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映画『CLOSE クロース』レビュー

13歳の多感な時期の男の子二人が、クラスメイトにその仲の良さをからかわれたことで、本当はお互いのことが大好きなのに距離をとってしまい、それが思わぬ悲劇を引き起こす…という物語。『怪物』の続編かと思うような出だしが印象的でした。

映画『CLOSE クロース』レビュー

 15歳のトランス女子がバレリーナを目指す姿を描いた『Girl ガール』でカンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン監督が、13歳の2人の少年に起こる関係の変化を描いた長編第2作です。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、グランプリ(準優勝)を受賞。第80回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞、第95回アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされました。カンヌでは「観客が最も泣いた映画」と言われたそうです。

<あらすじ>
13歳のレオとレミは、学校でも放課後でも一緒に時間を過ごす大親友だった。しかし、ある時、二人の親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に戸惑い、そっけない態度をとってしまう。そのせいで気まずい雰囲気になるなか、二人は些細なことで大ゲンカをしてしまい…。





 冒頭のシーンが『怪物』のラストの続きかと思うような、キラキラした、疾走感あふれる感じで、素敵でした。(ちなみにルーカス・ドン監督は、こちらのインタビューで是枝監督の作品にも惹かれると語っています。偶然にしては、できすぎかも)
 『怪物』は小学5年生の男の子たちでしたが、『CLOSE クロース』は、小学校を卒業して夏休みを一緒に楽しんでいる仲良しの男の子たちを描いていました。親御さんたちも含めて、みんなが、二人の仲の良さを微笑ましく感じ、温かく見守っています。なのですが、中学に上がると、環境がガラリと変わり、性的な意識もめばえ、男の子だけ、女の子だけでつるむことが多くなる人間関係のなかで、二人の親密さ(くだらないことを言って笑ったりバンバン叩きあったりするようなガサツな感じじゃなく、いつも一緒にいて、時に肩に頭を乗せたりするような雰囲気)はクラスメートたちにとって、“ふつう”じゃない関係と見られてしまうのでした。男の子のなかにもからかう人はいて、それはありがちだなと思うわけですが、先に冷やかしてきたのが女子たちだったというところが意外で、実はリアルかもしれないとも感じました(女子たちは「もし二人がつきあってるんだとしても、別にいいよ」的な感じで二人に「つきあってるの?」とか聞いてくるのですが、BLのような、同性愛関係をネタとして消費したい欲望が垣間見えるような聞き方で、それはそれでレオとレミにとってはイヤだろうなと思いました)
 そういうクラスメートの反応を受けて、レオは戸惑い、あまりベタベタしないでおこうと思い、アイスホッケーを始め、体育会系な男の子のグループに入っていく、一方、レミのほうは、今まで通りレオと仲良くしたいと思いながら、レオが距離を取るので、悲しみに暮れるのです。『怪物』で言うと、みなとがレオで、よりくんがレミみたいな組み合わせです。(ただ、『CLOSE クロース』では、二人のセクシュアリティは明確に描かれていません。レミはゲイなんじゃないかな…と思いますが、はっきりしていません)
 
 多くの場合、映画の結末として描かれるような事件が、映画の中盤に起こり、後半は、レオの気持ちや行動にフォーカスした、つまり、そこにこそ作品のテーマがあるということがわかりました。これは意外なことで、逆に、この後どうなるんだろう?最後はどうなるんだろう?という緊張感を感じさせました。
 あまり詳しくは書かないほうがいいと思うのですが、それこそ、これは「誰にでも起こりうること」だし、ストレート男性の観客もみんな、レオに感情移入したんじゃないかと思います。レオの日々の生活や、行動や、ふとしたときに表れ出る言葉や、表情や視線に、レオが今どう感じているのか、どのように心境が変化していってるのかということが実に繊細に、鮮やかに描かれていて、多くの観客の共感を呼び、カンヌのグランプリにつながったんだと思います。
 
 そういう意味で、この映画は、優れた作品ではあるかもしれないが、クィア映画とは言えないかもしれない、と思いました。
 ただ、明確にセクシュアリティを描いていないにしても、レミが(もしかしたらレオも)ゲイだったかもしれない、二人の関係は純粋に親友の関係だったとしても、レミはレオのことを恋愛的な気持ちで好きだったのかもしれないという可能性は否めませんし、そういうふうに受け取れる余地があることは確かで、とても微妙だし、カテゴライズが難しいと思いました。しかし、実は、現実社会に生きる人たちや人間関係だって、明確にゲイとかストレートというふうに分けられない場合が多々あるわけで(ジェンダーやセクシュアリティの世界には、人知を超えた無限の広がりや多様性があると思います)、それを無理に線引きしたりカテゴライズすることのほうが野暮なのかもしれないということに思い当たりました。
 実に奥が深い作品なのかもしれません。
  
 ゲイであるルーカス・ドン監督が、世間のホモフォビアゆえにいじめられたり、好きな男の子に気持ちを伝えられなかったり、無理してノンケぶったりというゲイの苦労を描くのではなく(ベルギーは世界で2番目に同性婚を実現し、世界初のゲイの首相も誕生したような国ですので、もうそういう地点からはるか先に進んでるんだと思います)、このような、男の子どうしが人前で親密さを表現することが(女の子たちが手をつないだりベタベタするのは許されているのに)ある年代からジワジワと周囲の圧力によってできなくなってしまうような社会=人間関係の問題を描き、間接的にホモソーシャルの問題を示唆するような作品を作ったというところがとても興味深かったです。
 
 優れた作品であることは認めますし、世のストレートの観客にはウケがいいでしょうけど、個人的な好みとしては、クィアみが足りず、寂しく感じました。自分はレインボー・リールの映画祭で上映されるような作品や、ゲイゲイしい作品のほうが好きだなと思いました。

(文:後藤純一)
 

CLOSE クロース 
原題:Close
2022年/ベルギー・フランス・オランダ合作/104分/G/監督:ルーカス・ドン/出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ、レア・ドリュッケールほか

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