「LGBT男性」と書くのは、なぜ問題? 当事者団体、LGBTQの「報道ガイドライン」拡充

2022年6月7日 12時00分
 その言葉、当事者を傷つけるかもー。性的少数者を巡る取材時の記者・当事者双方の確認事項などを記した「LGBTQ報道ガイドライン」の第2版が発行された。2019年発行の第1版の内容を更新し、「LGBT男性」など注意が必要な話題や言葉のコーナーなどを追加した。発行元の当事者団体「LGBT法連合会」(東京都文京区)は「どの分野にも当事者はいる。さまざまな現場で参考にしてもらえたら」と利用を促している。(奥野斐)

LGBTQ レズビアン(女性同性愛者=L)、ゲイ(男性同性愛者=G)、バイセクシュアル(両性愛者=B)、トランスジェンダー(生まれた時の性別と異なる性を生きる人=T)の頭文字からなる「LGBT」に、クエスチョニングとクィアの頭文字「Q」を加えた性的少数者を表す言葉。クエスチョニングは自身の性のあり方について分からない人、決めていない人などを指す。クィアは規範的とされる性のあり方以外を包括的に表す言葉とされる。「LGBTQ+(プラス)」が使われることもある。

 ガイドラインは、性的少数者(LGBTQ)の報道が増える中、当事者の意図しない形で情報が拡散するトラブルなどが相次いだため、同会と各メディアの記者らが協力し、19年に第1版を策定した。基礎的な用語説明のほか、取材時のチェックリストでは、顔や名前など掲載可能な情報の確認などを記者・当事者双方に求めている。
 第2版では、より多様な性のあり方を含めようと、旧タイトル「LGBT報道ガイドライン」に「Q」を付加。「LGBT男性」「禁断の愛」といった表現の問題や、事件報道などの記事で本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露することを指す「アウティング」につながる懸念などを紹介するコーナーを新設した。
 第1版の発行から3年が経過し、LGBTQの話題は、政治やスポーツ、エンターテインメント分野で日常的に取り上げられるようになった。LGBT法連合会の神谷悠一事務局長(36)は「LGBTQに関する法整備の動きや、東京五輪・パラリンピックに当事者と公表する選手が多数出場したこと、ドラマや映画の影響も大きい」と分析する。

 「LGBTQ報道ガイドライン」の冊子を手に、注意が必要な言葉などについて話す神谷悠一さん=東京都千代田区

 第1版は、マスメディアや他業種の企業研修、自治体の広報紙の担当部署や大学の授業で活用されているという。神谷さんは「LGBTQの話題が、これまで関係ないと思われていた分野、業種にも裾野が広がった一方、知識や対応のばらつきも目立つ。基礎知識を学ぶツールとしても使ってほしい」と訴える。
 A4判、16ページ。冊子は1部500円だが、LGBT法連合会のホームページから無料でダウンロードできる。

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