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【同性パートナーシップ証明制度】長野県、愛知県瀬戸市で制度スタート、その他岩手県宮古市、石川県、山口市、大分市などの動きをお伝えします

2023年08月01日

 岩手県宮古市では、5月末に山本市長が早ければ今年9月に同性パートナーシップ証明制度を導入する方針を示していました。その続報が届き、同性のカップルだけでなく異性の事実婚やカップルの近親者も家族として登録し、公的に関係性を証明する「宮古市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」とすることがわかりました。7月28日、制度の素案を市議会教育民生常任委で明らかにしたものです。9月中に導入する意向です。
 8月1日には市の公式サイトでも「市では、性別、性的思考、性自認等に伴う日常生活の困難や生きづらさの軽減をはかり、市民一人ひとりの人権が守られ、あらゆる立場の人々が個人として尊重され、多様性を認め合う社会の実現を目指し、パートナーシップ・ファミリーシップ制度を創設します」として制度の素案が公開され、パブリックコメント(意見公募)が始まりました。
 岩手県では一関市、盛岡市で制度が導入されており、宮古市は3例目となりそうです。

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 群馬県太田市は、新婚夫婦が所得制限なしで低家賃の市営住宅に入居できる制度をつくり、8月から入居者を募集します。この制度にはパートナーシップ宣誓したカップルも含まれるそうです。
 「新婚さんいらっしゃい」と題したこの制度は、高齢者が多い市営住宅に若者を呼び込むことで地域コミュニティの若返りや再生をはかり、自治活動の活性化や、空きが多い市営住宅の入居率向上を目的とするそうです。リフォームには補助金も交付されます。
 対象は夫婦ともに35歳未満で、結婚1年以内の夫婦またはパートナーシップ宣誓したカップルか、入居から3ヵ月以内に結婚または宣誓をする予定のカップルです。共稼ぎだと所得制限を理由に入居できないケースが多いため、今回は所得制限を外します。
 清水聖義市長は「かつて市営住宅は人気だったが、共働き夫婦だと所得制限で入れなくなった。地域コミュニティのためにも若い人を入れたい」と話しています。
 
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 埼玉県では、5月までの3ヶ月間で制度を利用するカップルが一気に33組増え、全体で218組になったそうです。県は、この時期に制度を導入した自治体が多かったことや、制度の周知が進んだことが背景にあるとみています。
 県は2021年5月から3ヵ月ごとに市町村の導入状況を調査しており、同年11月からは利用実績も調べています。今年2月1日時点では、県内63市町村のうち41市町が導入し、185組が利用していました。その後、3月~4月に加須市、春日部市など13市町で制度が導入され、5月1日時点では54市町、218組にそれぞれ増えました。3ヵ月間で30組以上増えたのは今回が初めてだそうです。
 宣誓したカップルの子どもも家族として認め、証明書に記入できる「ファミリーシップ制度」を導入する自治体も増えており、5月1日現在で26市町に上ります。
 県内では、制度を導入した自治体が連携し、カップルや家族が引っ越した時に簡単な手続きで継続できるようにする取組みも広がっています。5月1日までに本庄市など4市町、所沢市など5市、越谷市など3市がそれぞれ連携しており、6月1日に制度を導入した東秩父村は東松山市など8市町と連携しはじめました。さいたま市も他自治体との連携を進める方針です。ほかにも朝霞市など4市も連携に向けて協議しているといいます。
 制度を導入している県内の自治体首長からは「県も導入を」と望む声が上がっています。

【追記】2023.8.3
 埼玉県では8月6日、県知事選が行なわれます。東京新聞が3人の候補者へのアンケートの中で、同性婚への賛否も尋ねました。
 柴岡候補と大沢候補が賛成と回答。柴岡候補は「同性カップルは相続権や税金の配偶者控除など法的、経済的権利が認められていない。法の下の平等の立場から、同性婚を認めるべきだ」と、大沢候補も「人は平等。誰と結婚しても問題ない」と回答しました。一方、現職の知事である大野候補は「憲法や法の有権解釈権がない自治体が賛成、反対を表明すべきものではない」とし、個人としての賛否は示さず、「自治体は事実婚と同程度、同性婚に関わる制度を整えていくべきであり、差別を放置すべきではない」と回答しました。
(東京新聞「<埼玉知事選 政策アンケート>(下)国政編 同性婚の賛否 2新人、制度認定主張 現職、賛否を示さず」より)

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 多様な性に関して県民の理解を深める条例や「パートナーシップ宣誓制度」の導入を目指す石川県は、1日に開かれた有識者会議で目的や理念などを示した素案を提示しました。
 有識者会議ではそれぞれの素案の内容が説明され、条例はLGBT理解増進法に沿って作成し、県の姿勢を示すため「お互いの人権を尊重し合い、差別のない社会を目指す」などを示した前文を独自に盛り込むことが報告されました。また、宣誓制度では性的マイノリティだけでなく事実婚も対象に含めるとしたほか、県立病院での面会や状況の説明など県が提供する行政サービスについては夫婦同様の取扱いを認めると記載されています。
 委員からは「理解をするということの先にあるのは、差別をなくすこと。現在ある差別をなくす、これから生じる差別というものを防ぐ、そういう強い姿勢が見えるといいですね」といった意見が出されました。
 県では委員から出された意見や今後実施するパブリックコメントをもとに最終案を作成する方針で、馳知事は9月議会での提出を目標とする一方で、丁寧に作業を積み重ねていきたいとしています。

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 長野県では「パートナーシップ届出制度」が1日から始まりました。まだ届出はないものの、これまでに4組のカップルから届出の相談があったそうです。
 届出を受理されたカップルは、県営住宅に同じ世帯として入居するための申込みが可能になるほか、県立病院での面会や緊急手術の同意が可能になるなど、結婚に相当する関係として県の行政サービスを受けられるようになります。
 県内では、松本市、駒ヶ根市、長野市、須坂市でも「パートナーシップ宣誓制度」が導入されていて、これらの自治体ですでに届出をしている人も県の制度によるサービスが受けられるようになります。また、県は各市町村に対し、市町村の行政サービスにも対応するよう要請しています。
 県人権・男女共同参画課の佐々木淳課長補佐は。「制度の導入をきっかけにして多様性への理解を深めてもらい、性的マイノリティの方々が自分らしく生きられる社会を目指していきたい」と話しました。
 長野県安曇野市に住むXジェンダーの石田悠真(いしだ・ゆずま)さんは信越放送のインタビューに応じ、県としての制度導入が、社会が変わるきっかけになるとして歓迎しつつ、県全体に違いを受け入れる意識がもっと広がってほしいと語りました。石田さんの住む安曇野市では2022年、県内で初めて性的指向や国籍などによる差別の禁止が条例で明文化されました。石田さんは「世界からすればかなり遅れていると思うんですけど、自治体としてそういう取組みがある、動き出そうとしてるっていうところは、めちゃめちゃポジティブに感じています」と語りました。
 
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 愛知県瀬戸市でも8月1日、「瀬戸市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」がスタートしました。レインボーカラーの瀬戸物に星が2つ入っているかわいいイラストが印刷された証明カードを選べるのが瀬戸市らしくて素敵です。また、宣誓したカップルが利用できるようになる行政サービスが、救急車の同乗、各種申請の代理申請、高齢者に関する事業、子育てに関する事業、瀬戸市UIJターン就業・創業支援事業、結婚祝金の支給等互助会会員の福利厚生事業など多岐にわたっているのも素晴らしいです。


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 兵庫県では、県としての「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の導入を求めて、地元のLGBTQ団体が1280人分の署名を県に提出しました。
 レインボーひょうごは、当事者の声を届けたいとして、今年5月から署名活動を始め、全国から1280人の賛同が集まりました。7月25日、代表の方たちが県庁を訪れ、斎藤元彦知事宛てに署名を提出しました。代表の松浦慶太さんは(尼崎市でパートナーシップ宣誓をしていて、6月に市内のフレンドリーな神社で結婚式も挙げました)、「当事者を“ 別世界の人”ではなく、身近に感じてほしい」との思いを込めたと語りました。

 なお、兵庫県三田市は、「パートナーシップ宣誓制度」を拡充し、カップルの親や子どもも家族として認める「ファミリーシップ宣誓制度」を7月に導入しました。市は昨年4月に人権共生条例を施行、同年に始まった第5次総合計画でも「多様性と調和による誰ひとり取り残さないまちづくり」と掲げています。宣誓制度の対象を親子間まで広げ、市民の理解促進や性的マイノリティの生きづらさの解消などにつなげます。
 三田市は、県内では宝塚市に次いで、2019年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入しています。「ファミリーシップ」は、パートナーシップ宣誓者の親か子どもが対象で、115歳以上の子と親は本人の同意が必要になります。宣誓により、市営住宅での同居や、三田市民病院への入院・手術の同意、市合葬式墓所への申込みなどができるようになります。また、パートナーの合計年齢が80歳以上でも、子どもが18歳以下でファミリーシップを結ぶ場合は子育て世帯となり、若年層が対象の住宅取得や空き家リフォームの補助を受けられるようになります。
 市人権共生推進課佐藤まゆみ主幹は「世の中にはいろんな人がいて当然。困りごとや制約がなく、当たり前の暮らしが普通にできる社会になればうれしい」と話しています。

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 岡山県井原市と井原青年会議所(JC)は、市内のカップルの結婚を後押しするため、飲食や買い物をする新婚夫婦に特典を与える「結婚パスポート事業」を始めました。「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の利用者も対象です。少子化を抑止し、地域経済の活性化にもつなげるねらいです。
 この制度は、市に婚姻届を提出した夫婦にカード型証明書「井原セレブレイトカード」を交付し、一緒に対象の店舗を訪れた際に特典を受けられるようにするものです。すでに婚姻届を提出済みの夫婦でも婚姻日が2021年7月1日以降なら対象とし、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」や他自治体の同様の制度に届け出た人も対象になります。 
 事業は、同市と井原JCが3月に締結した地域活性化やまちづくりなどに関する包括連携協定に基づく第1弾の施策です。市企画振興課は「カップルが結婚しようと思う機運の醸成に一役買いたい」としています。

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 「パートナーシップ宣誓制度」創設に向けて検討を進めている山口市は7月26日、市人権施策推進審議会で「パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱(素案)」を示し、2024年4月の制度導入を目指す方針を明らかにしました。
 審議会では、二人がパートナーであると宣誓したことを市が認証する制度とし、法的拘束力はないものとすると説明されました。一方で、行政サービス、民間サービスを受けられるよう、市が各事業所などに協力を求めていく方針も示されました。また、同制度を導入している自治体間での連携や、宣誓する二人の同居要件を外すことなどを要綱に盛り込むとも説明されました。先行して制度を導入した宇部市は二人の同居を宣誓要件にしていますが、山口市は当事者団体から同居要件を外すよう求められたと明かし、「仕事や介護などで同居できないケースも多い」という状況についても説明しました。連携をしたい宇部市とは「制度さえあれば相互利用できる形にできないか」として検討を進めていくそうです。
 今後は、11月にパブリックコメントを実施し、最終案を2024年1月に改めて審議会に示すそうです。

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 香川県では今年4月、県内全市町での制度導入が完了したところですが、プラウド香川など県内のLGBTQ団体の代表の方たちが7月31日、県庁を訪れ、宣誓したカップルの行政手続きを簡素化するために自治体間の連携を図ることなどを求めた要望書を提出しました。
 要望書では、同性カップルが転居する際、パートナーシップ宣誓が自治体間できちんと引き継がれて行政手続きが簡素化されるよう、県が主導して相互の連携を図ることや、地元の市町では周りにカミングアウトしていないカップルが申請をためらう場合もあるため、県もパートナーシップ宣誓制度を導入し、居住する市町以外でも幅広く申請が行なえるようにすることなどを求めています。また、県営住宅の入居申込みなど行政が運営する施設や行政サービスの利用条件にパートナーシップ宣誓をしている同性カップルを含め、家族として扱うことも要望しました。
 プラウド香川の藤田博美代表は、「全ての市町で制度が利用できるようになって大変喜ばしい。さらに県にリーダーシップを発揮してもらうことで、当事者たちがパートナーシップ宣誓制度をより使いやすくなればいいと思います」と話しました。また、団体のメンバーである田中昭全さんは、「県という一つの大きなくくりでやってもらうことで、その制度を使う当事者の可視化、数としてカウントされることもできたら、すごくありがたいです」と語りました。

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 6月に「パートナーシップ宣誓制度」の導入を発表した大分市は7月27日、9月導入に向けたスケジュール案を公表しました。7月28日に職員を対象にした庁内説明会を実施し、8月から市報などで市民への周知を始め、9月から開始する予定です。
 宣誓したカップルが受けられる行政サービスとして、市営住宅の入居申込みができるようになるほか、罹災証明書・被災証明書・税証明の交付の際の委任状が不要となります。今後は通称名の使用や、転出入時に自治体間の相互利用を可能とする連携協定なども検討していくそうです。
 足立信也市長はこの日の記者会見で「お互いの人権を尊重することが多様性を認め合う社会だ」と、制度導入の意義を述べました。
 大分県では臼杵市、豊後大野市、竹田市、日田市、豊後高田市の5市で制度が導入されていて、大分市がそれに続くほか、県も制度導入を検討する意向を示しています。

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 同性カップルも婚姻相当と承認し、証明書を発行する同性パートナーシップ証明制度は、2015年に渋谷区・世田谷区でスタートして以降、少しずつ広がりを見せ、ここ数年で一気に増えて、人口カバー率は実に約70%に達しました。本当に感慨深いです。
 茨城県を嚆矢として都道府県単位でも導入が進んでいます。今回の長野県は全国で13例目となります。
 パートナーシップ証明を受けたカップルが、公営住宅への入居や緊急搬送時の面会だけでなく、多岐にわたる様々な行政サービスが受けられるようになってきたり、ファミリーシップ制度としてカップルの子や親の登録も認められるようになってきたり、自治体間の連携も進んできたり、制度開始当初は予想もしなかった展開を見せています。
 今回の太田市や井原市のように、新婚夫婦や結婚予定者を支援する制度に同性カップルも含めるという対応も、2020年の「ぐんま結婚応援パスポート」(通称「コンパス」)以来、着実に増えてきています。証明書を発行してもらえるだけでなく、異性婚夫婦と同待遇で支援も受けられるというのは、うれしいことですよね。
 全国のこんなにたくさんの自治体のみなさんが、法的に結婚は認められてないけど、せめて…という気持ちで、このように様々な支援策を講じ、もっとできることはないかとアイデアを生み出し、実現してきたくださったこと、本当にありがたいです。その一つひとつの取組みに思いが込められています。心から感謝申し上げます。
 この思いが国にも届き、一日も早く婚姻平等(同性婚)が実現することを願います。

 

参考記事:
事実婚や近親者も対象 宮古市パートナーシップ制度9月導入(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230728khn000067.html

「新婚さん、市営住宅へ」太田市が所得制限外し募集(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR7Y775DR7SUHNB00V.html

パートナーシップ制度 県内利用ペア拡大中(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR7X7HSBR75UTNB014.html

多様な性に理解を深める 条例とパートナーシップ宣誓制度の素案提示(MRO北陸放送)
https://news.livedoor.com/article/detail/24722258/

長野県「パートナーシップ届出制度」始まる(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20230801/1010027636.html
Xジェンダーの当事者は「マイノリティへの理解進むきっかけになれば」パートナーシップ届出制度がスタート(信越放送) 
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/636238?display=1

パートナーシップ制度検討の兵庫県に当事者の思いを 性的少数者団体が署名提出(サンテレビ)
https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2023/07/25/69932/
「パートナーシップ制度」早期実現求め、県に署名提出 兵庫の当事者団体(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202307/0016626792.shtml

LGBTQカップルの親や子どもも家族「ファミリーシップ制度」導入 三田市 市住入居など可能に(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sanda/202308/0016655768.shtml

井原の新婚夫婦に特典付きカード 市など交付 飲食割引やプレゼント(山陽新聞)
https://www.sanyonews.jp/article/1427204

「パートナーシップ宣誓制度」 山口市、創設へ素案提示 来春導入目標(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230727/ddl/k35/040/320000c

パートナーシップ宣誓制度で支援団体が自治体間連携を要望(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20230731/8030016429.html
LGBTQ当事者らの団体 香川県に「自治体間の連携強化」を要望(KSB瀬戸内海放送)
https://news.ksb.co.jp/article/14970119
パートナー制の導入を要望 香川の当事者団体、県に提出(共同通信)
https://www.47news.jp/9661748.html
県も制度の導入を パートナー宣誓、高松の団体が要望書(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230801/ddl/k37/040/381000c

大分市、パートナーシップ宣誓制度9月導入へスケジュール案(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR7W6Q7JR7WTPJB001.html

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