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『エゴイスト』鈴木亮平さんがNYアジアン映画祭で「ライジングスターアワード」を受賞、そのスピーチが素晴らしかったです

2023年08月13日

 7月にニューヨークで行われた第22回NYアジアン映画祭(NYAFF)で、鈴木亮平さんがアジア映画の未来を期待する俳優に贈られる「ライジングスターアワード」を受賞し、フィルム・アット・リンカーンセンターで授与式と『エゴイスト』のNYプレミア上映が行なわれました。鈴木亮平さんの受賞スピーチと質疑応答のコメントがとても素晴らしく、満場の観客から盛大な拍手を受けました。
 
 『MOVIE WALKER』のレポートによると、NYAFFエグゼクティブ・ディレクターのサミュエル・ジャミエ氏は授賞式で「『エゴイスト』は、今年観た映画のなかでも最も感情を動かされた作品でした。私たちは鈴木亮平の『変態仮面』を初めて世界に紹介した映画祭の一つで、この映画は映画祭が常に求めている、思いもよらない鑑賞後感を与えてくれる作品でした。キャリア初期から鈴木亮平は常に役者としての強いこだわりを映画に投影してきました。役者というものは、時に誤解を受けやすいものです。映画を象徴する存在であるとともに、最も傷つきやすい存在です。文字通り、自分の身体と声を大衆の前に突き出すのですから」と、鈴木亮平さんの役作りを称賛し、トロフィーを授与しました。
 タキシード姿で壇上に上がった鈴木さんは、英語で「このような栄誉ある賞をいただき、ありがとうございます。NYAFFはNYで行われる映画祭ということで、特別にうれしいです。15歳の時、初めて訪れたこの街にすっかり恋をしてしまいました。今夜みなさんに観ていただくこの映画は、僕にとってとても大切な作品です。この映画に関わってくださったすべての方々、特に共演の宮沢氷魚さん、阿川佐和子さん、そしてここに一緒にいる松永大司監督に感謝いたします。今作の出演オファーを受けたのは、原作小説と作者の高山真さんに惚れ込んだからでした。彼はこの映画の撮影準備を始める前に亡くなってしまい、完成した映画を観ることはありませんでした。でも今夜、彼はきっとどこか上のほうから僕らを見てくれていると思います」とスピーチしました。 
 上映後に行なわれた質疑応答では、日本映画におけるLGBTQ+のリプレゼンテーションや役作りに関する質問が多く寄せられ、鈴木さんは通訳をつけず、すべて英語で質問に答え、ゲイの雑誌編集者である浩輔役を当事者ではない役者が演じる決断について、様々な葛藤があったことを認め、「当事者による表象はとても重要だと認識しているので、この役を引き受けるかどうか、かなり悩みました。インターネットで検索してみると、当時日本でゲイであることをカムアウトしている俳優は見当たりませんでした。同時に、とても悲しくなりました。日本では、まだ俳優が自分の性的指向をカムアウトするのに大きなリスクが伴うということだからです。そして、いまいる場所から始めなくてはいけないと思いました。最も重要なことは、『エゴイスト』のようなクィア映画をもっと作ることで、僕たちの社会と業界が前進できるようにすることです。この映画の主役2人を演じているのはストレートの俳優で、当事者による表象という意味では100%完璧ではないかもしれません。しかし僕たち俳優は、このような役を演じるのであれば、100%積極的に関わり、100%尊重し、100%自分のキャラクターとゲイコミュニティに責任を持ちたいと考えました。当時の日本の映画業界でできることのすべてをやり遂げ、この映画を作れたことをとても誇りに思っています。なぜなら、これは日本映画が前進するための大きな一歩になったといまでも信じているからです」と一気に述べ、会場から大きな拍手が送られたそうです。
 松永監督は、できるだけ適切な表象を映画に持ち込むために、LGBTQ+インクルーシブ・ディレクターのミヤタ廉氏に脚本の段階から参加してもらい、性的マイノリティに関するセリフやキャスティングなどの監修を、インティマシー・コレオグラファーのSeigo氏に性的なシーンにおける動きや所作の監修をお願いしたと説明しました。「自信がないことがよいことだと思っています。この題材を描くことの恐さを知っているから、ミヤタさんやSeigoさん、すべてのスタッフと一緒に作らないとできないと思うから、作れたんだと思います。もし自信を持っていたら、僕は違うものを作ってしまったかもしれない。だから、『怖い、自信がない』というのは始まりとしては大切なことだと思います」 

 『週刊NY生活』によると、現地で『エゴイスト』を観たニューヨーカーは、「とても良かった。主人公とその恋人の母との関係の描き方が美しく、人間どうしの繋がりに感動した。僕はシンガポール出身でゲイだけど、ゲイであることをカムアウトしづらい日本の状況は同じアジアだからよくわかるよ」「ストーリーを知らずに観たが、監督のカメラワークがとても良かった。BGMがほとんどなく、カメラが接写したり離れたりすることでその場の彼らの気持ちをよく表していたと思う」「とてもエモーショナルな映画だった。特に主人公の優しさに心を打たれた。僕もゲイだけど同じような状況になったら僕も主人公と同じように恋人の母を気にかけ、彼がやったように身の回りの世話をしたりするかもしれない」と語っていたそうです。
 『エゴイスト』はこの秋、北米での公開が決まったそうです。日本のみならず世界でも高く評価されるのではないでしょうか。

 

参考記事:
満場の観客から拍手喝采!『エゴイスト』鈴木亮平と松永大司監督がニューヨークの地で語った、力強い決意と友情(MOVIE WALKER)
https://moviewalker.jp/news/article/1150241/image12038455/

鈴木亮平さん受賞の喜び語る(週刊NY生活)
https://www.nyseikatsu.com/entertainment/07/2023/38831/

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