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カナダに渡ったゲイの方たちのことが朝日新聞に掲載されました

2023年08月18日

 朝日新聞の「わたしが日本を出た理由」という連載のカナダ編(4)で、日本社会に生きづらさを感じ、カナダへと渡った日本人のゲイの方たちが紹介されていました。

 
 お一人目は修平さんという30代の方です。修平さんは京都府内の大学を卒業後、20代半ばで東京に移り、編集の仕事に就きましたが、職場ではゲイをネタにして嘲笑する人や「結婚してる?」と無遠慮に聞いてくる人もいて、仕事の接待でキャバクラに連れて行かれるのも苦痛で、「まるでストレートだけで回っている世界。ゲイは存在しないものとして扱われている」と感じていたそうです。
 そんな修平さんは2016年、旅行で1~2週間ほどカナダに滞在しましたが、街中でゲイカップルが手をつないで歩いているのを見て驚き、「新鮮だった。ここなら住める」と感じ、2019年、カナダでの生活を始めたそうです。地元のレストランやウーバーの配達員として働くなどして食いつなぎ、日本人向けのオンラインメディアのライターの仕事も見つけ、永住権の取得を念頭にカレッジ(専門学校)にも通いはじめました。カレッジでもゲイの教授がパートナーと子どもと旅行に出かけることを当たり前のように話していて、授業では毎学期、性的マイノリティのほか人種や宗教に対する差別発言をすれば評価にも影響するとの注意がなされていました。
 2005年から同性婚が認められているカナダでは「同性婚に疑問を持つことすらおかしいような社会意識がある」といいます。日本では家族についての将来的なビジョンを描けなかった修平さんも、今は結婚生活を経験してみたいと考えているそうです。

 もうひと方、40代の山村健司さんは、結婚とは別の「コモンロー」※と呼ばれる制度でカナダ人の同性パートナーと結ばれました。
 日本での勤務先はサービス残業を強いられ、社長からハラスメントを受ける劣悪な職場環境だったため、10年前、トロントでレストランを開く友人の「手伝いに来て」という誘いを受けて、カナダに渡りました。街中で同性カップルが手をつないで歩いていたり、男性カップルが子どもを連れていたりする光景に衝撃を受けたそうです。
 ビザの都合で1年ほどで日本へと帰国した際は「とてつもない地獄に感じ」、2015年にカナダに戻りました。新規出店したラーメン店の運営を任され、客として訪れたのが今のパートナーの方で、拙い英語にもしっかりと耳を傾け、思いをくみ取ろうとしてくれる方だったそうです。
 永住権を取得するためには英語を勉強して必要な水準に達しなければいけませんが、パートナーの方が英語力に不安を感じ、「このままでは君はカナダにいられなくなるかもしれない」と言ってプロポーズしてくれたそうです。お二人は2018年にコモンローの申請をして、法的にパートナーと認められました。

 お二人とも日本が嫌いなわけではなく、恋しいとも感じていますが、同性婚が認められ、差別がなくなる日が来ない限りは厳しいと思っているそうです。

※コモンローの定義は、「少なくとも1年以上同居し、結婚同様の関係を築いている二人の成人」です。異性か同性かは問われません。いわば事実婚のようなものですが、婚姻と同等の社会福祉制度も受けられますし、移民申請においても結婚と同等に扱われます。カナダでは結婚を選択せずコモンローのままで子育てもしているカップルも多く(ケベック州では約4割)、同性カップルの約2/3がコモンローだそうです。フランスのPACSに近いイメージなのではないでしょうか。
 
 
 この記事に続く「わたしが日本を出た理由」カナダ編(5)では、北海道教育大の古地順一郎准教授がカナダの移民政策や多様性の尊重について解説していて、たいへん興味深いものがありました。
 2021年は年間約40万人、22年は約43万人の移民を受け入れたカナダ。日本人にとっても人気の移住先となっている理由は「生き方の選択肢が広がるから」だそうです。「家族との時間を大切にするという価値観があり、ワーク・ライフ・バランスを重視する意識も圧倒的に高いです。残業は少なく、子育てに対して理解も高い。子どもを職場に連れてきてもなんとも言われません」
 多様性を尊重する国として知られるカナダは、1971年に世界で初めて多文化主義政策をとり、「様々な文化的ルーツを持つ人たちが公正に扱われるような仕組みをつくってきました」。今は公式サイトに『多様性は力の源』と謳われています。「2011年には多様性に配慮するための「Gender-Based Analysis Plus」という考え方を政策決定のプロセスに導入しました。性別や人種、年齢などの違いによって政策決定が与える影響の大きさを分析し、多様な人々のニーズを満たそうという考え方です。国の予算編成においても取り入れられています」「性的マイノリティの人が自分らしく暮らして自己実現できる社会を築くことも、カナダを強くしています。同性婚を理由に他国から移住する人もいて、私も米国から来て活躍している人を知っています。結局、国力の増強につながるのです」
 


出典:
「恋しい。でも今は無理」 性的少数者が日本を出てカナダを選ぶ理由(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR8C35K2R5SULFA02P.html
(わたしが日本を出た理由 カナダ編:5)カナダの移民政策、北海道教育大・古地准教授に聞く(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15720002.html

コモンロー(事実婚)でカナダ永住権申請も可能!「結婚」との違いやその特徴は?(バンクーバー現地情報)
https://lifevancouver.jp/common-law-marriage

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