと光る感性を持っていた作家さんでした。ドラマにも出てきた「摩擦係数をゼロとする」のたとえは、うならせるものがありました。
 
 直接は存じ上げませんので、想像でしかないのですが、作品を見る限り、ゲイであることへの屈託というか、屈折というか、ゲイであることを受け容れきれず、世間のホモフォビアの呪縛から解放されずに苦しんでいたのではないでしょうか(多くの方がそういう時期を経験してきたように)。その作品には、浅原さん自身が抱える痛みや、心の叫びのようなものが表れていたように感じます。
 願わくば、同じゲイとして、浅原さんがもっともっと長生きして、時代や社会が変わるにつれて、その心境や作品づくりがどういうふうに変わって行くかを見てみたかったです。そして、一度お会いしてお話してみたかったです。もうそれが叶わなくなってしまったなんて…本当に悲しく、残念に感じます。
 あらためて、ご冥福をお祈りします。
 

参考記事:
作家の浅原ナオト氏が死去 38歳、代表作「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(サンスポ)
https://www.sanspo.com/article/20230719-3IME6HR6NVKVHISBBLFNCDRKNY/
浅原ナオトさん 38歳=作家(共同通信)
https://mainichi.jp/articles/20230720/ddm/041/060/115000c

INDEX

SCHEDULE

    記事はありません。