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東京高裁、同性カップルの内縁関係認めず財産分与申立てを却下 海外での婚姻を理由に

2024年05月02日

 2022年、横浜家裁が同性カップルの内縁関係認めず財産分与申立てを却下し、専門家やLGBTQコミュニティから批判の声が上がっていましたが、原告は即時抗告※しており、抗告審としての家事審判が行なわれていました。この5月1日に東京高裁で判決が下り、東京高裁は申し立てを退ける決定をしました。

※抗告は裁判所の決定に対する不服申立て。控訴と上告は裁判所の判決に対する不服申立て

 申立てを行なったドイツ人の女性は日本国籍の女性と2013年からおよそ6年間にわたって日本で生活しました。2018年にドイツで結婚したあとも日本で共同生活を続けていましたが、2019年9月に関係を解消し、別居しました。彼女は2020年8月、二人の間には内縁関係が成立している、夫婦の離婚に伴う財産分与について定めた民法768条の規定は異性間の内縁関係に類推適用されているにもかかわらず、同性間での分与を否定するのは「性的指向という自ら選択する余地のない理由で不利益を及ぼしており、憲法違反だ」として、夫婦や内縁関係にある男女が別れた場合と同様に財産分与が認められるべきだと横浜家庭裁判所に申立てを行ないました。この訴えに対して横浜家庭裁判所は2022年2月、「日本の法律は婚姻および離婚の当事者を『夫婦』または『父母』と規定するなど異性間でのみ認めていることは明らかだ」などとしたうえで「婚姻の実質的要件を欠く場合にまで内縁の夫婦関係と認め、婚姻に関する規程を適用するのは現行の法律の解釈上困難だ」と述べ、申立てを却下しました。高谷英司裁判官は、ドイツで離婚していない点も挙げ、「ドイツ法で婚姻が成立しており、内縁ではない」とも述べました。
 女性は東京高裁に即時抗告を行ないました。

 5月1日、東京高裁は、二人がまだドイツにおける法律婚を解消しておらず現在も婚姻関係にあることから、ドイツ法上は「そもそも財産分与の効果を発生させるような内縁関係が成立していない」と判断しました。仮に日本法上では「民法768条が類推適用されるべき」とする女性側の見解を採用する余地があるとしても、ドイツ法上では内縁が成立していない以上、財産分与を認める理由はないとして、女性の抗告を棄却しました。「日本法において同性カップルにも財産分与が認められるべきか否か」の判断は避けられました。
 
 5月2日に行なわれた会見で代理人の小豆澤史絵弁護士は、通常なら婚姻したほうが当事者にとって有利になるのに今回は婚姻したために不利になってしまったと指摘し、「問題となる法律によって婚姻が有利にも不利にもなってしまう、ちぐはぐな判断だ」と批判しました。
 日本では同性間の婚姻は認められていませんが、一方が外国人である同性カップルの場合、海外で婚姻すると、日本においても二人の関係が内縁関係だと認められやすくなり(内縁関係が認められる主な要件は「婚姻の意思」と「夫婦同然の共同生活」ですので、婚姻の意思があることの強い証拠となります)、法的に有利になる効果がもたらされると考えられます。しかし、今回、高裁は、外国法上での婚姻関係が成立していることを理由にして日本法上での内縁関係の成立を不問にしました。もし二人がドイツで婚姻していなかったら、日本での内縁関係のみが論点となり、財産分与が認められていた可能性があったかもしれず、海外で婚姻しないほうがよかったという話になってしまいます。しかし、ドイツで婚姻していなかったら、そもそも日本法上での内縁関係が認められていなかったかもしれず…当事者はダブルバインドに陥ってしまいます。
 根本問題は日本で同性婚が認められていないことですが、それにしても今回の裁定は、「揚げ足取り」のような、無慈悲なものだったという印象を受けます。最高裁の戸倉長官は「国民の価値観や意識の多様化が進んでおり、裁判所は、より適切な紛争解決を追求する使命を帯びている。裁判官一人一人が広い視野を持ち、時代、時代で問題になる社会の動きに知見を深めていくことが求められている」と述べています。これまでに同性カップルのパートナーシップも事実婚相当であり法的保障が認められるべきだとする判決もいくつかあったなか、東京高裁の裁判官が判断を避けたのは、残念です。
 小豆澤弁護士は、「日本人のパートナーを持つ同性愛者にとって、本国で婚姻すべきかどうかの判断を非常に難しくしてしまうものだ」と批判しました。
 原告は上告するそうで、小豆澤史絵弁護士は「最高裁も今回の判断を追認するかどうか。改めて主張を尽くしたい」と話しています。




 
【参考記事】
同性「内縁」、再び認めず ドイツでの婚姻を理由に(共同通信)
https://nordot.app/1158598815213699255?c=39550187727945729

「同性カップル」の財産分与が認められず 代理人弁護士「外国での婚姻が不利をもたらす“ちぐはぐ”な判断」(弁護士JP)
https://www.ben54.jp/news/1123

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