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【同性パートナーシップ証明制度】福井県と福井市が秋頃導入へ、その他愛知県や兵庫県などの動きをお伝えします

2023年07月23日

 北海道釧路市では昨年9月、同性パートナーシップ証明制度の導入の検討に入り、市民への意識調査にそのことを盛り込んだり、その結果を踏まえ、市の男女平等参画審議会で議論すると報じられていましたが、7月10日に行なわれた男女平等参画審議会の場で、市が「パートナーシップ宣誓制度(仮称)」を来年4月にも導入する方針を示しました。受けられる行政サービスの内容について、市は道内の他市の事例などを参考にしながら、庁内で検討しています。8月下旬以降の審議会で案を示し、議論する予定で、その後、パブリックコメントなどを経て、市の要綱として定める方針です。
 北海道ではこれで、人口10万人以上の市のすべてで「パートナーシップ宣誓制度」が導入されることになります。

 先月、北海道旭川市周辺の8つの町、東神楽町、美瑛町、東川町、鷹栖町、当麻町、比布町、上川町、愛別町が一斉に「パートナーシップ宣誓制度」を導入するとお伝えしましたが、このうち上川町は導入時期を調整しており、他の1市7町は来年1月の同時スタートを目指すそうです。この上川管内の1市7町の住民はいずれの自治体でも手続きができるようにするほか、同様の制度がある道内の自治体と連携協定を結び、転出時に転出先の制度を使えるようにする予定で、18日から制度案を公表し、意見公募(パブリックコメント)を行なうそうです。また、7月30日12時半から旭川市市民活動交流センターCoCoDeで制度の説明会を開くそうです。終了後には、NPO法人代表で、制度を利用する予定の中谷衣里さんらを招いたセミナーも開催予定です。
 旭川市女性活躍推進課の松山由夏課長は、「運用開始後も当事者や市民らの声を聞き、要件やサービス拡大など制度の改善を続けたい」と話しています。
 
 函館市議会では、昨年4月に導入した「パートナーシップ宣誓制度」について質問があり、今年6月末現在で計12組が認定されたと発表されました。

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 7月1日から神奈川県秦野市と伊勢原市、真鶴町で「パートナーシップ宣誓制度」がスタートし、県内全市町村での導入がコンプリートしました。秦野市は厚木市・海老名市・伊勢原市・愛川町・清川村と「パートナーシップ宣誓制度に係る自治体間連携に関する協定」を締結し、これにより、宣誓した方が6自治体間で転居する際の手続きが簡素化され、転入前自治体の宣誓日が引き継がれることになりました。
 神奈川県ではほかにも、藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町の湘南2市1町、横須賀市・鎌倉市・逗子市・葉山町・三浦市の三浦半島4市1町、南足柄市・中井町・大井町・松田町・山北町・開成町の足柄上地区1市5町の自治体間連携があるほか、横浜市が千葉市・横須賀市・相模原市と、川崎市が相模原市とそれぞれ連携協定を結んでいる(なぜか横浜市と川崎市は結んでいない)という状況となっています。本当は県内の全市町村で連携できたらよいのしょうが、そもそも個々の自治体が独自に設けている制度であり、制度が共通化されていないと連携も難しいわけで(ですから、広域での連携が実現しているのはスゴいことです)、かといって自治体の独自性をないがしろにしてすべて「パートナーシップ宣誓制度」で統一すべきだなどとは言えないため、なかなかに難しい問題です。県で制度を実現すれば自動的に解決、ということにもなりません(県内の市区町村と県が個別に連携協定を結んでいく努力が必要です。もし渋谷区型の制度であれば、「パートナーシップ宣誓制度」とは要件が異なるため、転居時の手続きの簡素化はできません)。根本的に解決するためには、やはり国に早く同性婚を法制化していただくしかないですね…。
 
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 新潟県上越市では先月、中川市長が年度内の制度導入を表明しましたが、7月7日、市民団体が中川幹太市長と面会し、意見交換を行ないました。「上越市にパートナーシップ制度を求める会」(阿部和子代表)は、男女共同参画などに取り組む市内の5団体と個人で3月に設立され、4月から署名活動を展開。これまでに約2600人の署名を集め、8月に市に提出する予定です。同会は市長に対し、制度の導入にあたっては、パートナー関係にある人の親族も家族として認める「ファミリーシップ制度」とすることや、当事者をはじめ市民団体や専門家などの意見を反映させること、制度について市民に積極的な広報を行なうことなどを要望し、市内在住の当事者からの手紙も渡しました。中川市長は「他市の事例も参考にしながら、前向きに進めていきたい。制度を作って広報し、皆さんに理解していただくことが壁を取り払うことになる」と述べました。阿部代表は「市民の声を反映し、市民が利用できるような制度にしてほしい。お互いを認めて、対等に自分らしく生きられる社会にしたいと思うので、(市民には)ぜひご理解いただきたい」と話しました。

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 福井県の杉本知事が6月下旬に県議会で「パートナーシップ宣誓制度」を秋頃に導入する方針を表明しました。昨年6月から検討を始めていましたが、制度導入の時期が示されました。具体的な内容については今後検討するとしていますが、宣誓したカップルが県営住宅に入居できるようにするほか、県立病院で家族と同じ扱いとして面会をしやすくするといったことが挙がっています。
 福井市も7月4日、「パートナーシップ宣誓制度」を秋頃に導入する方針を示しました。総合政策課の斉藤正直総務部長は、県が秋頃をめどに制度を導入すると表明したことを踏まえ、「県と歩調を合わせ、同時期に制度を導入する方向で手続きを進めたい」と述べました。
 福井県では越前市、勝山市、鯖江市、あわら市などで先行して制度が導入されました。永平寺町も導入に向けた検討を進めているそうです。

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 長野県では10日、「県パートナーシップ届出制度」の受付が始まりました。電話か県ホームページで申請でき、申請後、必要書類を提出し、オンラインか対面で本人確認ができると、8月1日以降に届出受領証(証明カード)が交付されます。この日は申請がなかったものの、申請方法の問合わせなどが数件寄せられているそうです。
 証明カードがあれば、県営住宅への入居の申込みや県税に関わる納税証明書の代理申請、県立医療機関での緊急治療への同意、犯罪被害者の遺族見舞金の給付申請もできるようになります。県内の市町村でも、全7項目の行政サービスを受けられ、市町村が制度を導入していなくても、公立病院での緊急治療の同意や保育施設への入所申込み、罹災証明の代理申請などができるようになります。

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 静岡県では、県全域で「パートナーシップ宣誓制度」が導入されましたが、浜松市が6月、住民票の続柄を「同居人」ではなく「縁故者」とすることを認める対応を行ないました。「縁故者」の続柄は、海外で同性結婚した外国人カップルなど親族に相当するとみられる関係性に使われるものです。相続など法的な効力は発生しないものの、市として二人の関係性をただの「同居人」ではなく親族に相当すると認めるかたちになります。
 2020年に浜松市でパートナーシップ宣誓し、市内で暮らすトランス男性は、パートナーの女性とは一見して男女の夫婦に見えるものの、戸籍上は同性であるため、住民票の続柄が「同居人」であることに戸惑った職員が関係性について説明を求めてきて困ったことがあるそうです。住民票の続柄の選択肢が広がったことに男性は「二人の関係性がより近くに感じられるようになった」と歓迎しました。
 県内ではすでに、湖西市、磐田市、掛川市、菊川市、焼津市、森町でも「縁故者」を選ぶことができ、浜松市と合わせて7市町になります。
 4月には県が、県職員互助会員の結婚祝い金を支給できる制度を整えるなど、自治体の裁量内ですが、行政サービス面で法律婚に徐々に近づいているそうです。
 LGBTQの権利擁護に詳しい中京大の風間孝教授(社会学)は、「サービス拡充の動きは、当事者に勇気を与える。自治体は当事者の声を聞き、婚姻しているカップルに提供している行政サービスを調べて、導入できそうなものを検討したりしてみてはいかがか」とコメントしています。

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 愛知県内で同性パートナーシップ証明制度を導入する自治体が、今年度中に県内の市町村の半数を超える見通しであることが、読売新聞の調査でわかりました。全54市町村のうち24市町がすでに導入済みで、8月には瀬戸市が予定するほか、尾張旭、江南、知多の3市が今年度中の開始を目指しているそうです。豊橋市・豊川市・蒲郡市・新城市・田原市の東三河5市は連携協定を結び、引っ越した際の手続きの簡素化を実現しました。春日井市では、パートナーを住宅ローンの連帯債務者や死亡保険金の受取人に指定することを認めるなどの取組みをしている企業をホームページ等で紹介するなどしています。一方、「住民からの要望がない」などの理由で導入していない自治体が複数あったほか、津島市は「制度の内容が各自治体で異なっており、広域的かつ統一的な仕組み作りが望ましい」と導入していない理由を説明しました。
 名古屋市では昨年12月の制度開始以降、6月末までに事実婚を含め約80組のカップルが制度を利用したそうです。今年2月に宣誓した40歳代の男性カップルは、「各種の手続きで長い説明が不要になり、便利になった。周りが関係を認めてくれてうれしかったし、安心感につながった」と語っています。
 同制度に詳しい早稲田大の棚村政行教授(家族法)は、「同性婚裁判や民間企業の取組みなどで性的少数者への理解が深まり、急速に制度が広がる後押しになっている」と分析しています。

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 滋賀県近江八幡市は1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。滋賀県内では彦根市、米原市に次いで3例目です。
 宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)を交付されたカップルは、市営住宅への入居、罹災証明書や救急搬送証明書の代理交付申請、犯罪被害者遺族見舞金の申請、市立総合医療センターの入院時の各種届出書類の代理申請が可能になります。市は利用できる行政サービスを順次拡充していく方針です。
 受領証は、レインボーカラーの縁取りがあるものと、市のキャラクター「赤コン君」が描かれたものの2種類が用意されています。
 市は「性的少数者の生きづらさを軽減し、自分らしく安心して暮らせるようにすることで、差別や偏見の解消を図り、社会的な理解を促進していく」としています。

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 兵庫県三田市は7月から、「パートナーシップ宣誓制度」を拡充し、カップルの子や親との関係も親子関係と認める「ファミリーシップ宣誓制度」を導入しました。「ファミリーシップ制度」は兵庫県の明石市が初めて創設した制度で、県内では明石市だけでなく、芦屋市、高砂市、加古川市でも導入されています。

 なお、兵庫県では、今年5月、レインボーひょうごが県に「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の導入を求める署名を立ち上げています。兵庫県では神戸市をはじめ3分の2近くの市町村で制度が導入されておらず、住む自治体によって権利に差があり、いま制度を利用できていても神戸市など未導入自治体に引っ越すと権利がなくなってしまうという問題もあるため、県としてぜひ実現を、との趣旨です。兵庫県知事は先月、早ければ来年度にも「パートナーシップ宣誓制度」の導入を目指す考えを示しましたが、レインボーひょうごは「パートナーシップ宣誓制度」だけでなく「ファミリーシップ制度」の実現も求めます。25日に県庁幹部に署名を提出する予定です。ぜひそれまでにご協力ください。




参考記事:
パートナーシップ制度、釧路市が4月にも導入(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/875612
パートナーシップ制度導入へ プラン中間見直し協議 釧路市男女平等審議会(釧路新聞)
https://kushironews.jp/2023/07/11/439587/
パートナーシップ制度案を公表 上川管内中部の1市7町 8月21日まで意見公募(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/879564/
パートナーシップ 函館市12組を認定 市議会で答弁(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/880087/

6自治体間で連携 パートナーシップ宣誓制度(タウンニュース)
https://www.townnews.co.jp/0610/2023/07/21/688678.html

上越市長にパートナーシップ制度の早期導入求める(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20230707/1030025636.html
「パートナーシップ制度」年度内に導入方針の上越市 市民団体と中川市長が面談(上越タウンジャーナル)
https://www.joetsutj.com/2023/07/09/171503

県が秋ごろめどに「パートナーシップ宣誓制度」導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/20230705/3050015085.html
福井市、秋ごろ導入の方針 パートナーシップ宣誓制度(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/722884

パートナーシップ届出制度 県が受け付けを開始(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/726547
性的少数者カップルを公的に証明―長野県の「パートナーシップ届出制度」受け付け始まる(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023071100127

パートナー制度 静岡県内行政サービス拡充 続柄「縁故者」選択可(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1279802.html

パートナー制度急拡大 導入自治体年度内に過半数(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20230712-OYTNT50183/

市、パートナーシップ制度開始 県内3例目 「偏見 解消図る」 近江八幡(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230704/ddl/k25/010/255000c
 
性的少数者、親子関係認定 市営住宅入居など可に 三田市(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230711/ddl/k28/010/220000c

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